家族などからいびきが大きいと指摘されたら。もしかしたら睡眠時無呼吸症候群という病気かもしれません。指摘に憤る前に、この病気のほかの症状を知って健康管理に役立ててください。

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■睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠中に10秒以上呼吸が止まってしまう状態を睡眠時無呼吸といいます。この無呼吸や低呼吸の状態が1時間あたり5回以上みられ、さらに日中の強い眠気などの症状があると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

<閉塞型と中枢型と混合型>

睡眠時無呼吸症候群は呼吸が止まる原因によってタイプに分けられます。

1つは喉が閉じることで空気が通らなくなる閉塞型。多くみられるのはこのタイプで、肥満と関連が強いことが分かっています。加齢によっても起こりやすくなり、50代以降は特に多くなります。また男性に多いといわれています。とはいえ、実際はあらゆる世代にみられます。肥満でなくても、下顎の形や首の長さなどが原因となることも。また女性でも閉経後は閉塞性睡眠時無呼吸になりやすくなるため、誰にでも起こるものとして注意が必要です。

もう1つは脳や神経、心臓の病気によって呼吸が止まる中枢型睡眠時無呼吸症候群です。中枢型は、脳卒中や心不全、心房細動の人で多くみられます。

なお、閉塞型と中枢型が組み合わされた混合型の睡眠時無呼吸症候群もあります。

ここからは主に閉塞型睡眠時無呼吸症候群について解説します。

■睡眠時無呼吸症候群の症状

代表的な症状は「激しいいびき」「睡眠中の無呼吸」、そして「日中の強い眠気」です。

肥満などの影響で仰向けに寝ているときに喉の奥が狭くなり、空気が通りにくくなることがあります。その結果、大きないびきが起こります。さらに、喉の空気の通り道が完全に塞がれると、空気の流れが止まり、無呼吸の状態に。

このとき、本人は寝ていますが「努力呼吸」といって、胸やお腹に何とか呼吸をしようとする動きがみられます。その後、血中の酸素が少なくなると一時的な覚醒反応が起こり、呼吸が再開します。こうした無呼吸の状態を一晩に何度も繰り返すと深く眠れる時間が少なくなり、日中に耐えがたい眠気が起こります。

自覚症状としては強い眠気のほかに、睡眠中に何度も目が覚める、起床時に頭痛や倦怠感がある、不眠、うつ状態、性機能不全などが起こることがあります。

■睡眠時無呼吸症候群の影響

睡眠が浅くなる睡眠時無呼吸症候群は、日常生活に大きく影響します。強い眠気のために集中が途切れたり、仕事中に居眠りをしてしまったりと、仕事に支障が出ることがあります。また運転中に眠たくなり、事故を起こしてしまうケースも。実際に、死亡事故を起こした高速バスの運転手が睡眠時無呼吸症候群である事例などもあり、健康な人と比べて交通事故リスクは約3倍ともいわれています。

さらに、ほかの病気につながる可能性もあります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は糖尿病や高血圧、脳卒中、心筋梗塞、心不全などの疾患のリスクを高めることも分かっています。

■受診の目安

激しいいびきや睡眠時無呼吸、日常生活に差し障るような日中の強い眠気がある場合、眠っても疲労感がとれない状態が続く場合は、専門の病院を受診するようにしましょう。

特に、睡眠時無呼吸の状態が1時間に20回以上ある場合は中等~重症の睡眠時無呼吸症候群となり、すぐに治療が必要な状態です。

■睡眠時無呼吸症候群の治療法

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、治療法はいくつか種類があります。

・マウスピース:マウスピースによって下顎を固定し、空気の通り道を確保します。歯科や口腔外科で作成したマウスピースを口に入れて就寝します。

・CPAP療法:CPAP(シーパップ)装置を用いた治療法です。ホースで装置につながれたマスクを鼻にあてて就寝します。すると装置から気道へ空気が送られ、気道が塞がるのを防いでくれます。

・手術:気道が塞がれやすい部分を広げるために、喉の奥の粘膜や周囲の組織を一部取り除く手術や肥大した扁桃腺を摘出する手術が行われることもあります。

・肥満の解消:肥満は最大の危険因子なので、肥満がある場合は解消するように指導があります。

・生活習慣の改善:睡眠時無呼吸は仰向けの姿勢で起こるので、横向きに寝ることでも改善できます。また寝る前に飲酒をすると喉の粘膜がむくんで空気の通りが悪くなるため、禁酒も治療になります。お酒を飲んで寝ることが習慣になっている人には特に効果があることも。習慣を変えるのは難しいことですが、徐々に量を減らす、医療機関で相談するなどして対策をしましょう。

■日中の眠気、見逃さないで

自覚症状が少なく「日中の眠気は疲れによるもの」などと見過ごされてしまいがちですが、睡眠時無呼吸症候群をそのままにすると、事故やほかの大きな病気につながる恐れもあります。いびきが大きいだけでは睡眠時無呼吸症候群とは限りませんし、日中の強い眠気は別の病気のサインかもしれません。健診で指摘されることはないものの、生活の質やその後の健康にも大きく影響するので、気になる症状がある場合はためらわず呼吸器内科や耳鼻咽喉科、専門の外来などを受診しましょう。

最後に睡眠時無呼吸症候群に関して、呼吸器科の専門医に聞いてみました。

「いびきがうるさい」と家族に言われたことはありませんか?

中には、自分のいびきを気にして寝室を別にしたり、外泊をためらったりと、悩んでいる方も少なくありません。でも、もしかするとそのいびきは、単なるいびきではなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインかもしれません。

SASとは、眠っている間に呼吸が10秒以上止まる状態が繰り返される病気です。激しいいびき・無呼吸・日中の強い眠気・倦怠感・集中力の低下などを引き起こし、自分では気づきにくいのが特徴です。そのため、家族からの指摘や日中の強い眠気が、重要な気づきのきっかけになります。またSASは放置すると、高血圧や糖尿病、脳卒中・心筋梗塞のリスクが高まることも分かっています。いびきや寝ているときの呼吸が気になる方、日中に強い眠気を感じる方は、早めの受診をおすすめします。

「よく眠れているつもり」が、実は“危険な眠り”かもしれません。そのいびきや日中の眠気、見過ごしていませんか? 眠りの質を見直すことが、未来の健康を守る第一歩になります。

竹下 正文(たけした まさふみ)先生

一宮西病院副院長 呼吸器内科部長
資格:日本呼吸器学会呼吸器専門医 日本内科学会総合内科専門医 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医