藤井聡太名人に糸谷哲郎九段が挑戦する第84期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)は、名人先勝で迎えた第2局が4月25日(土)・26日(日)に青森県青森市の「ホテル青森」で行われました。対局の結果、挑戦者用意の力戦策を鋭い読みで打ち破った藤井名人が89手で勝利。快勝といえる内容で開幕2連勝を決めています。

一貫した力戦策

前夜祭では「(青森のねぶたのように)構想とひらめきが一体となった対局を目指したい」と語った糸谷九段、後手番で迎えた本局は矢倉と中飛車を組み合わせた独自の力戦策を打ち出しました。先手に飛車先の歩交換を許すだけに大胆ですが、中央に飛び出した先手の角が接近戦に弱いのを見越して、棒銀の要領で中央を一気に制圧する破壊力を秘めています。

前例のない力戦模様に両者長考が続きます。序盤で守勢に回った先手の藤井名人は着実に自陣を整備して戦いに備えますが、2日目に入り準備万端と見るや一転して攻勢に踏み切りました。タタキの歩で後手の飛車を呼んだのが決断の一手で、後には引けない戦いに突入。取り合いが一段落した局面、藤井名人が放った角取りの銀打ちが糸谷九段の意表を突きました。

衝撃の切り返しで勝負あり

長考に沈んだ糸谷九段は手筋の垂れ歩で応戦。両取りの角打ちを用意することで先手の指し手に制約を与える意味合いですが、この狙いにハマるように角を香で取り返したのが藤井名人の読みの深さを示す勝着となりました。直後の角打ちが絶好の切り返しです。これに気づいた糸谷九段は肩を落として着手しますが、すでに評価値は先手に7割近くにまで触れています。

優位に立ってからも藤井名人の攻め手は正確でした。終局時刻は17時54分、最後は糸谷九段が形を作って熱戦に幕。手探りの中盤戦で競り合いに力を発揮した藤井名人の明るい大局観と深い読みが光る完勝譜となりました。糸谷九段の先手番で迎える第3局は5月7日(木)・8日(金)に石川県七尾市の「和倉温泉 日本の宿 のと楽」で行われます。

水留啓(将棋情報局)

  • 勝った藤井名人は勝因となった切り返しについて「角を合わせてすこし指しやすくなった」と振り返った(提供:日本将棋連盟)

    勝った藤井名人は勝因となった切り返しについて「角を合わせてすこし指しやすくなった」と振り返った(提供:日本将棋連盟)