2025年も残りわずかとなり、すべての連ドラが終了。ここ数年間、民放各局はIP(知的財産)ビジネスを進めるためにドラマ枠を増やしたことで、季節ごとに40作超が制作・放送されるようになった。

たとえば「各クールで4作見る」という人ですら10%程度に過ぎず、残りの36作を見ていないことになり、年間トータルでは約160作中16作のみ。単純計算で144作を見ていないことになり、「せっかくの良作が埋もれてしまう」というケースが多い。

ただ、見逃してしまったドラマの大半は、FOD、U-NEXT、Hulu、TELASA、NHKオンデマンド、Netflix、Amazon Prime Videoなどの動画配信サービスで視聴できる。ここでは業界唯一のドラマ解説者・木村隆志が2025年に放送されたドラマの中で「年末年始の“一気見”におすすめ」という観点からランキング形式で10作をあげていく。

10位:『夫よ、死んでくれないか』(テレビ東京系)

  • 磯山さやか 撮影:加藤千雅

    磯山さやか 撮影:加藤千雅

放送前から過激なタイトルが物議を醸すなど問題作と思われていたが、はじまってみたらバランスのいい脚本・演出に驚かされた。

主人公は30代後半の親友3人組。幸せになるために結婚したにもかかわらず、それぞれ不倫夫、束縛夫、モラハラ夫によって孤独、虚しさ、不安に襲われ、日に日にイラ立ちが募っていった。しかし、妻たちは不倫夫に失踪され、束縛夫は不倫で裏切り、モラハラ夫を殺そうとすることで運命の歯車が大きく回りはじめていく。

さらに、妻たちに秘められた過去が発覚するなど、サスペンス、ミステリー、ドロドロの愛憎劇を混在させるハイブリッドな作風だった。各話のストーリーも作り込まれていたが、すべては“大どんでん返し”の最終話に向けた“振り”と言っていいかもしれない。“今年の漢字”が鍵を握るラストの驚きは2025年屈指だった。

キャストは安達祐実、相武紗季、磯山さやかのトリプル主演。いずれも危うく怪しげなヒロインを体当たりで演じ、彼らのクズ夫を演じた竹財輝之助、高橋光臣、塚本高史の3人もハマリ役だった。「世の夫たちよ、震えて眠れ―」というキャッチコピーでわかるように、世代を問わず女性に一気見をおすすめしたい。

9位:『ちはやふる-めぐり-』(日本テレビ系)

  • 當真あみ 撮影:田中景子

    當真あみ 撮影:田中景子

2016年、2018年の映画3部作終了から7年。まさか続編があるとは思わなかっただけに、漫画原作者の許諾・協力を得た「10年後のオリジナルストーリー」という企画そのものが優れていた。

しかも映画で監督・脚本を務めた小泉徳宏をショーランナーに据え、10年前のキャストも継続起用。世界観を守った上で新たな物語を描くことで、映画のファンを喜ばせつつ新規のファンを発掘しようという姿勢が見られた。

主演の當真あみを筆頭に原菜乃華、齋藤潤、藤原大祐、山時聡真、嵐莉菜、大西利空、高村佳偉人ら高校生に近い年齢の若手俳優をそろえ、しかもアイドルを起用しない実力前提のキャスティング。彼らの熱演が夏ドラマの王道である、熱さとさわやかさ、汗と涙の入り交じった無垢な世界観につながっていた。

広瀬すず、上白石萌音、松岡茉優、矢本悠馬、野村周平ら映画キャストの集結も圧巻であり、視聴率や配信再生は低調に終わったが、もっと評価されてしかるべき作品だろう。

8位:『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)

  • 広瀬すず 撮影:宮田浩史

    広瀬すず 撮影:宮田浩史

「これぞTBSの『金曜ドラマ』」と言いたくなる骨太なサスペンス&ミステリー。しかもヒューマンやクライムの要素も濃く、緩急こそつけていたが、ほとんど笑いを交えずにハードボイルドで描き切った。

物語はクリスマスイブの夜、主人公・山下小麦(広瀬すず)の父・山下春生(リリー・フランキー)が一通の手紙を遺して殺されるところからスタート。容疑者は22年前の事件で死刑囚となった犯人の息子だった。はたして2つの事件に関連はあるのか。小麦は弁護士の松風義輝(松山ケンイチ)とともに事件の真相を追っていく……。

