
ナイル・ホーラン(Niall Horan)が通算4作目となるニュー・アルバム『Dinner Party』をリリース。最新作の制作背景、ワン・ダイレクション時代の盟友リアム・ペインの喪失、ツアーの展望などを大いに語った独占ロングインタビューをお届けする。
最近の日曜の午後、ナイル・ホーランがロサンゼルスの自宅を出たとき、メルローズ・アベニューにある趣のあるカフェ、Olive and James Cafe Teaにはすでに数百人が列を作っていた。彼が到着する頃には、その列はブロックをぐるりと囲むほどに伸びていた。どれほどおいしい抹茶ラテやティラミスラテであっても、そこまで長時間並ぶ理由にはならないだろう。彼らのお目当てはコーヒーではなく、すべては彼のためだった。
ロンドンとロサンゼルスを行き来しながら暮らすナイルは、6月5日にリリースされた4作目のスタジオ・アルバム『Dinner Party』を記念して、この店とコラボレーションした。SNSでの告知では、限定グッズやドリンク、そして「いくつかのサプライズ」が予告されていたものの、本人が来場するとは一言も書かれていなかった。「あれほどの人数が集まるとは思っていなかったから、全員に挨拶することはできなかった」と、ナイルは翌朝語る。
32歳になった彼は、2010年に『Xファクター』でワン・ダイレクションが結成されて以来、人生の大半にわたってファンが変わらず自分のもとに集まってくれる光景を見てきた。バンドが巻き起こした奇跡的な成功と、その後のソロ・キャリアがそれを証明している。しかし彼自身は、それを当然のことだとは思っていない。自分が現れるかどうかも分からないカフェに向かって、何百人もの人が予定を投げ出して集まってくれることに、今でも驚かされるという。「ただコーヒーを無料で配っただけだったんだ」と彼は笑う。
集まったファンたちも準備万端だった。1D時代のJ-14(アメリカのティーン向け雑誌)のポスターや人形を持参した人もいれば、恋に落ちた心情を描いた3作目のアルバム『The Show』を引っ提げて行われた2024年のソロ・ツアーのグッズを身につけている人もいた。「あのツアーとアルバムから、これほど大きな自信を得ることになるとは思っていなかった」とナイルは語る。「間違いなく自分を落ち着かせてくれたよ」。そのツアーではニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで2夜連続ソールドアウト公演を成功させ、総動員数は100万人を超えた。
「最近になって、以前にも増して強く感じるのは、一人ひとりにそれぞれ音楽を聴き始めたきっかけがあり、音楽を通じてできた友人がいて、チケット代をどうやって工面したかという物語があるということなんだ」とナイルは語る。「そういうことに、今は昔よりもずっと心を動かされているよ」。
ここ数年、ナイルは以前よりも物事を振り返る時間が増えている。現在の恋人との目まぐるしいロマンスは、このアルバムの軸となっている。彼は約6年前に自宅で開いたディナー・パーティーで現在の恋人と出会った。愛は本当に玄関先までやって来ることがあるのだと証明するような出来事だった。2024年10月に元バンドメイトのリアム・ペインを亡くした悲しみと向き合いながらも、アルバム全体を通して彼の声からは落ち着きと深い愛情が感じられる。何より『Dinner Party』は、人生と愛を祝福する作品だ。
ここでアイルランド出身のシンガーソングライターは、愛情を込めて過去を振り返りながら、胸を躍らせて未来を見つめている。さらなる音楽、より大きなステージ、そして人々を結びつけるあらゆる機会を心待ちにしている。
愛を見つけること
―このアルバムの先行シングル「Dinner Party」は、恋人と出会って以来、あなたの人生が良い方向に変わったことを象徴する曲になっています。あの夜の前、あなたはどんな心境だったのですか?
ナイル:本当に独り身だったよ。振り返ってみると、僕の人生の大部分というか、ほぼすべてが仕事を中心に回っていた。仕事と仕事の合間の空白期間は、家で何もしないでのんびり過ごして、次にツアーに出てまた同じことを繰り返す日を指折り数えて待つだけだったんだ。20代半ばで、ただ自分の人生を楽しんでいた。ツアーをして、音楽を作って、それに伴うあらゆることを経験していた。自由気ままで、何かや誰かを特に求めていたわけではなかった。そして世の中の巡り合わせなのか、その真逆のことが起きたんだ。
―そのディナー・パーティーは誰が開いたものだったのですか?
