
海外のインディR&Bシーンと呼応するジャジーでメロウなグルーヴで支持を広げ、活動開始から1年でFUJI ROCK FESTIVALに出演したシンガーソングライター、碧海祐人が率いる碧海祐人と遊楽隊。大阪在住の現役大学生であり、目まぐるしい転調が落とし込まれつつも、緻密な筆致で柔らかなポップスとして放出するお風呂と街灯。注目の2組が、7月10日に新代田FEVERで行われるマスタリングエンジニア・風間萌が属する合同会社AMONEの主催するイベントで初対バンを行う。碧海の楽曲に惹かれたお風呂と街灯がDMを送ったところから2人の交流は始まった。音楽活動における様々なことを聞いた。
―お二人の出会いはいつだったんでしょう?
碧海:お風呂くんからDMをもらったのが最初ですね。
お風呂と街灯:「大好きです!」「飲みましょう!」みたいなやつですよね(笑)。
碧海:そう(笑)。それで下北のサーキットフェスにライブを観に行って。
お風呂と街灯:僕のバンドメンバーのベースの髙橋涼馬くんとラーメンを食べてる時に碧海くんのことを勧められて「真珠色」っていう曲を聴いたらすごく良くて。まず声が良いのと、僕がその時ちょうど聞きたかったBPMだったし、欲しいところに欲しい音があるなって思った。ちょくちょく転調するんですが、4度、5度、6度のコードがメジャーになったり、細かい表情が出ているのがいいなって。すぐにフォローしてDMを送りました(笑)。それで碧海くんがライブを観に来てくれて。僕は大阪在住なので、碧海くんのMINAMI WHEELのライブを観に行かせてもらったりして、今に至るという感じですね。
―DMはすぐに送る方なんですか?
お風呂と街灯:いや、全然送らないです(笑)。送ったのはこれまで3人ですね。この人に会いたいっていうよりは、その人に触れたいって思った時に送ります。
碧海:お風呂くんのことは知っていて、フォローされたタイミングで「曲聴きました! めっちゃ好きです」みたいなDMも来て、ナンパ師みたいに人とすぐに会いたい人なのかなって(笑)。
―ライブを見た印象はどうだったんですか?
お風呂と街灯:僕はサポートメンバーっていう言い方が主人公とサブみたいな感じがするのであまり好きじゃなくて。碧海くんは碧海祐人と遊楽隊っていう名義でライブをやっていて、僕も「バンドセット」っていう名義はあかんなと。今名称を考えてます。でもどんな名前でも遊楽隊には負ける気がしてて(笑)。しかも、碧海祐人と遊楽隊はグルーヴがタイトですごく立体感があって個性的なんですよね。セッションパートとかもマジでかっこよくて。碧海くんの声の表現も音源とは違うライブならではの余裕感があってすごく参考になります。
碧海祐人
碧海:お風呂くんのライブは自分の名前が頭に付いていることを決して忘れていない感じがしたのと、でもいろいろな節回しや、切り替わる瞬間の手癖から、バンドメンバーをちゃんと立てている感じがして、今っぽいバンドだなと思いました。僕らのバンドはロックを通ってなくて、R&Bやジャズ、フュージョンを軸にセッション的に走っていくバンドなんですが、お風呂くんのバンドはたくさんのジャンルを感じられて、唸るようなソロが勢いよく入ってくる時もあれば、お風呂くんの声が際立って演奏が細くなる時もあるのが魅力的だなって思いました。
お風呂と街灯:楽曲ごとにジャンル感がバラバラのままだとまずいので、バランスを調整しつつ、メンバーが一番生きるようなライブにしています。個人的にはまだちゃんとした正解は出てなくて、階段を歩んでいかないといけないとなって。
碧海:正解は一生出ない気もするよね。
お風呂と街灯:そうかもしれないですよね。でも碧海くんからそう見えてるのはめっちゃ嬉しいですね。ジャンルレスにしたいと思ってるわけじゃなく、全員が一番気持ちいい顔で演奏できる音楽を作る。ニュージャンルを作るぐらいの気持ちではいます。碧海くんのライブのタイト感を作りたいと思ってるんですが、めっちゃムズいんですよね。それぞれの手癖がある中、16分がタイトに揃ってるのはだいぶ師匠です。
