日中はそれほどでもないのに、早朝や夜だけ咳が出る……なんてことはありませんか? 決まった時間帯だけ咳が出るのはなぜなのでしょうか。ここでは早朝や夜間だけ出る咳の正体と対処法、受診の目安についてご紹介します。

■咳が出るのはなぜ?

  • ※画像はイメージです

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咳には「気道の中に異物が入り込むのを防ぐ」「気道の中に入り込んだ異物を排除する」という働きがあります。

その一方で、冷たい空気や煙、動物のフケ、ハウスダストなどに気管が刺激されて、脳の中の咳中枢にそれが伝わり、反射として咳が出ることもあります。

■早朝・夜間だけに起こる咳の原因とは

早朝・夜間の咳を引き起こす病気は、状況によっていくつか考えられます。

▶「ヒューヒューゼーゼー」する早朝や夜間の咳

最もよく見られるのが「ぜんそく」です。チリダニ、ハウスダスト、ペットのフケ、カビ、煙などに気管支が刺激されて狭くなり、ヒューヒュー・ゼーゼーと言った呼吸音や咳、痰が出て息苦しくなります。特に早朝や夜間に悪化しやすいのが特徴です。呼吸器科、アレルギー科などで治療を受けるのがおすすめです。

▶ヒューヒューゼーゼーしない早朝や夜間の乾いた咳

息切れや「ヒューヒューゼーゼー」という呼吸音がなく咳だけが続くぜんそく「咳ぜんそく」が考えられます。30%の咳ぜんそくは通常のぜんそくになるため、治療が欠かせません。呼吸器科、アレルギー科などで診てもらいましょう。

▶胸やけとともに起こる夜間の咳

咳に加えて胸やけもあるとしたら、「胃食道逆流症」の可能性があります。胃食道逆流症は胃の中のものが逆流して起こる症状や状態のことです。夕食後すぐに横たわると逆流して起こりやすくなります。胸やけや、口や喉に酸っぱいものがこみ上げてくるのが主な症状です。しかし、逆流した胃の内容物が気道を刺激することで、咳や喘息のような症状が引き起こされることもあります。消化器科などの受診がおすすめですが、まずはかかりつけの内科に詳しい症状を伝えて紹介してもらってもいいでしょう。

▶夜や朝などに仰向けに寝ると起こる咳と痰

鼻や鼻の周りの副鼻腔に慢性炎症が起こると、膿が喉の奥に流れ落ちるようになります。これを「後鼻漏」と言い、仰向けに寝ると後鼻漏が喉を刺激して咳や痰が出やすくなります。耳鼻咽喉科で薬剤を処方してもらうと改善できます。

▶横になって寝ていると起こる咳と息苦しさ

横になってしばらくすると、咳が出たり息苦しなったりする背景に「心不全」が隠れていることがあります。心不全とは、心臓の働きが悪くなっている状態です。心臓が十分に働かないため、横に寝ると肺を通る血管の血流が滞ってしまい、刺激となって咳や息苦しさが現れます。その他に足がむくんだり体重が増えたりすることもあります。放置して悪化すると命に影響しますので、早めに循環器科を受診しましょう。

▶その他のシーンで出る咳

気管支ぜんそくや咳ぜんそく、またアレルギーがある場合、冷たい空気を吸ったときや運動したときに咳が出ることがあります。続くようであれば、呼吸器科、アレルギー科などに相談しましょう。

また、「心因性咳嗽」といって人と会話をするたびに痰を伴わない咳が出ることもあります。心因性咳嗽は、犬の鳴き声や笛の音のような、甲高く響く咳が特徴です。キンキンとした大きな音で咳をすることもあります。精神的ストレスから起こるのですが、自己流で他の病気との区別をつけるのは難しいので、まずは呼吸器科などに相談してもいいでしょう。

以上はあくまでも「疾患の可能性」であり、あなたの咳の原因がこれらであるとは限りません。いずれにしても、咳やその他の症状がある場合は、早めに医療機関を受診して原因を突き止めましょう。

■それぞれの咳のホームケア

軽い咳程度であれば、まずは自宅でできるケアを試してみてもいいでしょう。

・寝室の温度・湿度を調整する
乾燥した空気や冷たい空気によって咳が起こる場合は、エアコンや加湿器などを使って温度・湿度を調整しましょう。

・夕食時間を早め、寝る時に上半身を少し高くする
胃食道逆流症が原因の場合は、夕食を寝る6時間前までに摂るとともに、クッションなどを使って上半身を少し高くして寝ると、逆流が減って咳が出にくくなります。

・禁煙する
あらゆる咳についての効果が期待できます。喫煙すると咳が出やすくなるので、禁煙するとともに副流煙も避けましょう。

■咳は呼吸器だけの問題ではない可能性も

早朝や夜間になると起こる咳の原因としては、ぜんそく、咳ぜんそく、胃食道逆流症、後鼻漏、心不全など様々な病気の可能性があります。ホームケアで症状が改善することもありますが、自己流で判断して病気を見逃さないようにぜひ一度病院にも相談しましょう。相談することで症状を早く楽にできるかもしれません。その際には「どんな時に」「どんな咳が出るか」をメモに書くなどして、しっかり伝えることが大切です。

最後に早朝・夜間の咳に関して、呼吸器内科の専門医に聞いてみました。

「夜間や明け方に咳が出る…それ、体からのサインかもしれません」

夜間や明け方に咳が続く…そんなお悩みはありませんか? 気温差や乾燥した空気、横になる姿勢などは、知らず知らずのうちに気道を刺激し、咳の引き金になることがあります。気管支ぜんそくや咳ぜんそく、アレルギー、胃酸の逆流(逆流性食道炎)、鼻水が喉に落ちる後鼻漏、心不全など、さまざまな病気が原因になっていることもあります。

また、夕食を食べてすぐに横になると、胃の内容物が逆流しやすくなるため、食後2〜3時間は横にならないようにするのも大切な対策のひとつです。寝室の温度や湿度を整えたり、タバコを控えたりすることも咳を和らげるポイントです。

「ただの風邪かな」と思って見過ごすのではなく、咳が長引くときは医療機関を受診してみてください。咳は、体が発している大切なサイン。あなたの“いつもと違う"に気づいてあげることが、自分自身はもちろん、周りの大切な人を守ることにつながるのかもしれません。

竹下 正文(たけした まさふみ)先生

一宮西病院副院長 呼吸器内科部長
資格:日本呼吸器学会呼吸器専門医 日本内科学会総合内科専門医 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医