1クールかけて事件の謎を追う連ドラらしい作品だけに、それを一気見できる贅沢さは格別だろう。親子の物語としても秀逸であり、広瀬すずの熱演もあって涙活としてもおすすめしておきたい。

当作は「2025年で最もドラマの内容が気になるタイトル」と言っていいほど絶妙なネーミングだったが、その意味は「たとえ誰も見ていなかったとしても、犯した罪から逃げることはできない」。このタイトルが気になった人はぜひ見てほしい。

7位:『すべての恋が終わるとしても』(ABC・テレビ朝日系)

  • 神尾楓珠 撮影:蔦野裕

    神尾楓珠 撮影:蔦野裕

朝日放送制作の日曜22時15分枠は2023年春のスタート時から大物脚本家らのオリジナルを10作手がけてきたが、当作が初の「原作あり」だった。ところがその原作は140字1話のX小説。オリジナルと同等以上の難しい脚色が求められる中、どこにでもありそうな普通の恋愛をベースにしつつ“恋の終わり”をフィーチャーする切り口はむしろ新しかった。

遠距離、生活環境の変化、すれ違い、別れと再会……4組の恋愛はいずれも等身大の切なさが描かれ、共感度の高い作品となっていた。

近年の恋愛ドラマは浮気や不倫、妨害や略奪などの過激な設定が主流の中、“普通”にこだわろうとした制作姿勢は希少価値が高く、1980年代後半から1990年代前半の恋愛ドラマが好きだった人はハマるのではないか。

中盤から“普通”の物語が一変し、賛否両論ある展開になっていくが、感情の動きを重視した脚本・演出は変わらないため、最終話のラストシーンまでその切ない恋模様を楽しめるだろう。

6位:『ひらやすみ』(NHK総合)

  • 岡山天音 撮影:泉山美代子

    岡山天音 撮影:泉山美代子

2025年は視聴者に寄り添うような優しい世界観の作品が目立ったが、“癒し”や“イージーウォッチング”という点では当作が一番かもしれない。

1話15分の平日帯ドラマであり、極めていい意味で特別なことはほとんど起こらない。阿佐ヶ谷の平屋に住む29歳のフリーター・生田ヒロト(岡山天音)と、山形から上京した従妹の美大生・小林なつみ(森七菜)の何気ない日常がゆったりと描かれた。

ポイントは“効率”“成果”が優先される令和の今、ヒロトのような生き方をファンタジーではなく普通として描いたこと。視聴者はヒロトを見る家具店勤務の親友・ヒデキ(吉村界人)、不動産会社勤務の顔見知り・立花よもぎ(吉岡里帆)の目線を通して気づきを得られる作品になった。

阿佐ヶ谷の商店街、若杉通り、釣り堀、七夕まつりなどもそのまま映像化。毎日見る光景のような生活感であふれ、「ヒロトやなつみが本当に住んでいるのではないか」という気持ちにさせられる。

同作が放送された『夜ドラ』は月~木曜22時45分という民放22時台ドラマのクライマックスとぶつかる中途半端な時間帯のため、なかなか視聴習慣が定着させられずにいる。ただ、作品によっては「見終えて23時から気持ちよく寝られる」という捉え方も可能であり、『ひらやすみ』はまさにそれ。つまり『夜ドラ』のあるべき姿に見えるだけに続編必至だろう。1話15分×20話だけに一気見しやすく、来たる続編制作に向けて未見の人はチェックしておきたい。

5位:『続・続・最後から二番目の恋』(フジ系)

  • 左から小泉今日子、中井貴一

    左から小泉今日子、中井貴一

2012年、2014年に次ぐ続々編を11年ぶりに同じキャストで実現させられただけでもドラマ史に残る快挙と言っていいだろう。しかも同作は小泉今日子と中井貴一のダブル主演を筆頭に出演俳優と役の年齢をシンクロ。そのため11年という年月の経過がリアルに表現され、視聴者は老いや生き方のシビアな現実を感じさせられた。

