星野リゾートは6月25日、国の重要文化財「旧奈良監獄」を再生したホテル「星のや奈良監獄」を奈良県奈良市に開業する。

  • 星のや奈良監獄

    星のや奈良監獄

コンセプトは「明けの重要文化財」

明治政府が国の威信をかけて建設した「明治五大監獄」。1908年に誕生した旧奈良監獄は、赤レンガ造りの外壁や放射状に伸びる「ハヴィランド・システム」など、当時の全貌をほぼ完璧に残している。1946年には「奈良少年刑務所」と改名、更生教育を重視する施設として2017年の閉庁まで貢献し、閉庁直前の同年2月には重要文化財に指定された。旧奈良監獄の再生は、歴史的価値を守りつつ現代に活かす、国と民間による共同プロジェクトである。監獄という特異な空間を決して損なうことなく、その個性を活かしたラグジュアリーホテルへと生まれ変わった。

同ホテルのコンセプトは「明けの重要文化財」。旧奈良監獄が誕生した、近代国家として歩み始めた黎明(れいめい)の時代、豊かに花開いた西洋文化を滞在の随所に織り込み、歴史の深みと圧倒的な非日常に浸る旅の喜びを創出する。重要文化財に「宿泊する」という稀有な体験と、併設のミュージアムでの学びを通じて、過去から未来へと歴史を紡ぐヘリテージ活用の新たな形を提案する。宿泊料金は1泊147,000円~(1室あたり、税・サービス料込、食事別)。

  • 左:外観 東エリア(メインアプローチ)/右:外観「ハヴィランド・システム」全貌

    左:外観 東エリア(メインアプローチ)/右:外観「ハヴィランド・システム」全貌

舎房を連結した全室スイートルーム

客室は、かつての舎房を大胆に繋ぎ、ラグジュアリーでくつろぎに満ちたプライベート空間へと生まれ変わった。監獄の閉塞感を再現するのではなく、空間の特徴を「強い主張のデザイン」として捉え、機能の矛盾を魅力へと昇華させている。客室タイプ「The 10-Cell(ザ・テンセル)」は、独居房10房分を連結。かつて漆喰に覆われていたレンガの遺構を露わにし、高さ約3.5mアーチ状の「ヴォールト天井」が歴史の集積を伝える。新たな構造を支える無骨な鉄柱とウッドパネルの調和は、重要文化財の歴史に現代の感性を重ねた「美しい融合」を体現。客室は、ハリウッドツインのベッドを備えた「The 9-Cell」、ゆとりあるドレッシングラウンジを備えた「The 11-Cell Deluxe」も用意している。

  • 左:リビング/右:ダイニング

    左:リビング/右:ダイニング

  • 左:寝室/右:ヴォールト天井

    左:寝室/右:ヴォールト天井

優雅にくつろぐ、もう1つのリビング

開放的な吹き抜けが特徴の「メインラウンジ」。天井には往時の風合いを湛える梁が規則的に連なり、窓から連続するアーチが響き合う空間。かつての構造を活かしつつ大胆な現代的デザインを施し、洗練された空間へと生まれ変わった。西洋の文化を貪欲に取り入れた時代背景は、館内の家具やアートにも息づいている。ゲストを迎える大型の絵画や、印象的なヨーロッパの家具を贅沢に配置。時間に合わせたお飲み物やお菓子、旅や建築にまつわる書籍が用意され、「もう1つのリビング」のように、上質な寛ぎを提供する。

  • 左:メインラウンジ/右:中央には空間に合わせて描かれた絵画が

    左:メインラウンジ/右:中央には空間に合わせて描かれた絵画が

歴史とモダンが交差する、風と空のプライベートテラス

真っ白な散策路で幾何学的に切り取られたモダンな空間が印象的な中庭には、空を仰ぐプライベートデッキが点在。柔らかな光に包まれる昼下がりに、お気に入りの本をめくったり、お茶を楽しんだり、思い思いの時間が過ごせる。夜には、月明りをモチーフにした幻想的なライトアップが広がり、贅沢な余白の時間を過ごせる。

  • 左:中庭/右:月明りをモチーフしたライトアップ

    左:中庭/右:月明りをモチーフしたライトアップ

夜を愉しむ、大人の社交場

食事前のアペリティフや、夜更けのバータイムを愉しむ「ダイニングラウンジ」。日本の伝統的な「蔵」の情緒を継承しつつ、大きな窓を大胆に加え、内外が一体となる開放的な空間へと生まれ変わった。窓外に広がる中庭の瑞々しい自然や、美しくライトアップされた夜景を臨む空間で、大人が集う華やかな社交のひとときを演出する。