碧海:固まってきたのは最近な気がしています。1年前くらいに、ライブでの演奏について本気で考えたことがあって。僕は音楽理論に長けているわけではないけど、感覚的でもいいから伝われと思って、バンドのメンバーに曲ごとで表したいノリ感みたいなものを細かく詰めていったんです。それをやり始めて、少しずつこの曲はこのノリ感なのかなっていうのが見えてきたタイミングで、お風呂くんに観てもらったMINAMI WHEELがあった。その時期は今年初めの3回目のワンマンも決まっていたので、ここは絶対自分たちに負けちゃいけないと思ったから、なるべく一つの塊になれるよう、すごいタイトに演奏してました。
お風呂と街灯:マジで塊でしたね。
碧海:自分の話になっちゃうんですが、昨年7月頃に事務所の契約を解消して一人体制になったんです。お金のやり取りも全部自分がやるようになりましたし、ライブも含めて全部のことを考え直して。あえて煩わしいって言葉を出しますが、煩わしいやりとりをしてでもなんでバンドをやりたいかを真剣に考えると、ライブに来てくれる人みんなを幸せにしたいだけで。それで、自分たちにとってはかますこと以上に、グルーヴや音の重なりの心地よさを維持することが重要だよねっていう話を全員にしました。ライブ活動を辞めないっていう選択肢を取ったっていうことは、自分が人に伝えるのがどれだけ下手だろうが、全部をぶちまける覚悟がいるなと。演奏するためのメンバーというよりは、元々仲が良くて、意見を言い合える関係性のメンバーに集まってもらっていて幸いだったなって思ってます。
お風呂と街灯
お風呂と街灯:僕の場合、メンバーとは世代の差があるので友達とは思っていないんですが、仕事関係だけではない存在って認知してます。普段から一緒にメシも行きますし。リハでしか会わずに次は本番でっていう関係性を良しとしている人もいると思うんですが、僕の場合は心的な繋がりがどれだけあるかがグルーヴに出てくると思っていて。普段からどれだけ目を合わせているかとか、どんな話をしているかとか、どんな癖があるのかっていう、音楽以外の部分を把握しているかが音楽の要素になってると思うんですよね。全部を知ればいいというわけではないけど、少なくとも見つけようとする意志はないとあかんなと思っているので、できるだけ積極的にメンバーに関わろうとしています。それによって、信頼関係が築かれてどこまで言えるかが変わってくる。
―7月10日に行われるマスタリングエンジニア・風間萌さん主催の新代田FEVERでのイベントが初対バンになるわけですが、碧海さんは4人編成なんですよね。
碧海:そうですね。最近ギターの若林(純)が多忙で、3月に4人編成のライブをやったんですが、ギターが一時的にいない状態に見えるようなセットリストだったり、4人で完全体のように見えるようなライブアレンジを施して、その編成でも面白いものが見せれるなという手応えがあったんですよね。6月7月のライブでは、さらにその先のことができたらいいなと思ってます。
―Xでは新曲をたくさん披露するかもしれないと匂わせていましたが。
【 出演情報 】
2026.07.10(金)新代田FEVERにて
出演いたします
碧海祐人と遊楽隊
お風呂と街灯 @ofuro_gaito
四人編成、久方ぶりのFEVER
この頃には新曲をたくさん歌ってるかもね
???? : https://t.co/4vgZe1MDr9 pic.twitter.com/ims3mK2lnk — 碧海祐人 (@masat_o_mi) May 9, 2026 碧海:今曲制作において、作曲もアレンジも作詞も全部を見直してるんですよね。超えなきゃいけないと思っている山があまりにもデカすぎて地獄みたいなタイミングで(笑)。大変だけど楽しいです。
―それぞれ風間さんとの出会いはいつなんでしょう?