ただ当作のポイントは、そのシビアな現実を単に突きつけるのではなく、まるでユートピアのような鎌倉の暮らしでバランスを取ることで、絶妙な見やすさが保たれていること。岡田惠和の脚本らしい優しさあふれる人間模様とユーモアな会話劇で安心して泣き笑いできるのが強みと言っていいだろう。

続々編ではコロナ禍やインバウンドなどの時事も採り入れたほか、坂口憲二の連ドラ復帰や子役だった白本彩奈の成長、新たに三浦友和と石田ひかりが登場などの見どころもある。

「続々編は見た」という人は年末年始にもう一度一気見して自分の人生に思いをはせるのもいいし、「これまで見たことがない」という人は全3作の一気見もアリ。実現は難しいとはいえ『続・続・続』も期待されるだけに見ておいて損はないだろう。

4位:『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)

  • 桜井ユキ 撮影:島本絵梨佳

    桜井ユキ 撮影:島本絵梨佳

最初は「1位にしようか」と迷ったほど心地よさを感じさせる作品だった。

ただ、主人公の麦巻さとこ(桜井ユキ)の置かれた状況は過酷。一生つき合っていかなければならない膠原病を患ったことで仕事を辞めざるを得ず、引っ越しを余儀なくされてしまう。さとこは週4日のパートでしか働けないため、マンションを買う夢もあきらめてたどり着いたのが、築45年、家賃5万円の古びた団地。隣には90歳の大家・美山鈴(加賀まりこ)と居候の羽白司(宮澤氷魚)が住んでいて、彼の作ったスープに救われ、薬膳を生活に採り入れている2人に興味を持ちはじめる。

さとこが薬膳ご飯を学びながら、団地やパートの人々とふれ合うことで心身をゆっくり回復させていく物語なのだが、そのペースがスローだからこそ見ているこちらも癒されていく。さらに、1話ごとに異なる生きづらさを抱えた女性が登場し、さとこと交流することで互いに小さな力を与え合う様子は地味ながら人間のたくましさを感じさせられる。

単純な再生物語でも人生賛歌でもない、ひそかなメッセージ性も魅力の1つ。「生産性や向上心がなくても大丈夫」というセリフ通りがあったように、公私ともに忙しく、利益や情報を求めがちな現代人に気づきをうながす感があった。

古くても温もりを感じさせる団地、小さくても従業員がいたわり合うデザイン事務所、地味でも心身が喜びそうな薬膳ご飯……NHKの作品らしい丁寧な描写に癒されるだろう。

3位:『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジ系)

  • 磯村勇斗 撮影:泉山美代子

    磯村勇斗 撮影:泉山美代子

2025年も多くの学園ドラマが放送されたが、やはり教師が主人公の作品が大半を占めた。一方、当作の主人公の白鳥健治(磯村勇斗)は週3日高校に派遣されるスクールロイヤー。しかも「学校が苦手で不登校の過去がある」「臆病かつ不器用で集団行動が苦手」という学園ドラマの主人公にあるまじき設定だった。

各話の物語は、制服廃止、失恋はいじめか、校内でのスマホ撮影と盗撮の境界線、テスト結果のデータ流出、教師を好きになるのは罪かなどの絶妙なリアリティ。しかも健治が法律の観点から問題を整理し、さまざまな解釈を提示していく展開は視聴者にも気づきをうながした。

文科省の官僚が教師になった『御上先生』が「『剛速球をどう打つか』の戦い」なら当作は「スローボールで行うキャッチボール」。生徒にも教師にも寄り添うような世界観は「令和の学園ドラマはこうあるべき」と思わせるものだった。

さらに制作サイドは、日高由起刀、南琴奈、中野有紗、近藤華、越山敬達、のせりん、栄莉弥ら、高校生の年齢に近く一般的にはまだ無名の若手を躊躇なくキャスティング。至るところで制作サイドの志の高さを感じる作品だった。

2位:『シナントロープ』(テレビ東京系)

  • 水上恒司 撮影:島本絵梨佳

    水上恒司 撮影:島本絵梨佳

テレビ東京の月曜23時6分枠は良くも悪くも作風の幅が広い。ドロドロの復讐劇があれば、当作のようなクリエイターのこだわりを詰め込んだ傑作も時折放送されている。

此元和津也の脚本、山岸聖太の演出、江崎文武の音楽が冴え渡った当作はまさに後者。サスペンス&ミステリー、若者群像劇、ヒューマン、恋愛、バイオレンスの要素を巧みに織り交ぜながらクオリティを落とさず全12話を描き切っている。