  • ダイニングラウンジ

    ダイニングラウンジ

重要文化財に抱かれる特別な滞在

ホテルのゲートは、歴史の象徴である「表門」。一歩足を踏み入れた館内には、かつての「中央看守所」とそこから放射状に伸びる舎房の圧巻の景色が広がる。ホテルへの再生にあたっては、現代の寛ぎにあわせて大胆に手を加えた空間と、重要文化財としての価値を当時のままに残した空間が共存している。そこに現代の光を巧みにあわせることで、歴史の美しさだけでなく、空間にしなやかな息遣いをもたらした。約10万㎡の敷地で、悠久の歴史と向き合う特別な滞在を楽しめる。

  • 左:表門/右:中央看守所

    左:表門/右:中央看守所

時を愉しみ、時を味わうディナーコース

夕食は、日本におけるフランス料理の系譜を紐解くディナーコース「ガストロノミー・クロニクル」。「黎明期」「成熟期」「現代」「未来」をテーマにした全4皿で美食の歴史を紡ぐ。コースは、ダイニングラウンジでのアペリティフから始まり、プライベートなテーブルに舞台を移した後には、新しい文化や時代が生まれようとする「黎明期」。西洋料理が普及した当時の日本の「洋食」を、一口サイズのフルコースに見立てて提供する。続く「成熟期」には、日本のクラシックフレンチを象徴するアルベールソースで味わう「舌平目のブレゼ」。さらに、イノベーティブな肉料理の「現代」、サスティナブルな想いを繋ぐデザートの「未来」へと続く。随所に小粋なユーモアが潜むユニークな演出とともに、美食で巡る時の旅を堪能できる。

  • 左:黎明期(始まりのパナシェ)/右:成熟期(舌平目のブレゼ ソース・アルベール)

    左:黎明期(始まりのパナシェ)/右:成熟期(舌平目のブレゼ ソース・アルベール)

明治のモダンを味わう「文明開化の朝食」

同ホテルの特徴的な朝食は、明治期の洋食文化を味わう「文明開化の朝食」。現代にも馴染み深い洋食のルーツを少しずつ盛り込んだ。「洋式醤油」として珍重されたウスターソースで味わうスコッチエッグや、カニクリームコロッケにエビフライなど、当時のモダンを少しずつ味わえる。このほかにも「和朝食」「洋朝食」、ヨーグルトやフルーツなどをテイクアウトで提供する「軽朝食」を用意。多彩なスタイルから選ぶことができる。

  • 文明開化の朝食

    文明開化の朝食

歴史を繋ぐダイニングで、美食と向き合う

別棟のダイニングは、独居房や接見所などの空間を再生し、最大6名まで利用可能な半個室のプライベート空間へと生まれ変わった。当時と同じ高い位置の窓からは、優しく朝陽が差し込み、夜には美しい夜空を切り取る。ひとりでの静かなお籠もりから、グループで食卓を囲む特別な集いまで、気兼ねすることなく、贅沢な美食の時間を堪能できる。

  • ダイニング

    ダイニング

歴史と向き合い、想いを馳せるアクティビティ

同ホテルでは、時間の移ろいに合わせた特別な体験を通じて、歴史が息づく場所での滞在を提案する。

「茜のティーサロン」は15:00~16:30にメインラウンジで無料で楽しめる。奈良・月ヶ瀬産の和紅茶を、日本生まれのティーセットで提供する。紅茶を引き立てるお菓子も一緒に、歴史の案内役であるスタッフとの語らいに興じながら、西洋建築の空間に浸る優雅な時間を過ごせる。

  • 茜のティーサロン

    茜のティーサロン

「響きのソワレ」は21:00~22:30にダイニングラウンジで開催する。蓄音機のノスタルジックな音色を楽しみながら、カクテルやウイスキー、シャンパーニュなどを味わえる。参加は無料で、一部メニューは有料となっている。

  • 響きのソワレ

    響きのソワレ

「香りの宵支度」は21:30~22:30にメインラウンジで実施する。時間の経過とともに変化する香りの層を合わせ、オリジナルの香水を作り、レンガを模したテラコッタディフューザーとともに持ち帰ることができる。予約制で、料金は12,100円。調香体験とオリジナル香水、テラコッタディフューザーのギフトボックスが含まれる。

  • 香りの宵支度

    香りの宵支度

「目覚めの亜鈴(あれい)体操」は7:00~7:30にミュージアム広場で開催する。良の吉野杉で作ったオリジナルの亜鈴をもって、爽やかな朝の光と清々しい空気のなか、深呼吸やストレッチを交えた動きで身体を優しく解きほぐしていく。参加は無料。予約制で定員は10名となっている。

  • 目覚めの亜鈴(あれい)体操

    目覚めの亜鈴(あれい)体操

宿泊者は何度でも利用できる「奈良監獄ミュージアム」

敷地内にある「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」は、奈良監獄の歴史的価値を展示するほか、「美しき監獄からの問いかけ」をコンセプトに、日常を揺さぶる新たな視点を提供する。同ホテルからは宿泊者専用のアプローチがあり、宿泊者は無料で、滞在中何度でも足を運ぶことが可能。

  • 奈良監獄ミュージアム A棟・歴史と建築

    奈良監獄ミュージアム A棟・歴史と建築