そう監督が語るように、本作における大きな見どころとなっているのが、思わず「実際にありそうだ」と感じてしまうほど具体的で緻密な暗殺プランの数々だ。もっとも中田監督は「もちろんフィクションなので、どこかでは嘘をついている」と笑う。

「実際にもしもその仕事に従事している方が見たら、『いや、さすがにそれはあり得ないですよ』といった部分もきっとあるにはあると思います。でも少なくとも一般の視聴者の方が見た時に、『もしかしたらあるかもしれない…』と思えるラインは狙いました」

そのため撮影前にはロケ地の候補を回り、設定の裏付けとなる情報も集めたという。

「『これだと視聴者の気持ちが離れてしまうんじゃないか』とか、『このやり方は少し無理があるんじゃないか』とか。戸田山(雅司=脚本)さんにも何度か修正していただきながら作っていったんです。というのも、この作品には『実はこうでした』という種明かしが何度も出てきますし、黒川の視点から見た裏側も描かれる。そこがしっかりしていないとドラマ全体が締まらなくなってしまうので。その部分にはかなり気をつかいました」

とはいえ、完全なるリアリズムを目指したわけでもないのだという。

「以前、WOWOWでやらせてもらった『連続ドラマW正体』が、地面にしっかり足をつけている作品だとしたら、今回の『コンサルタント』は10センチ、15センチくらい浮いている感じ。一方、僕のホラー映画は大体3メートルくらい浮いていますから(笑)」

今回のドラマで中田監督が目指したのは、“現実と虚構の間にある恐怖”だった。

「ファンタジーではないけれど、完全な現実でもない。その間にある不安を描きたかったんです。『あったら怖いよね、ゾクリ』という感覚を、なるべく突きたかった」

話題は自然と『リング』へと移った。公開当時、映画の完成がギリギリまでずれ込み、取材陣は事前に映像を観ることがかなわず、脚本だけを読んでインタビューに訪れていたという。

「みんな笑っていましたよ。『監督、テレビからお化けが出てくるってどんな感じなんですか?』って(笑)」

中田監督自身も笑顔で応じていたが、内心は穏やかではなかった。

「こっちも笑って答えていましたけど、内心は『クソッ!』と思っていました(笑)。だって、あそこの瞬間が怖いと思ってもらえなかったら、映画として成立しないですから」

現実には起こり得ない恐怖を信じさせるホラーと、現実に起こるかもしれない不安を描く『コンサルタント』。アプローチは異なっても、人をゾクッとさせたいという思いは共通している。

  • 伊藤健太郎

「天性の勘がある人」伊藤健太郎が見せた変化

主人公・伊崎耀を演じた伊藤健太郎について、中田監督は「天性の勘がある人」と評する。特に印象的だったのはクランクイン初日だった。物語冒頭の伊崎と、そこから何もかも大きく変わってしまった最終盤の伊崎を同日に撮影することになったが、中田監督は細かな指示を出さなかったという。

「別に僕が細かく注文したわけじゃないんです。でも口調から何からちゃんと変わっていた。これでいいよね、という演技を自然にやってくれたので、天性の勘がある人だなと思いました」

リハーサルを重要視しつつも、現場で俳優と対話しながら作っていくのが中田監督のスタイルだ。

「僕は役柄については、あまり事前に詰めて話すタイプじゃないんです。リハーサルをやりながら少しずつ。伊藤くんもそうでしたね」

  • GACKT

    GACKT

一方、伊崎を裏社会へ導く黒川を演じるGACKTについても、中田監督は高く評価する。

「ベテランの俳優さんでも音を上げそうな量のセリフなんです。しかも説明しなきゃいけない内容が多い。だから撮影前はこちらもいろいろ方策を考えていたんですよ」

だが、いざ現場に入ると心配は杞憂に終わった。

「何の問題もなかったです。彼のプライドがそれを許さないところもあったのか、長いセリフも全てきちんと入っていましたし、作品のテーマにも共感してくださっていた。実は、“黒川が杖をついている”という設定は、GACKTさんからの提案なんですよ」

現場では、伊藤健太郎と同じく、まずGACKTの演技を見つめることに集中したという。

「もちろん監督ですから、現場で舵を取ることは必要なんですけど、今回は何も言わなくてもすでにちゃんと成立していた。お互いの信頼関係で進められたと思います」