特筆すべきはリカのキャラクターで「自由奔放かつ大胆不敵な都会の女性」として描かれていた。そんな91年版よりまっすぐで強く激しいリカを石橋が熱っぽく演じている。
一方のさとみは91年版とほぼ同様のキャラクターだが、当時嫌われた「男に媚びる女」というニュアンスはそれほど感じさせない仕上がり。これも時を経た女性と社会の変化であり、さらに配信ドラマならではの自由度もあってか、20年版はどこかリアルな痛々しさが漂う作品となっている。
そんなはっきりとした違いがある一方で変わらないのは、視聴者に「キュンキュン」と「モヤモヤ」の両方を感じさせるなど、感情移入をうながしていること。完治のまじめさと葛藤、リカの強さともろさ、さとみの弱さとずるさが濃密に描かれ、「男ってけっきょく、さとみみたいな子が好きだよね」「リカは魅力的だけど、ちょっと引いちゃうところもある」などのコメントを引き出した。
91年版を見た人にとって20年版はいくつかの驚きがあるだろう。なかでもその最たるものは終盤の展開。原作漫画から91年版ではカットされた衝撃的な事態がリカと完治に訪れ、シビアな決断を迫られる。制作サイドは、最終話を見終えたとき、それぞれの決断や結末に賛否の声があがる脚本・演出を用意していた。この衝撃的な展開はゴールデン帯の月9ドラマでは避けたいようなものであり、配信ドラマの自由さを感じさせられる。
今年、再評価が期待されそうな背景
20年版が配信された6年前、見た人々の声はおおむね肯定的で「知る人ぞ知る名作」という声もあがっていた。
原作漫画や91年版の良さをベースにしつつ、次世代スター候補を集めて、どちらとも異なる令和の東京らしい世界観を生み出し、差別化に成功。スマートフォンやSNSの登場、洗練された映像美、小田和正からVaundyに変わった主題歌なども、新鮮さや質の高さを感じさせた。
その20年版は、最終話が配信された直後の同年6月に男性2番手の清原が脳出血となるという悲劇に見舞われた。さらに同年10月には主演・伊藤が自動車運転中に接触事故を起こし、相手が負傷。事故対応をせず立ち去ったことから逮捕されるという不祥事を起こしてしまった。
これらによって作品として評価される機会が失われていたが、今年後半に風向きが変わるかもしれない。ヒロインの石橋が今秋の朝ドラ『ブラッサム』(NHK)主演に起用されるだけに、彼女の演技が称賛を集めた20年版が再評価される可能性もありそうだ。
ともあれ全国各地の若者たちが令和の今でも「東京って楽しそう」「こんな恋愛がしてみたい」と憧れを抱ける作品であることは確かだろう。冒頭にあげた『102回目のプロポーズ』とともに平成ドラマの令和リメイク成功例となれば、さらに他作品のリメイクにつながっていくのではないか。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。