2026年4月3日に発売された『将棋世界2026年5月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)は、通算1600勝達成を記念した羽生善治九段インタビュー 「一喜一憂せず、積み重ねて」を収録しています。本稿では当記事より、一部を抜粋してお送りします。

羽生善治九段インタビュー 「一喜一憂せず、積み重ねて」

  • 写真:下村康史

    写真:下村康史

2025年11月26日、羽生善治九段は前人未到の通算1600勝を記録した。1986年のデビューからおよそ40年を振り返る。

●1600勝というとてつもない勝ち星を積み重ねてきました。デビューから約40年、特別将棋栄誉敢闘賞である1500勝達成からは約3年5ヵ月での達成です。この期間はどう思われますか。

ちょうど40年ほどで、長い期間やってきたなと。5年前、10年前のことは正確に覚えている感覚ではなく、実感はあまり湧かないところもあります。ただ、一つひとつ、積み上げてきた結果としてここまでこられたのはよかったという感慨は持っています。

●印象に残る将棋はありますか。

やはり1600勝目の将棋は印象に残ります(2025年11月26日 朝日杯 千田翔太八段戦)。対振り飛車でミレニアム囲いを採用したのですが、ずいぶん久しぶりだったので懐かしい感じがしていました。

●ここ数年では、2021年度は苦しい時期(14勝24敗)でしたが、最近はまた回復してきています(2025年度は3月13日時点で30勝18敗)。好調の要因を教えてください。

自分なりに常に一生懸命やっているつもりではありますが、長く続ける中で調子は上がったり下がったりするものだと思います。瞬間的なことに一喜一憂せず、地道に堅実に続けていくことが長い目で見たときには大事なのではないかと思っています。

(中略)

●50代の戦い方をどう模索していますか。

将棋はどんどん変わっていくものなので、過去の知識や経験が生きにくい面があります。40代でも50代でも、60代になっても、いまの将棋にどうアジャストして、自分なりのスタイルを築いていくかを模索する必要があります。いまは全体的にスピードが速くなっている感覚があり、その中で置いていかれないように頑張っていく姿勢がいちばん大事だと思っています。

●勝負の世界で長く活躍し続ける秘訣は何だと思いますか。

細かいことを気にしすぎないことは大事だと思います。気にし始めてしまうと果てしなくつらくなります。もちろん、ミスや失敗はきちんと受け止める必要がありますが、反省や検証が終わったら新たな気持ちで次に向かっていく切り替えが必要です。

●勝負の結果に固執しすぎないということですか。

そうです。ただしそれは負けたときだけでなく、勝ったときも同じです。

●勝ったときに固執しないとはどういう意味ですか。

将棋は同じやり方で次も勝てる保証がありません。相手もプロなので対策を練ってきますし、たまたまうまくいっただけというケースもあります。結果は受け止めつつも、自分なりの総括が終われば結果は横に置いて、次に進む姿勢が大事だと思います。

●ご自身の将棋の作りは変化していますか。あるいは変化させようとしていたりしますか。

流行も常識も変わっていっているため、自分の将棋も当然、それに合わせて変わります。自分自身が変わるというより、将棋そのものが変わる流れに応じて自分も変化していっている感覚です。

(中略)

●現在の目標は何でしょうか。ファンからはタイトル100期を期待されていて、まずは挑戦を目指す戦いになるかと思いますが。

まずは総合力を上げていくことが大事だと思っています。棋力、気力、体力、メンタル面など、総合力を上げていくことがいちばんの目標になります。

●総合力というと漠然と感じます。例えば棋力を上げることを目標にしたとき、まずどのように行動しますか。

自分が指した将棋の中で、同じミスを繰り返さないよう修正するといったことでもいいですし、ある局面での考え方の幅を広げるでもいいですし、定跡形の分析を深めることでもいいです。そうした一つひとつの積み重ねだと思います。すぐうまくいく方法は基本的にないので、いろいろやる中で結果的に効果が出ればいいという気持ちでやっています。

『将棋世界2026年5月号』、絶賛発売中!!

ほかにも、
・ファンとともに選んだ羽生九段の名勝負ベスト10を発表し、勝又清和七段と長岡裕也六段が語り合う特別対談
・第84期 順位戦最終局 全クラスレポート
・戦術特集「三間飛車への挑戦状」
といった記事もあり、指す将・観る将はもちろん、全ての将棋ファンの方々に楽しんでいただける一冊になっています!

『将棋世界2026年5月号』
発売日:2026年4月3日
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発行:日本将棋連盟
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