東京都は、STEM分野での女性活躍を推進するため、女子中高生向けのオフィスツアーを6月8日に開催した。5年目となる今年度は夏休みに50以上の企業等でツアーを開催する予定であり、それに先立ち令和8年度のキックオフイベントとして、東京都庁として初めて技術系職員の職場等を巡るツアーが実施された。
松本明子副知事による挨拶とイベントの趣旨
はじめに、主催者を代表して松本明子副知事が登壇した。東京都は「誰もが自らの生き方を性別にとらわれず選択できる社会」を目指して様々な取り組みを実施しており、本イベントもその1つであると説明。日本の女子学生は理数系の学力が世界トップクラスである反面、理系分野で活躍している女性は非常に少ないという課題を抱えていると指摘した。
この状況を変えていくため、女子中高生を対象に理系職場を体験できるオフィスツアーを実施しているとのこと。今回は初の試みとして、都民の生活インフラを支える都庁の技術現場を見学することとなり、実際の現場体験や女性技術者との交流を通じて将来のヒントを持ち帰ってほしいと呼びかけた。
都庁の女性技術職員によるパネルディスカッション
イベントでは多岐にわたる都の技術職の役割や土木、建築、機械、電気等の業務内容について東京都人事委員会事務局が説明を行った。その後、パネルディスカッションが開催され、東京都の技術職場で活躍する4名の女性職員が、生徒たちからの質問に対して自身の経験やキャリアを語った。
今の仕事のやりがいについては、都営交通の駅施設などの基本計画を担当する職員が、関係者や外部との難しい調整に苦労しつつも、完成した施設で利用者が安全・便利に過ごす姿を見たときに役立っていると実感できるのが最大の魅力だと語った。1400万人の都民の当たり前の日常を裏から維持し続けることに大きなやりがいを感じているとのことだ。
都庁の技術職を選んだ理由としては、地下鉄や港湾、大規模開発など多様で幅広いインフラ事業に携われ、様々な分野の専門家と関わりながら大きく成長できる環境が決め手になったと明かした。民間企業とは異なる「東京の街そのものを創り、守る」というスケールが魅力だという。
中高生時代の経験については、数学や理科で培った論理的な考え方や問題解決力が今の仕事に直結しているほか、チームで仕事を進めるため部活動やクラス行事での活動も役立っていると話した。高校時代の弓道部で型通りにいかない状況を経験したことが、現在の仕事で求められる柔軟な対応に活きているという具体的なエピソードも披露された。
女性の働きやすさについては、育児休業制度だけでなく復帰後の時短勤務やテレワークなどライフステージに合わせて柔軟な働き方を選べる点や、周囲の協力的なサポートのおかげで安心して仕事と育児を両立できる環境が紹介された。現場ではトイレや更衣室の整備が進んでおり、1時間単位で取得できる休暇制度も日常の用事にとても便利であると話した。
最後に松本明子副知事から、東京のインフラが海外から驚かれるほど安全で確実につくり上げられてきた成果を伝えるとともに、今後は気候変動による災害の激甚化や人口減少など課題がさらに複雑になるため、人口の半分を占める女性の力が不可欠であるとして、未来を担う世代への期待のメッセージが送られた。
馬込車両検修場での点検・整備見学
最初の見学地として、都営浅草線や大江戸線の点検・整備を行う「馬込車両検修場」を訪れた。安全で快適な運行を守るために稼働する広大な工場棟で、車両の点検や整備を行う様子を見学したという。初めてレールを手に取った生徒たちは、ずっしりとした重みに驚きの声を上げていたとのこと。
また、パンタグラフの作動体験では順番にスイッチを入れ、巨大なパンタグラフが動く様子や警笛の大きな音に皆が釘付けになった。次々と交代しながら技術の裏側を体感し、令和8年4月に入庁した女性職員が働いている姿を見る機会もあったそうだ。
有明水再生センターでの水質検査実演と模型実験
続いて、臨海副都心にある「有明水再生センター」を見学した。地下にある下水処理施設では、下水に含まれる沈みやすい汚れを沈殿させて上澄みを分離させる「沈殿池」や、微生物の入った泥を下水に加えて汚れを付着させて塊を作る「反応槽」について、アクリル水槽を使った模型実験を見学した。
水質を管理している「水質試験室」では、女性職員がピペット等の実験器具を使って水質を検査するプロセスを実演。生徒たちはビーカーを興味深く眺め、各設備がどのような役割を担っているのかという職員の説明に熱心に耳を傾けていたという。
令和8年度夏は50社以上でオフィスツアーを開催
女子中高生向けオフィスツアーは、東京都が公益財団法人山田進太郎D&I財団と連携して令和4年度から開催している。今年度の夏は全日本空輸、野村ホールディングスなど東京都で初開催のツアーも含め、中高生に人気の企業50社以上での開催が予定されている。
第一弾の開催時期は7月22日から8月13日までで、募集締切は6月23日正午。第二弾の開催時期は8月17日から8月31日までで、募集締切は7月21日正午となっている。対象は都内在住または在学の女子中高校生で、参加費は無料。会場までの交通費等は参加者の負担となる。応募は公式ホームページから受け付けており、定員を上回る場合は抽選となる。




