大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で天才絵師・喜多川歌麿を熱演している染谷将太。横浜流星演じる“蔦重”こと蔦屋重三郎とコンビを組んで才能を開花させ、世間に認められる天才絵師へと成長した歌麿役は、染谷にとってどのような経験になったのか。12月14日に放送される最終回を前に、歌麿役の撮影エピソードや天才絵師を演じた思いなどを聞いた。

  • 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』喜多川歌麿役の染谷将太

    大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』喜多川歌麿役の染谷将太

江戸時代中期の吉原を舞台に、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く本作。染谷演じる歌麿は、一度は袂を分かつも再び蔦重のもとへ戻り、コンビを復活。第46回「曽我祭の変」では、歌麿は絵師・東洲斎写楽の役者絵を売り出そうという蔦重の計画に合流し、“写楽”チームの中心となって絵を完成させていく姿が描かれた。

5月11日放送の第18回で初登場した染谷。以来、蔦重とのコンビで才能を開花させ、人気絵師の地位を確立する歌麿を演じてきた。演じる中で特に大変だったのは、やはり“絵”を描くシーンだったという。

「歌麿は描く分量も多く、求められるレベルも高かったし、有名な絵も多いし……“責任感”というか、歴史的に有名な絵を実際に大河ドラマの中で描かせてもらうことにすごく緊張しましたし、そのための練習もしました。筆ってすごく難しくて、少しでも手が震えると筆先に出てしまう。お芝居をしながら描かなければいけないことはすごくハードルが高かったので、大変でした」

収録期間中は、自宅に帰ってからも“宿題”のプリントを持ち帰って練習していたと笑う染谷。歌麿が“写楽”の絵に関わるストーリーは、プロットの段階で知ってはいたが、実際に演じてみると感慨深い思いがあったと振り返る。

「みなさんの書いた部分を自分が清書していったんですが、やっぱり写楽が、江戸兵衛が完成した時は、感慨深かったですね。歌麿の絵としての表現は『べらぼう』においてあれがほぼラストになるので、個人的に胸が熱くなりましたし、歴史が動いた感じもしました」

絵を描く役は、これまでにも映画『バクマン。』やNHKの連続テレビ小説『なつぞら』でも演じた経験があったが、技術が如実に表れてしまう日本画は「全然話が違いました」と苦笑いする。練習し始めの頃に比べて終盤は技術も上がり、現場で「褒めてもらうことが多かった」というが、求められるハードルも上がっていった。

「もうちょっといけるんじゃないか、とどんどん難しくなってくる(笑)。でも、難しい課題を与えてもらって練習量が増えるということは、それだけ歌麿と向き合う時間も増えるということだったので、今振り返ると、難しい絵に挑戦していくことも歌麿の役作りの一つだったと思います」

多くの“天才”役を好演「今回も天才絵師か……と(笑)」

そんな染谷にとって、歌麿を演じたことは「不思議な経験」だったという。

「演じていて、感じたことのない感情を感じることが多かったですね。怒りと言っても一言で怒りとは言いきれない感情だったり、蔦重に対する愛情だったり、その蔦重に対する愛情も歌麿の中でどういう愛情なのかが処理しきれなかったり……そういう表現は今までになかったですし、役者としても、1人の人間としても、すごく素敵な経験をさせていただけたなと思います。本当に、いろんなことがあった歌麿なので(笑)。怒ったり、泣いたり、笑ったり、すごく忙しなかったですけど、でもすごく充実していました。おきよ(藤間爽子)さんと出会って、やっと人と愛し合うことができたと思ったら亡くしてしまってつらかったですけど、本当にいい経験をさせていただきました」

染谷といえば、本作の歌麿役はもちろん、これまで『バクマン。』の新妻エイジ役や『なつぞら』の神地航也役など、才気あふれる役を演じてきた。本作で改めて“天才”役を演じたことに、どのような思いがあったのか。

「確かに“天才”とつく役をいただくことが多い自覚がございまして(笑)。今回も『天才絵師・歌麿です』と聞いて、天才絵師か……と(笑)。でも、天才って先天的なイメージがあると思いますが、今回は絵師としての才能が見出される前の状態から、大先生へと成長していく過程を演じることができたので、それは自分の中で大きな挑戦ではありました。“天才絵師”と言われるようになっていく様を表現していくことはすごく面白かったですし、挑戦でもありましたね。でも、その過程を丁寧に演じないと大先生に見えていかないので、天才絵師に見えていくように頑張りました」