三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)とSBIホールディングス(SBIグループ)は、SMBCグループの総合金融サービス「Olive」向けの新たな資産運用のサービスを開始すると発表しました。

Olive最上位のサービスを提供、ターゲットは200兆円の資産

両社で出資した新会社を設立し、最上位カードの発行を含む新サービス「Olive Infinite」を提供。オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッドの資産運用に関するコンサルタント機能などを用意し、富裕層だけでなく幅広いOliveユーザーをターゲットにします。サービス開始は2026年春からの予定です。

  • SMBCグループとSBIグループが提携を強化。握手を交わすSMBCグループ中島達社長(中央左)とSBIグループ北尾吉孝会長兼社長(中央右)。左からSMBC日興証券吉岡秀二社長CEO、三井住友カード大西幸彦社長、一番右がSBI証券髙村正人社長

両グループの協業によって、Oliveの資産運用サービスがさらに強化されます。まず提供されるのがOliveのプレミアムクラスとなる「Olive Infinite」。富裕層向けのサービスとして、Visaの最高ランクのクレジットカード「Visa Infinite」を採用したカード発行やコンサルティングサービスを提供します。

  • プレミアムクラスとなるOlive Infiniteが提供開始へ

  • 三井住友銀行/カードユーザーだけでなく、SBI証券ユーザーにもサービスを提供します

クレジットカードとしては三井住友カード Infiniteを発行。Visa Infiniteを採用して「一般申し込みが可能なカード」としては日本で初めてとなります(過去には、スルガ銀行がインビテーション限定で提供していました)。

  • メタルカードの最上位カードを発行

メタルカード、コンシェルジュデスク、プライオリティパス、ラウンジ利用などのスペックに加え、「特別な体験」としてアートや食の会員限定イベント、サッカーやスポーツの世界大会といった「異次元の多様な体験価値」を提供するとしています。

利用状況に応じて設定される年間継続特典は最大11万円相当。クレジットカード積立でのポイント還元は最大6.0%まで拡大。従来のプラチナプリファードの最大4万円、最大3.0%と比べても大幅に特典を拡大しました。

  • 継続特典、カード積立のポイント還元も最上位

もちろん、従来の三井住友カードのコンビニエンスストアなどでの最大20%還元といった特典も提供されます。

Olive Infiniteサービスに先行し、2025年9月から「三井住友カード Infinite」としてカード単体での発行を開始。9月からは、Olive Infinite予約キャンペーンとして特別金利、特別な入会特典、特別体験への招待といった先行特典も用意します。年会費は公表されていませんが、一定条件を満たすと無料になるプランも用意される予定としています。

  • Olive Infiniteは2026年春から。それに先んじてまずは三井住友カード Infiniteを単独で発行します

カード以外のOlive Infiniteサービスとしては、「フレキシブルコンサルティング」を提供。これは、AIチャットを使った24時間365日の資産運用に関する相談に加え、SMBC日興証券と三井住友銀行のアドバイザーによる有人のコンサルティングをチャット/電話/ビデオ通話で提供。さらにリアル拠点としてOlive LOUNGEなどでの対面相談にも対応します。

  • カードだけでなくコンサルティングサービスも提供。このコンサルは両社が出資する新会社が担当します

このリアルとデジタル、有人と無人を組み合わせて自由に組み合わせて相談できる、「ハイブリッド」で「フレキシブル」という点が特徴だと説明されています。有人コンサルタントも、本人のスキルや得意分野などから選択できて、専任として毎回お願いしたり、相談内容に応じて変更したりといった選択も可能。

  • オンラインと対面、有人とAIチャットを組み合わせて相談できます

  • 相談チャネルはAIチャット、有人コンサル、Olive拠点から選択可能です

資産運用、相続、保険、税務、不動産といったお金にまつわる相談内容に幅広くワンストップで対応できるように、各分野の専門家を集めたチームを結成して包括的にサポートしてくれるそうです。

  • コンサルタントはスキルなどから自由に選択し、専任として対応してもらったり、状況に応じて変更したりが可能

  • 様々なお金に関する相談にチームで応じてくれます

金融資産が多く、カードの利用も多い「デジタル富裕層」がメインターゲットで、新会社にはSMBC日興証券、三井住友銀行に加え、SBIグループの金融商品やサービスなどのリソースも活用します。