ナイル:僕だよ。とはいえ、たいそうなディナー・パーティーではなかった。正直に言うと、コンロの前に立って料理するというより、Uber Eatsに頼った会だったね。でも何人かが集まって一緒に食事をして、それだけだった。本当にそれだけ。
―曲の中に〈Im done looking for somebody〉(もう誰かを探すのはやめた)という一節があります。
ナイル:そういう考えって、いつも頭のどこかにあるものだろう? 落ち着いて家庭を持って、そういう人生を送りたいという気持ちはある。でも同時に、どっちつかずの状態でもいるんだ。考えていないようで考えているし、考えているようで考えていない。完全にスイッチを切ってしまうことはないんだと思う。だから結局のところ、待合室で座りながら、医者が入ってくるのを待っているようなものなんじゃないかな。
Photographs by ELIZABETH WEINBERG
―前作に続き、今作もまた愛やロマンスに深く根ざしたアルバムになっています。失恋について書くのと比べて、ソングライターとしてはどんな感覚ですか?
ナイル:まったく違うものを書くことになるね。スタジオに入ってゼロから何かを作り上げなければならないとしたら、そのほうが難しい。もちろん、ときには観察者としての視点で曲を書くこともある。他人の状況や人間関係を見たり、街で目にした出来事から着想を得たりするんだ。でも愛や失恋については、自分自身がその渦中にいるときのほうがずっと書きやすいと感じる。ここ2枚のアルバムがよりロマンティックな内容になったのは間違いなく、その時々の自分がそういう場所にいたからなんだ。
―ただ、その中にも葛藤や不安のような要素は残っていますよね。何かがうまくいかなくなるかもしれないという意識も感じられます。
ナイル:もし全部がバラ色だったら、面白い作品にはならないと思う。僕が大好きな曲には、どれも少しの疑念が含まれている。そして疑念がまったくないなら、それは自分に嘘をついているということだよ。歌詞を書こうとするとき、僕にとっては両方の要素が必要なんだ。疑いを描いた曲であっても、最後は少し明るい結末にしたいといつも思っている。以前、ジュリア・マイケルズと「What a Time」を作ったときのことを覚えているよ。初めてあの曲を聴いたとき、ずっと「What a time, what a time, what a time」(なんて素晴らしい時間だったんだろう)と歌っているんだけど、最後の最後で彼女が「What a lie, what a lie, what a lie」(なんて嘘だったんだろう)と歌うんだ。その瞬間に「まさにこれだ」と思った。曲の意味をひっくり返して、まったく違うものにしてしまう感覚が好きだったんだ。今回のアルバムの「Better Man」でも同じようなことをやった。悪夢のような不安や疑念が少しあって、そこにソングライティングの技法や仕掛けも織り込んでいる。
―あなたにとって優れたポップ・レコードとはどんな作品ですか?
