「蒸着」のインパクト
宇宙刑事ギャバン(一条寺烈)がコンバットスーツを蒸着するタイムは、わずか0.05秒にすぎない。通常ならばあまりにも速すぎて人間の目では確認できない「蒸着」の工程を、「では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう」というナレーション(政宗一成)と共にプレイバックしてじっくり見せる演出には、強いインパクトがあった。
これについて吉川氏は「私が初めてプロデュースしたテレビ作品『日本剣客伝』で、天下の剣豪・宮本武蔵が一瞬の早業で相手を斬るんですが、あまりにも技が速すぎてよくわからない。だからスローモーションでもう一度プレイバックして、技が決まる瞬間をじっくり見せる演出を行なったんです。イメージとしては、大相撲中継のとき、決まり手の瞬間をスローモーションで見せる、あれですよ(笑)。『日本剣客伝』のことを村上さんが知っていて、ああいう演出にしてほしいという要望があり、ギャバンにとり入れてみたのです」と、蒸着プロセス演出の成り立ちを明かした。
人間味のあるヒーロー像
『宇宙刑事ギャバン』のメインライターとして、基本設定が語られる第1話をはじめとする主要なエピソードを手がけたのは、『秘密戦隊ゴレンジャー』『がんばれ!!ロボコン』『電子戦隊デンジマン』『がんばれ!レッドビッキーズ』など、数々のヒット作を生み出した脚本家の上原正三氏。『ギャバン』当時の上原氏は『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)と『それゆけ!レッドビッキーズ』(1981年)の2作でメインライターを務め、乗りに乗っていた時期。『サンバルカン』を終えた上原氏はマンネリを嫌って「スーパー戦隊」の降板を吉川氏に申し出たが、同じ時期に『ギャバン』の企画が固まりはじめ、そのまま新シリーズのメインを務めることになった。
上原氏は『宇宙刑事ギャバン』について「宇宙からきたスーパーヒーローを生み出すにあたって、子どもたちと同じ目線に立ったヒーロー像を作りたかったんです。子どもたちが声をかけたら、気さくに返事をしてくれる、みたいなキャラクターがいいんです」と、親しみやすいヒーローキャラクターを創造する狙いを語っていた。その思いは、上原氏が主要な脚本を書いた『バトルフィーバーJ』(1979年)『電子戦隊デンジマン』(1980年)でも活躍していたアクション俳優・大葉健二が主役の一条寺烈に選ばれたことで、より強くなっていったという。
「大葉健二くんは、牧場(アバロン乗馬クラブ)で働く青年というイメージにピッタリでした。彼は絶対に嘘なんてつかない、みたいな顔をしてるんだよね。実に味わいのある表情をする。戦隊の5人ヒーローに負けない、一人で5人分の働きを見せるヒーローとしてはよっぽどの魅力を持たせないといけないという思いがありましたが、その点、大葉くんには人間味があって非常に書きやすかったですね(上原氏)」

