取材の終盤、話題は映画監督という仕事そのものへ及んだ。中田監督は、かつて大島渚監督から聞いた言葉を振り返る。

「脚本をしっかり作って、キャスティングが終わったら、監督の仕事は7~8割終わっている、と大島さんはおっしゃっていたんです」

若い頃は、「いや、そんなことないだろう」と反発する気持ちもあった。しかし今は、その意味が少しずつ分かるようになったという。

「これは別に謙遜でもなんでもなくて、本当に監督なんて、“薄皮一枚”なんですよ。もちろん、『その薄皮一枚が大事なんだ』と言われれば、ありがたいんですが(笑)。そういう意味では、映画でもドラマでも、結局どこかで自分の色は出るだろうと思いながらやっています。ただ、『絶対こうでなければならない』という考え方はあまりないですね」

かつて中田監督が助監督を務めていた頃、「台本に目線の向きらしき矢印が書いてあるだけで、ほとんど何も言わない大御所の監督」と、「こと細かく演技指導をするタイプの、長回しで有名な監督」という、その対照的な監督たちの背中を見て演出を学んだのだそう。

「例えば神代辰巳監督は、俳優の演技に満足できないとき、『もうちょっと何かないか』とだけ言うんです。これが役者にとっては一番きつい(笑)。僕はどちらかというとよくしゃべるほうなんです。でも、しゃべらない演出への憧れはずっとあります」

だからこそ、信頼できる俳優には委ねたい。

「もちろん、全然違うことをやったら言いますよ。伊藤くんやGACKTさんのように『やれるな』と思う俳優には、できればあまり言いたくないというか。その方がうまくいくことが多いと思っています。今回はそれが体現できたと言えるかもしれません」

主人公の葛藤「つい自分に置き換えて考えてしまう」

物語は後半に向かうにつれ、伊崎の内面へと深く踏み込んでいく。自らが書いたシナリオによって現実に人が死んでいる。その事実を知りながらも、作家として成功したいという夢は手放せない。その葛藤について尋ねると、中田監督は笑いながらこう切り出した。

「つい、自分に置き換えて考えてしまいますね。僕もハリウッドに居た頃は似た心境だったかも知れないですね(笑)」

もちろん冗談めかした言い方だったが、その後に続いた言葉は印象的だった。

「伊崎は自分が考えた完全犯罪のプロットを3本完成させるわけです。それは黒川から与えられたミッションでもあるけれど、同時に『ミステリー作家として、世に出たい』という長年の夢をかなえるための最大の挑戦でもある。最初は彼も『こんなもの書けないよ』と思っていたかもしれない。しかし、結果として書き上げてしまう。そして『暗殺コンサルタントをやるのか、やらないのか』という究極の選択を迫られる。もちろん『断ったらどうなるんだろう』という恐怖心もあったろうと思います。だから僕は彼が単純に闇落ちしたとか、ダークサイドに堕ちたとは思わないんです」

だからこそ、「後半は罪悪感との戦いになっていく」のだという。

「4話、5話、6話と物語が進むにつれて、彼の人間性が見えてきます。『おお、そう来たか』と思ってもらえる展開になっていると思います」

“完全な暗殺”を描くはずだった青年は、やがて自らの罪と向き合うことになる。その結末を見届けた時、果たして我々は何を思うのか――。物語の続きがどうにも気になるところだが、中田監督自身もまた、視聴者の反応を楽しみにしているようだった。