ナイル:とにかくフックの強さだね。できる限り多くの耳に残る要素を曲の中に詰め込もうとすること。歴史に残る優れたポップ・ソングには、必ず素晴らしいフックがある。音楽的なフレーズかもしれないし、何度も繰り返される短いメロディかもしれない。それが理由で「Dinner Party」にはコーラスをたくさん入れたんだ。自分にとってあの曲の一番良い部分はコーラスだと思ったからね。
―最近はブリッジも再び重視されるようになってきました。ポップ・ミュージックはしばらくブリッジを失っていたように思います。
ナイル:また聴けるようになってうれしいよ。ポップ・ソングライターたちにとっては、オリヴィア・ロドリゴが大きな影響を与えた存在だと思う。〈Red lights, stop signs…〉みたいなフレーズ──彼女はああいうことをよくやるよね。オリヴィアの音楽で好きなのは、最初はひとつの曲を聴いていると思わせておいて、気づけばまったく別の曲になっているところなんだ。音楽的に完全にひっくり返って、違う場所へ連れて行かれる。ブリッジに入ったり、ちょっと奇妙な音楽的ブレイクダウンに突入したりする。彼女とダン・ニグロがやっていることは、本当に良いチームワークの成果だと思う。間違いなく多くの人に影響を与えているし、僕自身もその一人だよ。
創作と休息のバランス
―今回のアルバムにはロックの影響も感じられます。「Tastes So Good」はブリンク182を思わせますね。
ナイル:ブリンクは間違いなくそうだね。あのドラム・サウンドはまさに追い求めていたもので、90年代後半から2000年代初頭のパンク・ロックの時代に由来するものなんだ。ロックは子どもの頃からずっと僕の人生に大きな影響を与えてきた。僕自身はポップ・ソングを書くけれど、それを時々違う装いで包んでみるのは面白い。そして今は、自分のキャリアの流れとして、常にライブのことを考えているんだ。ツアーに出て毎晩ステージに立つことで、本当に多くのことを学んだ。Spotifyを眺めたりコメントを読んだりしていても限界があって、実際に人々がどう感じているのかは現場に行かなければ分からない。会場にいればそれが見えるんだ。よりロック寄りの曲は、ライブだと本当に盛り上がるからね。
―『The Show』ツアーは、ある意味で待ちに待った帰還のようにも感じられました。その前の『Heartbreak Weather』は2020年3月という最悪のタイミングでリリースされましたし、ルイス・キャパルディとのツアーも予定されていましたが、結局すべて消えてしまいました。
ナイル:あれはいまだに引きずっているよ。本当にひどかった。アルバムは出たし、ツアーもやるはずだった。でもみんなが知っているように新型コロナが起きて、実現しなかった。まあ、今となっては実現しなくて良かった気もするけどね。だって僕とルイスなら6週間ずっと酒を飲み続けていただろうから(笑)。でも本当に、あのツアーがなくなったことで、2018年以来ツアーをしていなかった僕には5〜6年もの空白期間が生まれてしまった。2024年になる頃には、ファンはかつてないほど準備万端で、ずっと出番を待っていてくれたんだ。ツアーのブッキングについてエージェントたちと話していたときも、彼らはアリーナ公演の話をしていて、僕は「本当に大丈夫なのか? 恥をかくことにならないか?」と思っていた。だけど結果的には人生で最もクレイジーな一年になったよ。世界中で150万人くらい、信じられないほど多くの人たちの前で演奏したんだから。
―2018年の『Flicker』ツアーでは比較的親密な雰囲気の野外劇場を回っていましたが、そこからマディソン・スクエア・ガーデンのヘッドライナーになりました。
ナイル:車で近づいていって、マディソン・スクエア・ガーデンの外壁に自分の顔が掲げられているのを見たときは、本当に信じられない気持ちだったよ。もしあれ以降二度とあそこで演奏できなかったとしても、それだけで人生の目標をひとつ達成できたと思えるね。
―ライブ会場では、かつてファンが「ナイルならマディソン・スクエア・ガーデンを満員にできる」と投稿した古いツイートが書かれたポストカードも配られていましたね。ファンの言葉を作品や演出に取り入れることが増えているように感じます。「Flowers」もそこから生まれた曲でした。
ナイル:僕はSNSを延々と眺め続けるタイプではないんだ。でもたまに見ていると、ふと目に留まるものがある。「ナイル、フォローして」「ナイル、大好き」「嫌いだ」みたいな投稿が並ぶ中で、「Your eyes could grow flowers(あなたの瞳なら花を咲かせられる)」っていう投稿があったんだ。本当にそれだけのツイートだった。でも僕は「面白いな」と思った。そのときはエイミー・アレンと一緒にいて、Austin City Limitsの2週末公演の合間にテキサスにいた。ソファに座って次は何をやろうか考えていたとき、そのコメントが目に入ったんだ。そこから、ちょっとした仕草や人柄、人に与える感情だけで大きな力を持つ人について考え始めた。その人はあまりに強い存在感を持っていて、その瞳から花が咲いてもおかしくない──そんなイメージだね。そういう言葉って思わず耳をそばだててしまうんだ。
―アーティストの中には、とても内向きで「他人の音楽は聴きたくない」というタイプもいます。でもあなたはまったく逆ですね。
ナイル:そうだね。最初に出会ったシンガーソングライターはポール・サイモンで、そこからダミアン・ライスへとつながっていった。あるいは最初に好きになったロック・バンドがイーグルスで、そこからブルース・スプリングスティーンやフリートウッド・マックへと広がっていった。そうやって常に新しいものを拾い続けているんだ。今の時代、それを避けるほうがむしろ難しい。周りの人たちが聴いている音楽に触れたり、SpotifyやApple Musicでさまざまなプレイリストを巡ったりしているとね。意識しているかどうかに関係なく、いろいろな影響を受けずにはいられないんだ。

Photographs by ELIZABETH WEINBERG
―自宅でディナー・パーティーを開くとき、どんなプレイリストを流しているのですか?
