不整脈は治療の必要がない場合も多いですが、ドキッとしたり脈が飛んだりすると心配になりますね。不整脈の種類や原因となる生活習慣、注意したいケースを知って、うまくつきあっていきましょう。
「脈が飛ぶ」ってどういう状態?
不整脈とは「脈が乱れる状態」を指します。脈の打ち方が速すぎる、遅すぎるといった乱れのほか、本来規則的に打つはずの脈が一時的に起こらず、飛んでしまうこともあります。
たとえば3回に1回、5回に1回など、時々脈が抜けるような状態を「脈が飛ぶ」といいます。
心臓のリズムが乱れる「不整脈」
脈拍は心臓の動きに伴って起こります。不整脈は心臓の電気的なリズムが乱れている状態です。
心臓は筋肉でできた袋状の臓器で、微弱な電気刺激で動いています。心臓の上部にある洞調律(どうちょうりつ)という部分で電気が発生し、心房から房室結節を経て心室へと伝わります。その刺激で心室が収縮し、心臓がポンプのように血液を送り出します。 この電気信号が発生・伝達される過程でタイミングがずれると、不整脈が起こります。
多くは良性だが、放置できないケースも
「心臓が関係している」と聞くと深刻に感じますが、不整脈の多くは加齢や体質によるもので、心臓病ではありません。
心臓は1分間に60〜100回、1日では約10万回拍動しています。中年以降の人が1〜2日間心電図を記録すると、ほとんどの人で1日に1〜2回の不整脈が見つかるといわれます。
ただし、心筋梗塞や心不全などが原因の不整脈は危険です。こうした場合は薬の服用やペースメーカー治療が必要になることもあります。
また、高血圧、肺疾患、甲状腺疾患などが背景にあると不整脈が起こりやすくなります。
不整脈の主な3つの種類
不整脈は大きく分けて次の3種類があります。
(1)期外収縮(脈が飛ぶ・ドキッとする感覚)
脈が飛ぶタイプです。本来のリズムより早めに電気刺激が出ることで、1回の拍動で十分な血液が送れなくなり、脈として感じられない状態になります。
胸の痛みや不快感、一瞬ドキッとする感覚、胸がつまるような感覚を伴うこともあります。痛みは狭い範囲で一瞬、長くても数十秒程度。症状に気づかない人も多く、健康上問題がないことがほとんどです。
心臓の病気が原因のこともありますが、自律神経の乱れや生活習慣によって起こることもあります。30歳を過ぎると多くの人に見られるようになり、年齢とともに増えていきます。
(2)頻脈性不整脈(脈が速くなるタイプ)
心拍数が1分間に100回以上と極端に速くなる状態を頻脈(ひんみゃく)といいます。心臓で電気が早く作られたり、異常な電気の通り道ができたりして起こります。 脈が速くなるため動悸が生じ、ひどい場合は冷や汗、吐き気、意識の遠のき、失神を起こすこともあります。失神を伴う場合や極端に脈が速い場合は、命に関わる危険な不整脈であり、早めの受診が必要です。
(3)徐脈性不整脈(脈が遅くなるタイプ)
心拍数が1分間に50回以下と極端に少なくなる状態を徐脈(じょみゃく)といいます。心臓で電気が作られないか、電気刺激が途中で途絶えることで起こります。この状態が続くと息切れ、めまい、失神などの症状が現れます。
病気が原因であれば治療が行われますが、原因がなく徐脈だけの場合は、特に治療を必要としないこともあります。
期外収縮を引き起こす生活習慣
期外収縮は次のような生活習慣がきっかけで起こりやすくなります。
・過度の飲酒
・カフェインの過剰摂取
・喫煙
・薬の影響
・睡眠不足
このほか、疲労や精神的ストレスも誘因になります。
病気が原因でなければ日常生活に制限はありませんが、症状が気になるときは生活習慣を見直すことが大切です。
どうなったら病院にった方がいい? 受診の目安について
意識を失う場合は危険な不整脈の可能性があります。失神を伴うときは、なるべく早く受診してください。
また、徐脈で極端に脈が少なく息切れがひどい場合は心不全の可能性があります。脈拍が1分間に150回以上と極端に多い、突然動悸が始まって急に止まる、脈が不規則でバラバラに打っているなどの場合も、治療が必要な不整脈の可能性があります。
それ以外でも、不整脈が続く・生活に支障がある場合は受診を。特に症状がなくても健診で不整脈を指摘されたら、一度は原因を調べてもらいましょう。
不整脈は身近なサイン。焦らず、正しく向き合おう
不整脈は多くの人に起こる身近な現象で、必ずしも病気とは限りません。生活習慣によるものが多いですが、病気が原因のケースや、放置すると危険な不整脈に変わることもあります。強い症状が出たときや不安を感じたときは、迷わず医療機関を受診しましょう。
最後に生活の中での不整脈に関して、循環器科の専門医に聞いてみました。
「不整脈」と一言で言っても、しばらく様子を見ても問題のないものから、命に関わるものまで、非常に幅広い疾患群を含みます。まずは、どの種類の不整脈が出現しているのかを正確に診断することが何よりも重要です。不整脈発作時に一度でも心電図が記録できれば、基本的な診断はつきます。
来院時に不整脈が認められない場合には、24時間または1週間程度の長時間心電図モニターを装着し、発作時の症状や時間を患者様に記録していただき、その情報を心電図波形と照らし合わせて評価します。また、隠れた器質的心疾患(心臓の弁や血管・筋肉などに異常がある病気)がないかを確認するために、採血検査(甲状腺ホルモンなどを含む)や心エコー検査を行うこともあります。
不整脈の治療は大きく分けて、
①薬物療法
②デバイス植え込み治療
③カテーテルアブレーション
の3つに分類されます。かつては抗不整脈薬による治療が中心でしたが、副作用の懸念も少なくありません。近年では医療技術の進歩により、カテーテルアブレーションの成功率や安全性が飛躍的に向上しており、比較的早い段階から根治を目指してアブレーション治療を行うケースが増えています。