特筆すべきは「あわてず急がず」の制作スタンス。何げない会話や1秒レベルのカットにじっくり話数をかけて伏線を散りばめ、緊張感と脱力で緩急をつけながら飽きさせることなく衝撃の最終話につなげた。

どこまでもクールでスタイリッシュな世界観である一方、才能豊かな若手俳優たちの演技はみずみずしくも熱気たっぷり。水上恒司、山田杏奈、坂東龍汰、影山優佳、望月歩、鳴海唯、萩原護、高橋侃の組み合わせは演技・ビジュアルともにバランスがよく、彼らの何気ない会話劇を見るだけでも楽しめるだろう。

連ドラらしいサスペンス&ミステリーという点では同時期に『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)が話題になったが、少なくともクオリティでは当作に軍配が上がる。ただ、作品を見た人数は圧倒的に劣るだけに、年末年始の一気見で純粋にすすめたくなる作品だった。

1位:『母の待つ里』(NHK総合)

  • 中井貴一

    中井貴一

2025年8~9月にNHK総合で放送されたものの、実は1年前にNHK BSで先行放送された作品であり、ましてや1位に選ぶべきではないか……と思ったが、やはり「他作より見ていない人が多い」「年末年始の一気見に最適」と考え直した。

ネタバレのないまっさらな状態で見てほしいため、あらすじの記述は最小限に留めておくが、最大の魅力は日本人の誰もがイメージする“故郷の母”を体現するような宮本信子の演技だろう。故郷を訪れる松永徹(中井貴一)、古賀夏生(松嶋菜々子)、室田精一(佐々木蔵之介)が「なぜあれほど癒され、故郷への思いを募らせていくのか」の説得力につながっていた。

見はじめるとすぐ、なぜ母親の名前がないのか。これは架空の話なのか、それとも現実なのか。それらを考えているうちに登場人物への感情移入が進み、さらに自分の母や人生を重ね合わせていく。そして「自分もあの故郷に行って、宮本信子が演じる“母”に会いたい」と感じるだろう。詳細は控えるが、そんな“母”の秘密を知ったときに感動が押し寄せるとともに「家族とは?」「お金と温もりとは?」などと考えさせられるはずだ。

浅田次郎の原作小説そのものが素晴らしいのだが、それを映像化したスタッフの丁寧な仕事が光っていた。特に「1カ月間ロケを行った」という岩手県遠野市の風景はノスタルジックながらも美しく、郷土料理からシャンプーなどの小物、人懐っこい近隣住民などの細部まで古き良き日本人の里山暮らしを再現。さらにジオラマや文楽などの視覚に訴えかける演出を加えることで虚実皮膜の世界観を作り上げた。

「第15回衛星放送協会 オリジナル番組アワード」グランプリを受賞した知る人ぞ知る名作であり、45分×4話という見やすさも含め、故郷に思いをはせる年末年始での一気見をおすすめしたい。


2025年はその他でも、消防士ではなく通信指令センターが舞台の『119エマージェンシーコール』(フジ系)、自局の『3年B組金八先生』を踏み台にするような斬新な学園ドラマ『御上先生』(TBS系)、バカリズム脚本作品の集大成を思わせた『ホットスポット』(日テレ系)、“純愛”の一点突破で視聴者を魅了した『波うららかに、めおと日和』(フジ系)。

教師とホストの恋愛をイノセントに描いた『愛の、がっこう。』(フジ系)、病気ではなく人を診る総合診療科が舞台の『19番目のカルテ』(TBS系)、竹内涼真が愛すべき化石男を演じた『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)、中盤から壮大なSFを急加速させて驚かせた『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)、馬主と馬の世代をまたいだ奮闘劇『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)などの局をあげた力作が目立った。

ここで挙げたものは一部にすぎないだけに、年末年始の休みを利用して動画配信サービスで視聴してみてはいかがだろうか。

ドラマ制作のみなさん、俳優のみなさん、今年も1年間おつかれさまでした。2026年も多くの人々を楽しませる作品をよろしくお願いいたします。