ナイル:たいてい最初は「今日は落ち着いた夜になるぞ」って思うんだけど、結局みんな酔っぱらってしまうんだよね(笑)。最初はたぶん初期のビリー・ジョエルのアルバムか、ダミアン・ライスの『O』あたりから始まる。そしてそこからフリートウッド・マックへ移っていく。でも気づいた頃には何でもありになっているんだ。正直なところ、僕はほとんどどんなジャンルの音楽でも聴くよ。何杯か飲んだ後なら、とにかく立ち上がって踊りたくなるような音楽なら何でもね。
―「Little More Time」はまさにその感覚、つまりもう少しだけ家で過ごしていたいという気持ちを歌った曲ですね。
ナイル:あの曲はナッシュヴィルで書いた瞬間から、今でも聴くたびに同じ高揚感がある。本当に気分が良くなる曲なんだ。歌詞も驚くほど早く書けた。というのも、あれは僕が常に考えていることだからね。例えば去年は、12日おきくらいにロサンゼルスとロンドンを行き来していた時期があった。本当にスーツケースを開けないままの期間もあったんだ。玄関に置きっぱなしにして、その中から服を取り出して洗濯し、また戻して、また取り出して……そんなことを繰り返していた。気づけばまた出発する日が来ている。さすがに嫌になってきたんだ。普段なら平気なんだけどね。十分すぎるほど旅をしてきたし、ブリティッシュ・エアウェイズのマイルだって山ほどある。でもその頃は、「もういいから家にいたい」と思うようになっていたんだ。
―ライブでどう響くかを意識しながら曲を書いている一方で、その曲自体は「もう出かけたくない」という気持ちを歌っているわけですね。
ナイル:数週間ほど作曲のために家を離れていると、途中で「もう完全に行き詰まったな」と思う瞬間が来るんだよ。ここ10曲くらい全部ひどい出来だな、もうここで切り上げて家に帰ろう、みたいな(笑)。そういうのは少しうんざりする。でもツアーはまったく別物なんだ。僕らの仕事の中でも特別なものだよ。前回のツアーでは、僕と恋人の間でとても良いバランスが取れていた。どれくらい家を空けるのがちょうどいいか、ほとんど職人芸みたいなレベルで分かっていたんだ。次のツアーについても、どんな生活になるかは理解している。でもツアーだけは完全に別枠なんだ。考えるだけでワクワクするよ。
―あなたやエド・シーラン、ルイス・キャパルディ、ノア・カーンのようなアーティストには共通点があります。大規模な公演を行いながらも、その後は表舞台から離れて普通の生活に戻る。その感覚を持てるようになったのはいつ頃でしたか?