お風呂と街灯:僕は去年の10月に出した「カラスの鐘」のマスタリングをしていただいた時ですね。詞ができた時点でボロ泣きするくらい気に入った曲なんですが、神マスタリングで。今回企画でも関われて幸せです。
碧海:僕はちょうど一年前に出した『光の路』っていうセカンドアルバムのマスタリングですね。その直後に僕が事務所を辞めたタイミングで、SNSのポストから何かを感じ取ってくれたらしく「大丈夫?」っていう連絡をいただいて、メンターとして相談に乗ってくれたんです。計り知れないほどお世話になっているので、今回の企画で返せるものがあったらいいなって思ってます。
お風呂と街灯:僕はまだ数回しか会ったことがないけど、底が知れなさ過ぎてめっちゃ素敵な人ですよね。どうやって知っていこうかを計画中です(笑)。
碧海:こっちが「ここまで知れたな」って思ったつもりでも全然先がありそう(笑)。
お風呂と街灯:こちらが仙人レベルにならないと難しいかもしれない(笑)。今回の企画もそうですが、マルチな人ですよね。
碧海:マスタリングって中に属していながらも外から見る仕事でもあるので、イベントを主催するのは納得ですね。風間さんってマスタリングをお願いすると、最初の段階で一度、方向性が見える形にしてくれて、そこで二人で話し合いながら「もっとヤバいの作ろう」って言って、そこから何個もバージョンを作ってバージョン7くらいまでできることがあるんです。例えば「こういう風にするともっと声が立つかも」とか「こことここを(音質として)繋ぎ合わせたら面白いかも」っていう提案をたくさんしてくれる。もしかして優遇していただいているのかもしれないですけど(笑)、僕はやれることを全部試さないと気が済まないタイプなので、とてもありがたいです。そういう性質の方がやる企画っていうのも楽しみのひとつですね。
お風呂と街灯:その話を聞いて納得しました。僕は大阪住みってこともあって、悲しいことに風間さんのマスタリングの立ち合いをしたことがないんですけど、端的に言うと音が煌びやかになったんです。作曲した時点でミックスをして、そこからアレンジしてレコーディングして、マスタリングをするっていう流れの中で、マスタリングで普通に音圧を上げるとかだと、階段を上れないこともあると思うんです。風間さんのマスタリングはそうではなくちゃんと階段を上っている実感があったし、すごく丁寧で全ての音符を愛している感じがしました。各楽器の各フレーズに気配りを感じる。そこに感動しました。
碧海:風間さんのマスタリングは従来のマスタリングとは違うことが起きている感覚がありますね。ミックスやマスタリングって外に伝えるために生まれたばかりのきれいな魂を削っていくことだと思っていて、鮮度も含めて魂が8割ぐらいになっていく感覚があって。みんなが聴けるものにするために純度を少しずつ削るような作業。一番純度が高いのは自分が作ったデモ時点のトラックだと思うんですが、風間さんは「この曲ってそもそもこういうものじゃなかったっけ?」って言い出すような人なんです。そこで僕も「僕がやりたかったことはそうだった」って気付く。だから8割じゃなくて1.1倍とかのものが作れるんですよ。そのためのコミュニケーションを欠かさずにやってくれるし、一番中にいる気がするけど、外にいるっていう不思議な人ですね。
お風呂と街灯:マスタリングが削っていく作業っていうのはわかります。自分の耳専門だったものを、多くの耳専門にするために折り合いをつけるんですよね。僕はデモの段階の意図は風間さんに投げる段階で捨てていて。つまりその時点で純度100から下がるものとして折り合いをつけてしまってますね。
碧海:風間さんにマスタリングしてもらうまではずっとその感覚でした。『光の路』の時に「魂はこれじゃないの?」って。要は「折り合いつけてるでしょ?」って言われて「バレた! そうじゃなくていいんですか?」って思った瞬間があって心地よかったです。
お風呂と街灯:ヤバい人や。
―折り合いをつけるという面ではライブはどうなんでしょう?
