連続テレビ小説『あんぱん』のスピンオフとなるオーディオドラマ『さいごのうた』が、NHK-FMにて1月3日(22:00~22:50)に放送された。本作の主人公は、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が演じる作曲家・いせたくや。『あんぱん』本編では描かれなかった、たくやの晩年の物語はSNS上で「最高に泣けた」「感動した」などと反響を呼んだ。制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサーにインタビューし、本作に込めた思いや現場で感じた大森の凄みなどを聞いた。
『あんぱん』は漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、朝田のぶ(今田美桜)と柳井嵩(北村匠海)が『アンパンマン』にたどり着くまでを描いた物語。『さいごのうた』では、たくやの晩年を描いた。嵩とのアンパンマンミュージカルの作曲中、突然倒れてしまったたくやは、「もう仕事はできない」と告げられ絶望していたある日、看病する妻・薫(三浦透子)から「嵩さんから」と一通の手紙を渡される。そこには、ミュージカルの新しい歌詞が書かれてあり、たくやは嵩とのある約束を胸に、最後の力を振り絞ってメロディーを紡ぐ。
3日に放送されると、SNS上では「さいごのうた最高に泣けた」「涙が溢れた」「大森元貴の演技力とたくちゃんの生き様に滝涙です」「大森さんとたくちゃんが重なるようで泣けた」「大森さん、表現力が素晴らしくて情景が頭にしっかりと浮かんできました」「崇とたくちゃんの絆に涙が止まらない」「絆、情熱、愛…感動しました、ありがとう」などと反響が続々。「さいごのうた」「たくちゃん」など関連ワードがXでトレンド入りを果たした。
倉崎氏は、『さいごのうた』制作の経緯について「本編で描けなかったのですが、いずみたくさんが手掛けた最後の曲は描きたいなと思っていて。晩年ご病気になられて、やなせたかしさんから『すすめ!アンパンマン号』の作曲を依頼されるも病床で自分は書くことすらできなくなってしまって、奥さんに代わりに書いてもらったというのは史実なんです。すごいエピソードだなと思って、執念というか、やなせさんといずみたくさんの絆の強さを物語るエピソードだと思ったので、オーディオドラマでいせたくやの晩年の物語を描いたらいいのではないかということになりました」と説明した。
弟子の“ハチ”こと八条大吉(小林虎之介)はたくやの病状を見て、アンパンマンミュージカルの作曲を断ろうとするも、たくやは「だめだ」「僕がやる。最後まで、やりたいんだ」と諦めない。そして、嵩から新しい歌詞が届くと、「こんな歌詞じゃさ、ゆっくり寝てられないよ。勇気が湧いてくるよ」「メロディーが降ってきた」と作曲家魂が奮い立たされる。
だが、ペンすら握れない状態まで病状は悪化しており、涙があふれるたくや。すると、薫が「私が代わりにメロディーを書き留めます」と言い、たくやの口からあふれるメロディーを書き写して「すすめ!アンパンマン号」の作曲が完成。2人で口ずさむシーンも流れた。
倉崎氏は、病床でのシーンに特に感動したという。
「嵩との約束であり、自分が作曲するんだと強い意志。自分の身体がいうことをきかなくなっても諦められず、自分がやるんだという、あそこのシーンは聴いていて涙が出ました」
そして、「『こんな歌詞じゃさ、勇気が湧いてくるよ』というセリフに、たくやと嵩の絆が集約されている気がしました」と言い、ペンが持てず妻の薫が代わりにメロディーを書き留めるシーンは「ドキュメンタリーのようでした」と振り返る。
「セリフなんですけど、我々もドキュメンタリーを録っているような感覚で、目の前にその光景があるような感じに。大森さんがいつか晩年になって、自分の体が動かなくなって作曲ができなかったときをも想像し、そういうときが来たら大森さんはどうするんだろうと妄想してしまいました」
そして、大森が演じるからこそ「説得力がすごくある」と倉崎氏は語る。
「病床のシーンは本当に胸打たれるもので、このシーンを大森さんが演じてくれただけでも、オーディオドラマをやった甲斐があったと思っています。ご本人ともすごくリンクするなと思いましたし、役者ではあそこまでの到達点にはなかなかいかないと思います。音楽家・大森元貴さんだからこそのシーンが成立したというか、想像を超えるものになったのではないかなと思います」