ナイル:人間が自分自身を差し出せる量には限界があるんだ。身体的にも、精神的にも、あらゆる意味でね。もちろんライブをやれるのは素晴らしいことだけど、その一方で別の時間も必要なんだ。ずっと走り続けることはできない……。正直、エドがどうやっているのか僕には分からないよ。彼は本当にマシーンみたいな人だからね。僕の場合はたいてい9〜10カ月ツアーをやって、それが自分の仕事の期間だと割り切る。そして終わったら休むんだ。年齢を重ねると、人生のバランスを取れるようになる。それは本当に大事なことだよ。
ノア・カーンだって、この2年間ほとんど姿を見せずに過ごしていなかったら、「The Great Divide」や「Porch Light」は生まれていなかったはずだ。アルバムの他の曲も聴いたけれど、本当に信じられないくらい素晴らしい。でも、ずっと動き続けていたら次に何を作るべきか考える時間なんてないんだ。まずは人生を生きなければならない。そして、その経験を持って音楽のもとへ戻ってくる必要があるんだ。
リアム・ペインの喪失を乗り越えること
―表舞台から離れるうえで、一番不安になるのはどんなことですか?
ナイル:やっぱり「みんなまだ待っていてくれるだろうか?」ということだね。「その間に別の新しいスターが現れて、そっちに移ってしまうんじゃないか?」とか。そういう考えが頭の中をぐるぐる巡るんだ。でもありがたいことに、その点こそ今回いちばん驚かされた部分だった。長年にわたってファンの忠誠心は見てきたけれど、2024年にそれを自分の目で改めて目の当たりにしたときは本当に衝撃的だった。6年間ツアーをしていなかったのに、フェスティバルに足を運んでくれて、さらにアリーナを埋めてくれる。信じられない体験だったよ。ファンからそういう安心感をもらえると、少し表舞台を離れることも楽になる。「よし、前回は本当に気に入ってもらえたみたいだ。少しだけ時間をもらおう」と思えたんだ。
―その間に起きているのは、人々が音楽とより長い時間を過ごし、その作品との関係性が変化していくことでもあります。例えばワン・ダイレクションの『Made in the A.M.』は、今聴くとアルバム全体が”別れ”について歌っているように感じられて、なかなかつらい作品になっています。
ナイル:面白いことに、あれは僕のお気に入りのアルバムのひとつなんだよ。
―喪失を経験したことで、あなた自身にとってもあの曲たちとの関係は変わりましたか? 少なくともファンにとっては、リアムが亡くなったあとに「Walking in the Wind」を聴くのはつらい体験だったと思います。
ナイル:そう言われてみると、実はその視点では一度も考えたことがなかった。でも今その話を聞けてよかったよ。たぶんこのあと聴き直しに行くと思う。そういう見方は本当にしたことがなかったけれど、なぜそう感じるのかはすごくよく分かる。まず何より、あのアルバムには素晴らしい曲がたくさん入っているしね。それに僕たち自身も、あの作品のツアーができなかったことを残念に思っていた。今の話は本当に衝撃的だったよ。そんなふうにはまったく考えたことがなかった。ほかにはどんな曲が入っていたっけ? ちょっと思い出してみよう。僕は「Walking in the Wind」が大好きなんだ。
―「Infinity」も象徴的な曲のひとつですね。
ナイル:ああ、そうだね。リアムが亡くなったあと、僕たちの写真が初めて出回り始めた頃のことを覚えているよ。ミュージックビデオの撮影で使った無限大(∞)のマークが壁に映っている写真があったんだ。その写真を見た瞬間、真っ先に頭に浮かんだのがあの曲だった。
―ソングライターのジョン・ライアンとジュリアン・ブネッタは『Made in the A.M.』にも深く関わっていましたし、その後も長年にわたってあなたの成長を見守りながら創作を共にしてきました。今回、「End of an Era」を彼らと作った経験はいかがでしたか?
