政界を追い出された星野茉莉(黒木華)が、市井に生きる政治素人のスナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)をスカウトし、東京都知事選に挑む姿を描く、カンテレ・フジテレビ系ドラマ『銀河の一票』(毎週月曜22:00~ ※FOD・TVerなどで配信)の第10話が、22日に放送された。
宮沢賢治の言葉に感化された五十嵐(岩谷健司)は、これまでのように勝つための手段を選ぶのではなく、あかりと茉莉とともに「正しく強く生きる」闘い方を模索し始めた。その姿は、最終話を前に、本作が選挙の勝敗以上に何を描こうとしているのかを浮かび上がらせていた。
【第10話あらすじ】選挙開幕! 茉莉は流星から“爆弾”的な書類を…
選挙戦がついに幕を開けた。あかり陣営は、レジェンド声優の光留(日高のり子)がウグイス嬢を務める選挙カーが話題になり注目を浴びる一方、流星(松下洸平)陣営は支持団体への組織票固めに徹する対照的な戦いを繰り広げていた。
そんな折、流星は秘書の昴(倉悠貴)から“告発の手紙”に関する調査報告書を渡される。
そして、茉莉は雨宮(三浦透子)から、五十嵐(岩谷健司)に“告発の手紙”の調査を止めるよう釘を刺されたことを打ち明けられる。五十嵐は茉莉にショックを与えかねない重大な事実をつかんでいるようだった。
それでも真実を知りたい茉莉に対し、五十嵐はすべてを打ち明ける前に答え合わせをしたい相手がいると告げ、ある提案を持ちかける。民政党幹事長で、流星の黒幕でもある鷹臣(坂東彌十郎)によって、転落死した医大の学部長・新座値利のスキャンダルを選挙で使い、流星の票を削るのをやめないかというものだった。
五十嵐は、茉莉と選挙運動をするうち、絵葉書にあった宮沢賢治の言葉「正しく強く生きるとは、銀河系を自らの中に意識して、これに応じて行うことである」という言葉に恥じない闘いができるのではないかと思い始めたというのだ。
代わりに裏の手を使って、民政党の支援団体のうち、民政党の支援を離れた団体と連絡を取り、それを味方につけるという作戦の実行に移る。しかしそこには、すでに罠が張り巡らされていた。
そんなある日、あかりの事務所をある人物が突然訪ねた。それはなんと茉莉の継母である桃花(小雪)。令嬢であった桃花のバックには多くの企業や政治家たちもいる。その桃花が、茉莉とあかり陣営に協力したいと言い出したのだ。民政党を切って支援先をあかり陣営に切り替えてと実父にお願いすると…。理由は「賭けをしてみたくなって」と、その思惑ははっきりしない。
そして選挙直前、流星から茉莉に連絡が入る。内容には「ザネリについて話したい」と。そして流星は新座値利学部長の調査結果を茉莉に渡す。それは鷹臣への裏切り行為。だが流星は「茉莉ちゃんには知る権利がある。茉莉ちゃんにとっても爆弾だから」と語り──。
あの宮沢賢治の言葉に五十嵐が感化されたのは…?
本作もいよいよ、最終章に突入した。この第10話では、これまでの謎に軽く触れ、整理されたような展開だったが、これはむしろ、最終話へ向けての助走とも言える物語づくりだ。
その中で再び、宮沢賢治の「正しく強く生きるとは、銀河系を自らの中に意識して、これに応じて行うことである」という言葉が登場した。選挙を仕切らせれば負け知らず。それが五十嵐隼人という男の評価だった。だが今、その男は「勝つこと」ではなく「正しいこと」を選ぼうとしている。
五十嵐が口にした宮沢賢治の言葉は賢治が1926年に書いた『農民芸術概論綱要』の言葉だ。政治から切り捨てられ、コインランドリーで「よろず困りごと相談所」を営む日々。勝ちを演出してきた男が、自分では勝てなかった。だからあかりと茉莉という、勝ち目の薄い選挙に飛び込む2人を見ているうちに、「銀河系を意識した闘い方」というものが、ようやく腑に落ちてきたのではないか。
そのことが、今回の宮沢賢治の言葉と重なる時、ある逆説が浮かび上がる。「正しく強く生きるとは、銀河系を自らの中に意識して、これに応じて行くことである」。銀河系の視点から見れば、選挙の勝ち負けはどれほどの意味を持つのか。五十嵐が政界で「勝たせ続けた」ことは、果たして「正しく強く生きること」だったのか。この言葉は、五十嵐にとって自分の過去への、静かな問い直しでもあるかもしれない。

