ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)が力を入れている領域に1つに、B2B決済におけるクレジットカード対応が挙げられる。世界的に見ても、日本は法人間決済においてキャッシュレス化が遅れているが、逆に言えば拡大の余地が大きいとVisaでは見ており、取り組みを強化している。
4月16日には、こうしたB2B決済への取り組みに加え、DX化が遅れているという海運業界において、いち早くデジタル化とクレジットカード決済に対応したOcean Network Express(ONE)の取り組みを紹介するメディア向け説明会が開催された。
B2B決済でのクレカ払いは手数料以上のメリット
Visaが掲げる3つの戦略的な柱として、より良い決済体験の提供、新たな付加価値の提供に加えて、「法人決済のデジタル化」を掲げている。同社の法人ソリューションズ ディレクターである細谷淳司氏は、「グローバルでも開拓の余地が大きい」としており、日本市場でもこの分野に注力していく考え。
日本においては、一般消費者の取引では48%がクレジットカード、10%がそれ以外のキャッシュレス手段で、全体の58%がキャッシュレスとなった。ところが企業間取引の決済では、99.3%が銀行振込などの支払いで、クレジットカード決済は0.7%に過ぎない。
海外の企業間取引におけるカード決済の割合で比較すると、政府が旗振り役となって進めている韓国が4.4%、アメリカ、オーストラリア、イギリスが3%台となっており、割合は大きくはないが、日本よりは広く利用されている。
それでも、日本におけるB2B決済でのカード利用は増加傾向にあり、2021年と比較すると、2024年には取扱高は5805億円に達し、実に7割近い伸びを示して、右肩上がりに成長している。
法人カードの利用状況では、2022年度には旅費交通費や仕入れ・広告、接待などの利用が多かったが、2025年度には仕入れ・広告やB2B決済、オフィス用品といった利用が拡大しており、利用範囲が広がっているからだという。
さらなる拡大のために、企業規模別の取り組みだけでなく、業種別という観点からも取り組みを進める。中小企業向けには、銀行やカード会社だけでなく、B2Bソリューションを提供するフィンテック企業の発行カードが伸びている。これはUPSIDERやマネーフォワードといったB2Bソリューションを提供する企業の取り組みだ。
大手・中堅企業向けには、経費・調達管理ソリューションとして、コンカーやSAPといった事業者と連携する。さらに政府・公共分野でも、規制緩和によってクレジットカード決済の利用が拡大することを期待していると細谷氏は言う。
こうした中で、カード決済に対応した業種が拡大している。細谷氏によれば、加盟店にならなくてもクレジットカードに対応できる、BPSP(Business Payment Solution Provider)による請求書カード払いもこの3年、拡大しているそうだ。
Visaが昨年8月に公表した調査結果によれば、カード払いを受け入れたサプライヤーには、5.71%のメリットがあると算出された。手数料が2~3%程度だとしても、売上などのメリット分が上回るという結果になっていた。
従来は、出張経費やB2Bマーケットプレイス、デジタル広告といった生産・周辺業務で使われてきたB2B決済でのカード払いだが、現在は飲食店や建設、農業といった卸との企業間取引や請求プロセスでの利用が拡大。特にこうした業態では中小企業も多く、倒産率も高くなりがち。そのため、多少の手数料を払ってでも支払いリスクを最小化できるカード決済が選ばれ始めている。
「将来的にはサプライチェーン全体の取引に対してカード払いを浸透させていきたい」と細谷氏。こうした分野では、トラベル、医療、物流といったアナログ作業が多かったという業界へと参入していきたい考えだ。
海運業界のDX化でクレカ払い
そうした分野の1つが海運業界だ。DX化が遅れ、請求業務にアナログ手続きが多いという海運業界において、いち早く取引用のWebサービスを構築し、クレジットカード決済に対応したのがOcean Network Express(ONE)だ。
ONEは、川崎汽船、商船三井、日本郵船のコンテナ事業をスピンオフして2017年に設立した海運会社で、コンテナ船の事業規模としては世界第6位。
同社Deputy General Manager / Strategic Yield Managementの神嵜芳彰氏によれば、海運業界では船に荷物を積むためには書類を提出して請求・支払いを行ってから、実際の貨物搬入、船積が行われる。基本的には現金(銀行振込)による前払いで、紙を使ったアナログ作業が多く、これは世界的にも一般的な商慣習なのだという。
こうしたプロセスに対して同社は、予約から船積準備まで、書類発行のプロセスがWeb上で完結するプラットフォームを構築して提供した。これまで、平均で50分程度かかっていた作業が、平均6分程度まで短縮でき、顧客の満足度も向上したそうだ。
ただ、それでもまだ、請求・支払いプロセスがアナログなままで、請求書を発行して支払いの通知があればそれを確認するという作業が発生していた。デジタル化する前は、早くても数時間、週末を挟んだ場合は数日かかることもあったという。
手作業ゆえに、送金間違い、過払い・未払い、インボイスの紐付けミスなど「長年、頭を悩ませるプロセスだった」と神嵜氏は指摘する。
そこで新たに導入されたのが「ONE Finance」で、これによって請求・支払い状況が可視化され、サイトからインボイスを選択して必要事項を入力した上で、その場でクレジットカードによる支払いができるようになった。そのまま領収書の発行も行われ、数分で決済できるようになっているという。
特に中堅・小規模の荷主にとっては、運転資金管理が容易になる点、金利高や為替変動などのセーフティネットにもなりうる。
ONE側にとっても、個別に与信枠の設定が不要で、決済と同時に確実・迅速に資金回収ができるというメリットがある。未収金の回収も楽になることに加え、「一番期待しているのは、こうした付加価値で新しい中小企業がONEを選択してくれることによって、売上が増加すること」だと神嵜氏は話す。
ONE Financeは、すでに10カ国では提供しているが、クレジットカードに対応したのは日本が初めてで、まだ開始して1週間程度だというが、すでに決済も行われて順調な滑り出しのようだ。
海運業界において、クレジットカード決済への対応は「ゼロではないが珍しい」(神嵜氏)とのことだが、業界ではDX化が進展し始めており、同社としてはいち早くクレジットカードにも対応してDX化で他社に先行する。
銀行振込は、クレジットカード決済と比較して決済手数料のようなコストはかからないが、「入金の突合作業や債務関連コストなど、表面上以外のコストが4.7%かかっている」と細谷氏は指摘。こうしたコスト負担と比べてカード決済の方にメリットがあるという考えもあり得ると話し、今後も法人分野でのクレジットカード決済の拡大に向けて注力していく考えを示している。
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Visaの法人ソリューションズ ディレクター細谷淳司氏(左)とOcean Network Express(ONE)のDeputy General Manager / Strategic Yield Management神嵜芳彰氏