ナイル:実は「End of an Era」は4回くらい書き直しているんだ。最初の段階では、僕にとってあの曲は「よし、次へ進もう」という意味だった。未来を見つめながら、過去を懐かしく振り返り、自分が手にしてきたものに満足しつつ、これから起こることに胸を躍らせる。そんな曲だったんだ。あれを書いたのはかなり前のことだった。
でもリアムが亡くなったあと、「いや、この曲にもう一度向き合わなければいけない」と思った。ジョンとジュリアンは長い間リアムの隣人だったし、僕たちはみんな一緒に成長してきた仲間だった。だから僕たち3人にとって、あのような曲を書かなければならなかったこと自体が本当に信じ難い経験だったんだ。だって、そんな曲を書く日が来るなんて誰も想像しないからね。
スタジオの外にジョンと二人で出て、20分くらいかけて歌詞を書いたのを覚えている。そのあと最初からやり直したけれど、サビだけは残した。本当に不思議な体験だったよ。でも同時に、自分たちのためにも、大切な人を失ったすべての人のためにも、ファンのためにも、そしてリアムを知るすべての人のためにも、書かなければならない曲だと感じていた。そうするのが正しいことだと思えたし、実際に僕たち自身もそうしたかった。ただ、その曲を書かなければならなかった理由があまりにも悲しいだけなんだ。
―それでも、この曲には祝福のような感覚がありますよね。打ちのめされるような曲ではありません。
ナイル:そうだね。結局のところ、僕の記憶はどれも幸せなものだから。曲を書いていたときもその話をしていたんだ。僕たちの思い出といえば、一緒に世界中を旅して、ふざけ合って、楽しい時間を過ごしていたことばかり。みんなまだティーンエイジャーだった。ネガティブな記憶なんてないんだ。
だからこそ、それについて書くことはある意味で解放的だったと思う。その感覚は曲にも表れているんじゃないかな。1番はかなり切ない内容なんだけど、その後で「でも僕たちには素晴らしい時間があったじゃないか」と振り返る。悲しさと温かさ、その両方が入っているんだ。それに、この曲も最初はひとつのタイプの曲として始まって、途中からまったく違う表情を見せるところが気に入っている。どこかワン・ダイレクション時代の曲を思い出させる部分もあるんだ。
共に年齢を重ねていくファンとの絆
―次のツアーについてはどんな構想を描いていますか? ファンとの再会という意味でも、多くの人が求めている時間になりそうです。
ナイル:本当に待ちきれないよ。ライブは僕たちの仕事の中で一番好きな部分だからね。それに、この15年間で僕がいちばん多くやってきたことでもある。ある時期からは、何千人もの前で演奏することが妙な意味で当たり前になっていたし、最近はそのことについて改めて考えるようになっている。今はとにかく、自分にできる限り最大級のショーを作り上げることにワクワクしているんだ。実はもうセットリストもほぼ完成している。ツアー開始までまだ半年もあるのにね(笑)。頭の中にすべて描けている。ステージの見た目も完全に分かっているよ。
何より大切にしたいのは、お客さんに払ったお金以上の価値を感じてもらうことなんだ。僕たちはコミュニティ型のファンダムが生まれ始めた時代のアーティストだったから、今はその結びつきがこれまで以上に強くなっているように感じる。それはアーティストにとって本当に特別なことだよ。自分が書いた曲に人々がこれほど深く感情移入してくれて、その結果としていろいろな行動を起こしてくれるんだから。もちろん、それは僕のためだけではない。彼ら自身のためでもある。そのことも同じくらい大切だと思っている。
―『The Voice』や他のアーティストとのコラボレーションを通じて、ワン・ダイレクション時代からのファンとはまた違う層の観客も獲得してきましたね。
ナイル:特に前回のツアーでアメリカを回ったとき、その変化を強く感じたよ。観客の顔ぶれがかなり違っていたんだ。本当に『The Voice』のTシャツや「Team Niall」のTシャツを着ている人たちがたくさんいた。素晴らしいことだと思う。みんな気軽に来て、何杯か飲みながら音楽を楽しむ。そして気に入ったら次の公演にも、その次の公演にも足を運んでくれる。
フェス出演を経験したことも大きな成長につながったと感じている。フェスでは当然、その場にいる全員が自分を観に来ているわけじゃない。でもだからこそ意味があるんだ。誰でも歓迎だよ。ぜひ来てほしい。一緒にこの輪を大きくしていこう、という気持ちなんだ。こういうことが今も毎日のように起きていると思うと、本当に信じられない気分になるよ。