碧海:みんなが楽しめるもの、みんなを幸せにすることが僕のライブ目的で、そのためのベストを考えていきます。
お風呂と街灯:みんなの幸せって碧海くんのキーワードですね。
碧海:2年前くらいにとある人のライブを見て「ライブってそういうもんだな」って思ったんですよね。僕みたいな人前で自分の無邪気な部分を見せないようなタイプの人が、ステージの上でそれをバッて出して解放している瞬間というのは、僕のことが嫌いじゃなければ多分みんなが幸せになるはずなんです。そのために僕は自分を解放するべきだと思うし、そこに濁りがあってはいけない。「もっとこうすると聴きやすいかな」って考えたり、もっと良い音にするということがみんなが幸せになることに繋がると思ってますね。
碧海祐人
お風呂と街灯:なるほどね。どの目線からも幸せを追うっていうか。
碧海:全ての矢印を無視しないということに近いかもしれない。僕はロックの王道みたいなものを通ってきてないので、スター的に自己を解放してそこでしか見れないことが起きることもかっこいいなと思いつつ、僕自身は憧れない。その場にいる全員の矢印が無視されずに、気持ちよくなってもらえることが僕にとっては重要な気がしてます。
お風呂と街灯:それはすごくわかります。
碧海:PAさん、物販の方とか、撮影の方とか、全員がそういう思いやりを持つ場所でありたいなと思いますね。
お風呂と街灯:僕もロックをあまり通ってこなかったのもあるんですが、スター的な解放が性に合わないというか、自分が見る側だとしてもあまり求めていない気がしていて。そういうものがとても素敵なことは知ってるんですが。いかに自分なりにその音を楽しめるか。その幅が広ければ広いほど面白いと思っています。サビで拳を上げると一体感は生まれるけど、僕個人の好みとして、サビで手を上げる人がいると隣にいる人は「自分も上げた方がいいのかな」って迷いが生まれる。そうではなくそれぞれが自由にメッセージを受け取って音を楽しめればいいと思っていますね。そういう気持ちはどこから生まれるんだろう?って考えると、碧海くんが言ったみんなの幸せっていうことにも繋がるのかなって。
碧海:僕は毎会場、どこにトイレがあるのかとか動線のチェックをするんです。「ここに柱があるっていうことはこれくらい人が入っていたら見えなくなる人がいるな」って考えたり。一人も取りこぼさないっていうことはとんでもなく準備がいるっていうことを感じ始めていますね。やりたくてやってることではあるんですが。
お風呂と街灯:いい思想を受け取った気がします。自分なりに消化できたらいいなって。
碧海:お風呂くんの場合はピアノを演奏するから立ち位置が動かないとより難しそうだよね。
お風呂と街灯:そうですね。僕はステージの真ん中にピアノを置いてそこに立ってライブをやるので、どうしようかなと思いますよね。
碧海:ギターだとカッティングしながら歩けるからね。
お風呂と街灯:今はハンドマイクの曲も1曲もないですし。僕なりにみんなの幸せを消化する必要がありますね。いまのところ、僕のライブのキーワードは自由だと思っていたので、碧海くんの話はとても参考になりました。

お風呂と街灯
碧海:対人の考え方は結構近い気がするよね。バンドの在り方もだけど。
お風呂と街灯:共通ポイントがいくつもありますね。
碧海:オンオフが激しそうじゃない? DMを飛ばしてすぐ会おうとする面もあれば、1日中家で体育座りして何もしない時もある気がする(笑)。
お風呂と街灯:バレてる(笑)。その中で今はみんなと過ごしたい自分なんですっていう表現ができるといいなって思います。着飾るようなライブはしたくないっていうか。人によって違うと思いますが、僕が見てて心地いいライブは「これが自分です」っていう真っ直ぐな目をした人のステージなんですよね。
<ライブ情報>

お風呂と街灯 碧海祐人と遊楽隊 2MAN LIVE
2026年7月10日(金)東京・新代田FEVER
OPEN 18:30 / START 19:00
一般 ADV ¥4000 (+1drink)
U-25 ADV ¥3000 (+1drink)
※1drink ¥600
※U-25チケットの方は要身分証提示 (お忘れの場合は一般チケットとの差額分を頂きます。)
イープラス https://eplus.jp/sf/detail/4529910001-P0030001P021001?P1=0817