Olive Infiniteは富裕層向けとされていますが、Oliveのランクにあわせたサービスも提供します。コンサルティングはプラチナプリファード以上での提供ですが、通常カードやゴールドカードのユーザーに対してもチャットでの相談や資産の見える化、SBI証券取引連携は提供。取引状況に応じて上位ランクへ年会費無料で招待するサービスも用意します。

  • 通常のクレジットカードやゴールドカードに対しても一部のサービスは提供。アップグレードにも対応します

資産の見える化は、提携したマネーフォワードの機能によって、他社や他行の利用状況を含めて見える化が可能。SBI証券の取引のほとんどをOliveアプリから利用できるようにするなど、ランクを問わず資産運用サービスを強化。そのため、「デジタル富裕層」だけでなく、幅広い層の利用者を取り込みたい考えです。

  • 資産の見える化、SBI証券との連携なども用意

こうした取り組みによって、5年後には新会社の運用資産残高10兆円、預金残高10兆円を目指します。これは、Olive Infiniteがターゲットとするユーザー数を700万人とみて、その資産合計は200兆円に達すると試算していると中島社長は説明。その1/10にあたる20兆円の資産を取り込みたい、というのがざっくりとした目標なのだと言います。

中島社長は、新会社を3年で黒字化、5年で100億円規模の収益を確保したいという目標を立てています。

  • 5年後に運用資産残高、預金残高それぞれ10兆円を目指します

2020年からの両社の関係をさらに深める

もともとSMBCグループとSBIグループは2020年4月に提携し、関係を構築してきました。特に2023年3月のOliveスタート以降、SBI証券への送客で関係を深めており、デジタルで完結するサービスとして構築されていました。

  • Oliveは順調の成長し、2024年に予想より早く黒字化したと中島社長。そうした成長を牽引したドライバーの1つがSBI証券との提携

その当初から、デジタルで完結するのではなく、オフラインの有人コンサルティングが必要になってくるということを想定し、故・太田純社長(当時)がSBIグループと話し合いを進めていたと中島社長は話します。そうした話し合いが膨らんできて、単なる有人のコンサルサービスを提供するだけではないサービス構築に至ったといいます。

そのOliveは、今年4月の段階で570万アカウントを突破。SBI証券への送客も功を奏して、成長が牽引されたと中島社長は言います。Oliveや三井住友カードを使ったSBI証券での投信積立は2021年からサービスがスタート。積立額は月間850億円を超え、年間では1兆円を超える水準にまで達したそうです。

これは、三井住友銀行が約20年間かけて月間投信販売額を900億円程度まで拡大したのとほぼ同レベル。これをOliveでは4年間で達成したことになり、中島社長はその成長をアピールします。

  • 三井住友銀行20年で積み上げた月間900億円程度の投資販売額に追いつく規模にまで拡大

「SMBCグループとSBIグループは、今後もともに進むべき重要なパートナー」(中島社長)であり、両社の関係を強化してOliveの資産運用サービスのアップグレードを図るのが、今回の提携です。

SMBCグループは1998年の金融ビッグバンから資産運用サービスに参入。当時は平日昼間の銀行窓口または自宅に訪問して営業するという手法でしたが、昨今はスマートフォンを使いこなして自ら情報収集し、ネットで投資を完結する「デジタル富裕層」が拡大したと中島社長。

  • これまで平日日中にオフラインで主に扱われていた資産運用を、「デジタル富裕層」向けにデジタルで提供しつつ、オフラインのサポートも提供します

特に40~60代のアクティブなデジタル富裕層が今後も拡大していくと見て、「デジタル時代にふさわしい新たな資産運用サービスの構築が不可欠」(同)と判断しました。

  • こうした取り組みを踏まえつつ、富裕層向けにさらなるサービス展開を検討していきます

  • SBIグループの様々なサービスや機能に加え、SBIグループが目指すWeb3活用の次世代決済インフラ、DeFi連携、AI活用など、「次世代金融サービス」に関しても推進していきます

そこで両社は新会社を設立し、それぞれのリソースやアセットを持ち寄ってサービスを提供。出資比率は三井住友フィナンシャルグループ10%、SMBC日興証券30%、三井住友銀行20%で、SMBCグループが60%、SBIグループはSBIホールディングス10%とSBI証券30%の40%。当初は100名体制でスタートする予定となっています。

  • それぞれのグループで出資して、両社のリソースを活用します