NTT東日本グループのNTT Landscapeは7月1日、北海道むかわ町にトレーラーハウスを活用したスマートホテル「LsHotel むかわ」をオープンする。同社は、キャンプ場運営やアウトドア研修、DX推進、トレーラーハウス活用事業を営むが、トレーラーハウス活用したホテルの運用は初となる。
むかわ町にオープンする「LsHotel むかわ」は、道の駅の複合施設「むかわ温泉四季の館」の敷地内に、トレーラーハウス5棟を設置。同社では、「LsHotel むかわ」の運営は実証実験と位置付けており、ここでノウハウを蓄積し、今後、全国展開をしていく予定だ。
なぜむかわ町でトレーラーホテルを始めるのか
今回の取り組みの背景には、2025年12月に締結された、むかわ町、NTT東日本北海道事業部、NTT Landscape、青山社中の4者による包括連携協定がある。
協定の目的は、北海道胆振東部地震からの創造的復興を推進するとともに、恐竜化石や農林水産業など、むかわ町が持つ地域資源を最大限活用しながら、観光促進や産業振興、防災強化、DX推進を進めることだ。
むかわ町は、世界的にも貴重な恐竜化石が発見される地域として知られ、近年は穂別恐竜博物館などを中心に観光客も増加している。しかし、観光客が訪れても宿泊施設が十分ではなく、日帰りや周辺都市への移動を余儀なくされるケースも少なくなかった。
こうした状況について、NTT Landscape 経営企画部長 斉藤武氏は次のように語る。
「むかわ町に観光客は来ますが、宿泊施設がないため、結局、苫小牧などに移動して食事や宿泊をして、お金を落としています。宿泊施設があれば食事や温泉など地域内で消費が生まれ、地域経済の活性化につながると考えました」
そのため、同社はホテル事業そのものを目的とするのではなく、宿泊機能を整備することで地域内の消費や滞在時間を増やし、地域経済へ波及効果を生み出すことを重視している。
地方で深刻化する「泊まる場所がない」問題
地方自治体では近年、観光客の増加に対して宿泊施設の供給が追いつかないケースが増えている。一方で、新たなホテル建設には多額の投資が必要となるほか、建設コストの高騰や人材不足も深刻化し、従来型のホテル誘致は年々難しくなっているのが実情だ。特に北海道では、夏の観光シーズンやイベント開催時に宿泊施設が不足する傾向がある。そこでNTT Landscapeが着目したのがトレーラーハウスだ。
同社はキャンプ場運営やアウトドア研修事業を展開する中で、以前からトレーラーハウス事業にも取り組んできた。
斉藤氏は「トレーラーハウスは設置コストが安く、納期も短い。さらに、災害時にも活用できる点が大きな魅力だった」と説明する。
トレーラーハウス型ホテルの客室をチェック
「LsHotel むかわ」に設置される各トレーラーハウスは約2.4×6メートルの大きさ。実際に室内へ入ると、一般的なビジネスホテルと遜色ない設備が整えられていた。
室内は約6畳とコンパクトだが、ベッドのほかワークデスクや冷蔵庫、電子レンジなどが配置されており、滞在に不便は感じなさそうだ。ダブルルームとツインルームの2タイプを用意し、定員は2人(シングルとしても利用可能)となる。客室にはWi-Fiやワークデスクも設置されている。
斉藤氏はターゲットについて、次のように説明する。
「宿泊費は抑えたいが、プライベート感は欲しい。そういうニーズに着目しました」
各客室は独立しているため、一般的なビジネスホテルより隣室の音が伝わりにくいという。
「隣のトレーラーの音はほとんど聞こえません。そこはトレーラーハウス型ホテルの大きな特徴だと思います」(斉藤氏)
移設も可能 「車両」だからこそのメリット
トレーラーハウス最大の特徴は、建築物ではなく車両として扱われる点にある。一般的なホテル建設で必要となる大規模な基礎工事が不要で、短期間かつ低コストで設置できる。また、需要の変化に応じて別の地域へ移設することも可能だ。
斉藤氏は「仮に20台導入しても需要が想定より少なければ、別の地域へ移設できます。中古市場もあるため、建築物と比べて投資リスクは抑えられます」と語る。
また、固定資産税や不動産取得税が不要であることも運営上のメリットだという。さらにトレーラーハウスは平時だけでなく、災害時の活用も視野に入れている。
NTT Landscapeでは、災害発生時には防災拠点やボランティア宿泊施設として利用することも想定している。移動可能という特性を生かし、必要な場所へ迅速に展開できる点は、地方自治体にとって大きな魅力となる。
フロントなし、タブレット操作でチェックイン
今回の実証で重要なテーマの一つが無人運営だ。
ホテルにはフロントを設置せず、チェックインは入口のタブレットで行う。宿泊者が予約番号や個人情報を入力すると、客室の解錠番号を受け取れる仕組みとなっている。無人化によって人件費を抑えられる一方、操作に困った利用者向けにはコールセンターによる遠隔サポートも用意する。
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トレーラーハウスの玄関部分に設置され、チェックイン、チェックアウトはリモートで対応。チェックインでは、予約の際にもらったQRコードかナンバーを入力。その後、名前、規約の同意、国籍、住所、連絡先等を入力すると、鍵番号が払い出される仕組みだ
ホテルの予約は当面、自社ホームページで行うが、じゃらんや楽天トラベルとの連携も視野に入れている。
北海道の厳冬環境でノウハウを蓄積し、全国展開へ
実証場所にむかわ町を選んだ理由の一つが、北海道ならではの厳しい冬環境だ。
同地域では凍上と呼ばれる現象が発生し、地面が凍結によって盛り上がることがある。そのため、トレーラーハウス設置にも特別な対策が求められる。斉藤氏は「冬季の寒さが厳しい環境の中でも無人運営できるノウハウを蓄積したい」と話す。現在は凍結防止のため、遠隔操作可能なエアコンや各種センサーの活用も検討しているという。
「ここでしっかり運営できれば、本州のほかの地域でも十分展開できると思っています」(斉藤氏)
今回設置されるのは5棟のみだが、NTT Landscapeでは将来的に20棟規模での展開を視野に入れている。宿泊システムやコールセンターなどの固定コストを考慮すると、事業として成立させるためには一定規模が必要になるためだ。
また、地域の観光施設や温泉、飲食店との連携も検討されており、穂別恐竜博物館や四季の館の温泉と組み合わせた宿泊プランの企画も進められている。同社は今回の実証で得られた知見をもとに、宿泊施設不足に悩む全国の自治体へ展開していく考えだ。
宿泊機能の整備をきっかけに交流人口を増やし、地域経済を活性化する。そして平時には観光インフラとして、非常時には防災インフラとして機能する。NTT Landscapeがむかわ町で始める挑戦は、地方創生の新たなモデルケースとして注目を集めそうだ。