Photographs by ELIZABETH WEINBERG
―この夏はトーマス・レットとのダブル・ヘッドライナー公演も控えていますね。これまでも共演していますが、あなたのアルバムには毎回どこかカントリーやナッシュヴィルの要素が感じられます。
ナイル:アイルランドのフォーク音楽とカントリー音楽は、僕の中ではほとんど夫婦みたいな関係なんだ。たぶんイギリスよりも、アイルランド人のほうがそういう感覚を少し強く持っていると思う。僕は昔からカントリーのストーリーテリングを高く評価してきたしね。
トーマスとの公演も本当に楽しみにしているよ。ハーシーパークには2013年に演奏しに行ったことがあるんだ。あの場所について覚えているのは、とにかくチョコレートの匂いが強かったことと、ハリーが階段を何度も駆け上がったり駆け下りたりしていたことかな(笑)。僕はその後ろをセグウェイでついて回っていた。あの会場の思い出といえばそんな感じだね。
今回の公演は、ふたつの世界を結びつける面白い組み合わせだと思う。もちろんトーマスはとてもカントリー色の強いアーティストだけれど、同時にポップな感覚も持っている。すごく良いバランスだよ。
―「Boys Are Fun」はまさにそのセットリストに入りそうな曲ですね。
ナイル:「Boys Are Fun」は本当に楽しい曲だよ。よく「曲には書いた場所の影響が出るの?」と聞かれるんだけど、僕は実際に出ると思うんだ。「Gets It From Her Mother」はまさにナッシュヴィルの曲だし、「End of an Era」も実はナッシュヴィルで書いた。でも「Boys Are Fun」や「Taste So Good」はロンドン中心部のソーホーで書いた曲なんだ。窓の外にはあの界隈特有の騒がしさや混沌が広がっていた。何杯かビールを飲んで、それから「Boys Are Fun」を書いたんだよ。あの曲には少しヨット・ロックっぽい雰囲気もあると思う。
―今のあなたを音楽的に突き動かしているものは何ですか?
ナイル:僕は進化していくことそのものが好きなんだ。このアルバムで誰かを驚かせすぎたり、置いていったりすることはないと思う。少なくともそうであってほしいね。音楽的に「いったい何をやっているんだ?」と思われるような方向には行っていないと思う。そういうゆるやかな変化が好きなんだ。僕たちが一緒に少しずつ進化していく、その感覚がね。そしてだからこそ、8年後にはどんな音楽を作っているのか考えるだけでワクワクする。ただ、ロックの精神とフィンガーピッキングのアコースティック・ギターだけは、これからもずっと自分の中心にあり続けると思う。それは変わらない。
そして何より、ツアーこそが僕を毎朝ベッドから起き上がらせる原動力なんだ。年々その魅力が増している。ツアーとアルバムを発表したときも、空気の変化を肌で感じた。ああいう感覚そのものが、本当に刺激的なんだ。
―今年はハリー、ルイ、ゼインの3人もツアーを行っています。彼らのライブを観る機会はありましたか?
ナイル:数年前にハリーのライブに行ったよ。本当にすごかった。とんでもないことが起きていたね(笑)。ワン・ダイレクション時代のスタジアム公演を思い出したよ。見渡す限りの観客が一斉に飛び跳ねていた頃のことをね。アリーナのフロアで起きていることを眺めるのも好きなんだ。ファンのみんなが踊ったり盛り上がったりしている様子を見るのがね。そういう光景には誇らしい気持ちになるよ。みんなが自分の好きなことをやっていて、その結果として素晴らしいコミュニティを築いている。それを見るのは本当にうれしいことなんだ。ここ数週間のうちに、何らかの形でルイのライブにも行けたらと思っているよ。
ファンのことを見ていても本当に不思議な気分になる。みんな大人になったのに、あの頃と変わらない若々しいエネルギーを持ち続けていて、それをライブ会場に持ち込んでくれるんだ。そして彼らがステージに登場した瞬間に起こる、あの大歓声を聞くとね。「ああ、この叫び声は聴いたことあるな」と思うんだ。あの感覚はよく知っている。まるでロケットが今にも発射される直前みたいな音なんだよ。
From Rolling Stone US.

ナイル・ホーラン
『Dinner Party』
発売中
再生・購入:https://umj.lnk.to/NH_DP
