国民的ドラマ『101回目のプロポーズ』の続編『102回目のプロポーズ』(FOD:3月19日20:00配信スタート/フジテレビ:4月1日から毎週水曜23:00~)の完成発表会が19日、東京・台場のフジテレビ本社で行われ、唐田えりか、せいや(霜降り明星)、伊藤健太郎、企画の鈴木おさむ氏が登壇した。

若手キャストが口をそろえて語ったのは、武田の“言葉”だ。芝居の合間に飛ぶアドバイス、思わず聞き入ってしまう“無駄話”、そして「今の芝居、良かったぞ」と背中を押す一言。効率が求められる今の時代に、なぜ武田はあえて語り続けたのか――。

  • 武田鉄矢

    武田鉄矢

ニュースばかりの地上波テレビの中で…

最初の挨拶で、「レジェンドは死なず、伝説は蘇りました」と切り出した武田。今回のオファーを受けて、「最近、地上波は情報番組に押されて、ニュースばかりの時代になってしまいましたけど、かつてドラマというのはテレビ局のメイン、ブロードウェイを走る作品だったんです。その中で、『101回目―』の続きをやりたいと言われた時に、“レジェンドは死なず”と言いますか、物語は続くんだと思いました」と振り返る。

唐田、せいや、伊藤はいずれも、35年前の前作放送時にはまだ生まれていない世代。だが武田は「そんなにギャップは感じませんでしたね。やっぱりみんな、ドラマを作ろうという意欲がある」と受け止めた上で、「みんな“あそこのシーンはどうだったんですか?”とか、昔話を聞きたがる。私も高倉健さん、渥美清さん、『七人の侍』の稲葉(義男)さん、植木等さんとか、大先輩に会った時は昔話をねだりましたので、聞かれる前にしゃべるようにしてました。うるさかったみたいですけど(笑)」と、若い世代に自分が持つノウハウを伝授していったという。

唐田は武田との共演シーンについて「どこかちょっと先生というか、師匠みたいな感覚もあって」と振り返る。最初は緊張していたものの、武田が合間にさまざまな話をしてくれたことで、少しずつ距離が縮まっていったという。

撮影が進む中では、武田から「お前、今の芝居良かったからモニター見てこい」と声をかけられた場面もあったそうで、唐田は「憧れの人にそう言ってもらっただけで、泣きそうになりました」と明かした。

これに対し武田は、「いいところがあったら急いで褒めてやんないと」と持論を展開。「悪いところを指摘するよりも、いいところを褒めてあげるのが今、一番大事なことだと思う」と、教え方もアップデートしているようだ。

一方で、司会の西山喜久恵アナが、劇中の唐田の雰囲気が浅野温子に通じるものがあると語ると、武田は「楽器を弾く女性の特有の雰囲気がありますよね。“楽器弾く女”っていうね」と昭和の表現で同調。周囲から慌てて「“女性”でお願いします(笑)」と注意を受け、せいやに「よう『サン!シャイン』やってましたね(笑)」と驚かれると、「危なかったんだよ~。谷原(章介)さんに何度も止められて(笑)」と苦笑いした。

しかしその後、前作に続いて出演する浅田美代子と田中律子が紹介されると、「あの頃はかわいらしい娘さんだったのが、今は立派なおばさんになられて(笑)」と失礼発言が飛び出し、せいやから「“きれいなお姉さま”で(笑)」と、またも注意を受けていた。

  • 唐田えりかのチェロ演奏シーン

    唐田えりかのチェロ演奏シーン

俳優は「無駄話」がないと活力が得られない

また武田は、台本通りに芝居を運ぼうとすると、セリフの感情を先に表情で出しすぎてしまうことがあるとし、「それを突き崩さないと、フレッシュなお芝居にならない。完璧ないいお芝居が、いいお芝居じゃない。ちょっとこけそうになりながらも立ち直る、フィギュアスケートのペアみたいなところがあるんですよ」と、独特の表現で芝居論を披露。

そんな武田の存在を、せいやは「座長ですよ!」と表現。「武田鉄矢さんのこの現場に毎日行けてるのが宝物みたいな日々」と振り返り、「リハでも“こうしようぜ、ああしようぜ”ってすごいコミュニケーションを取っていただいて、アドリブもすごいやらせていただいたんです」という。

特に印象に残ったのは、シリアスなシーンの撮影時のこと。せいやは「僕的には“これ泣かれへん。そんな技術ない”と思っていたんですけど、武田さんの演技を見ていたら自然と涙がこぼれてきたんです」といい、そこから楽屋に帰る時に「“お前の顔良かったな”“受けが良かったよ”って言ってもらって。セリフじゃなくて、武田さんの演技を見てる顔が良かったって言われて、めっちゃうれしかった」と笑顔を見せた。

伊藤も、武田との時間について「お芝居の話も深めてくださって、全然違う話も本当に面白かった」と回想。その上で、「僕らはすごく楽しく聞いてたんですけど、聞き入りすぎて、周りのスタッフさんたちがちょっと……みたいな」と明かすと、せいやも「漢字の話が長引いて(笑)」と続け、会場を笑わせた。

撮影現場で、金八先生ばりに“授業”を行っていた武田。その理由を、「俳優って、役を演じるには無駄話がないと活力を得ることができないんですよ。だから無駄話の贅沢さを若い人にいっぱい味わってもらおうと思って」と明かした。

  • (左から)武田鉄矢、せいや

    (左から)武田鉄矢、せいや

浅野温子が「ちょっと怖い時もありました」

この会でも、武田は貴重な“昔話”を披露。浅野温子とは、「距離を保ちながら恋愛感情をどう表現するかというのを、あまり語り合うこともなくやっていた思い出があります。陽炎みたいな方でしたからね。触れると壊れてしまいそうな雰囲気があって、ちょっと怖い時もありました」と本音を明かす。

そんな中で、一度だけ相談されたことが。「ドラマの中で、私が一生懸命彼女を追いかけるんですが、彼女は前の恋人を忘れられない女性なんですね。そうしたら街で視聴者の方に“達郎(武田)のこと考えてやれよ!”と言われたらしくて。それがすごくショックだったみたいで、報告に来られました。それだけ達郎に感情移入してくれていたんでしょうね」と振り返る。

兄弟役の江口洋介とは、いつも“アドリブ合戦”に。「浅野さんをいかに美しく撮るかにスタッフが力を入れていて、男のほうはざっと撮ればいい、みたいなところもあったんです(笑)。でも、中途半端なざっとじゃつまらないから、“カメラマンは動くな。俺たちが近づく”なんてこともありました。照明が入れない時は、自分でレフ板を持って演じたこともありましたね。そんなふうにシーンをゲームみたいに楽しんでいました」と懐かしんだ。

こうして随所で武田の“授業”のような空気になった同会。最後に武田は「“こんな形の純愛はありえない”、“こいつは相当やばいやつだ”、“現実にはいない”と言われますが、だからこそ、物語にするんです。昔、『幸福の黄色いハンカチ』を撮っていた時のことです。桃井かおりさんがラストシーンについて、“刑務所に入っていた男を6年も待つ女なんて、本当にいるかしら”と言ったことがあった。リアルな意見ですよね。その時、山田洋次監督がたった一言、“世の中にこんなことはありえない。だから物語にするんですよ”と言ったんです。それが、私どもが物語に懸ける情熱でございます」と締めくくり、会場は拍手に包まれた。

  • (左から)武田鉄矢、せいや、唐田えりか、伊藤健太郎、鈴木おさむ氏

    (左から)武田鉄矢、せいや、唐田えりか、伊藤健太郎、鈴木おさむ氏