女優の岡田茉莉子が1日、都内で開催中の第38回東京国際映画祭で、『浮雲』<4Kデジタルリマスター版>のトークショーに出席。成瀬巳喜男監督、高峰秀子、森雅之と過ごした撮影を懐かしみ、自身の健康法も明かした。
「よくあの中に入ってやったなと思いました(笑)」
成瀬監督がメガホンを取った『浮雲』は、林芙美子の同名小説の映画化作品。戦中戦後の混乱期を舞台に、ゆき子(高峰)と富岡(森)、そして彼らを取り巻く人々が織りなす宿命的な愛と悲劇のドラマを描き、成瀬監督の代表作として人気を誇る。今回は、今年開催された第78回カンヌ国際映画祭でも絶賛された、高音質の新4Kリマスター版での日本初上映となった。
大切に保管していたという撮影台本を持参した岡田は「ちょうど『浮雲』を撮っております時に、私は『芸者小夏』という映画に出ておりまして。その間を縫っての撮影でしたので、ちょっといろいろ大変でございました。けれども、この役というのは、大好きな役です。今日は見ていただいてありがとうございました」と会場に集った映画ファンに感謝した。
デビュー作『舞姫』も監督した成瀬監督の印象を聞かれると「巨匠ですのに、とても優しくしていただいて」と明かして、「演技指導もなさらないし、何もおっしゃらない方なんです」とコメント。唯一褒めてもらったのが、とあるシーンでの戸の閉め方だったことを懐かしんでいた。
森との共演に関しては、「成瀬さんは何もおっしゃらないし、森さんと2人で自由にやらせていただきました。森さんというのは、普段は明るい方なんですよ。役と全然違って。ですので、親切に教えてくださいました」とにっこり。「大先輩ですので、小さくなっていたんですけれども、全然そんなことは気にしないで、普通に扱っていただいて。とても楽にお仕事ができました。おかげさまで」と振り返った。
高峰については、「すごく明るい方で、私が緊張しないように冗談を言ったりして」と人柄を明かして、「全然、後輩とかっていう扱いではなくて、まるでお友達みたいにして付き合っていただいたんです。優しい方ですね」「現場はすごく楽しかったです」と述懐していた。
70年前の映画であることについては、「私もこのあいだ見て、70年前によくやったなと思いました」と笑顔。「久しぶりに見まして、今見ても全然退屈もしないし、素晴らしいなと思いました。あの映画は。まだ出たばっかりの私が、よくあの中に入ってやったなと思いました(笑)」と色褪せない魅力を語っていた。
好きなお寿司は「まぐろで~す」
自身の体調については、「全く元気です(笑)」と明言し、会場の映画ファンからは大きな拍手が起こった。「どこも悪くないし。今のところは、頭もまだ大丈夫だと思います。一生懸命生きております」と笑顔を見せた岡田は「体操をするくらいでしょうか。運動は良くしております。スポーツクラブへ行って、全身を動かすように。エアロビクスをやっています」と健康法を明かした。
現在92歳の岡田は、司会を務めたフジテレビ軽部真一アナウンサーに年齢を聞かれると「いくつだと思います?」と悪戯っぽく投げかけて、「70歳になります(笑)」とジョークを飛ばして会場を沸かせた。また好物を聞かれると「お寿司」と明かして、好きなネタについては「まぐろで~す」とお茶目な笑顔を見せていた。
日本映画専門チャンネルでは、『浮雲』<4Kデジタルリマスター版>を、来年1月に4K化テレビ初放送し、このトークショーの模様も放送。
さらに、2月には『めし』<4Kデジタルリマスター版>、3月には『銀座化粧』<4Kデジタルリマスター版>と、成瀬巳喜男監督の代表作を4K化テレビ初放送する。





