三谷幸喜のオリジナル脚本で、1984年の渋谷「八分坂」という商店街を舞台にした群像劇のフジテレビ系ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(毎週水曜22:00~ ※TVer、FOD、Netflixで配信)の第4話が、22日に放送。WS劇場再生前夜が期待感たっぷりに描かれた。

  • 菅田将暉

    菅田将暉 (C)フジテレビ

【第4話あらすじ】舞台初日前夜、絶望が希望に変わるが…?

WS劇場では久部三成(菅田将暉)による『夏の夜の夢』の初日公演を翌日に控え、倖田リカ(二階堂ふみ)、蓬莱省吾(神木隆之介)らが準備に追われていた。「で、明日はうまく行くの?」とリカに聞かれると、久部は自信いっぱいに「もちろん」と断言する。

その頃、八分神社の社務所には神社本庁の清原(坂東新悟)が来ていた。風紀が乱れ、我慢の限界に達している巫女の樹里(浜辺美波)は「1日も早く出て行きたいんです」と清原に懇願する。清原は「街も変わりつつあるし、もう少し頑張ってみたらどうか」と『夏の夜の夢』のチラシを取り出す。

「楽しみにしているんです」と喜ぶ論平に対し、樹里は「シェイクスピアへの冒涜です!」と声を荒げる。

舞台の準備は着々と進むが、久部は悲観的。思い通りにはいかないのだ。そして、そのゲネプロ(通し稽古)中、突如、久部の古巣劇団「天上天下」の黒崎(小澤雄太)が乱入する。「自分の夢に他人を巻き込むな」と黒崎。だがWS劇場の人々の自由な芝居に口をつぐむ。型にはまらない“可能性の萌芽”が、そこにはあった。

こうして数多くのトラブルを乗り越え、迎えた初日。その裏で、おばば(菊地凛子)のタロットカードは「挫折、限界」を意味する「世界」の逆位置が開かれていた…。

  • (左から)坂東新悟、浜辺美波、坂東彌十郎 (C)フジテレビ

    (左から)坂東新悟、浜辺美波、坂東彌十郎 (C)フジテレビ

純粋な心の持ち主であるがゆえ暴走

予告で流れた巫女・江頭樹里の「シェイクスピアへの冒涜です!」のインパクトが話題になっていた第4話。物語に大きな展開はないが、次回以降の期待が数多く散りばめられた、プレリュード(前奏)としての密度が増す回として楽しめた。

映像的にも、劇中劇として公演される『夏の夜の夢』、パック役の衣装を着た久部のユニークでセクシーすぎる(?)肌スケスケの衣装。そして愛を追う若者ライサンダーを演じるトニー(市原隼人)の、男臭さとは真逆のかわいらしい衣装と立ち姿の萌えギャップ。あれだけ演劇に拒否反応を示していたトニーの俳優としての成長展開。これに加え、巫女衣装ではない私服の樹里が初披露されるなど、目でも十分に楽しめる一幕だった。

ここで改めて注目したいのが、樹里の「シェイクスピアへの冒涜です!」という言葉。同作品は「シェイクスピアのオマージュがふんだんに散りばめられている」との評がよく見られるが、具体的にどういうことか。一視聴者として、ごく個人的な分析を試みた。

まず久部が挑むパックだ。パックは、妖精王オベロンの手下で、イタズラ好きの精霊。人間たちに魔法の花粉を振りかけて混乱を引き起こしていたが、本来はデミートリアスに塗るはずの「恋の花」をライサンダーに塗った誤りから混乱が拡大し、物語が加速していく。『夏の夜の夢』最大の難役かつ、成功を左右する重要キャラである。

彼を演じる久部は、潰れかけたストリップ小屋を舞台に、演劇の「魔法」を信じて人々を巻き込んでいく演出家。パックに当てはめると、「本来は舞台に興味がなかった人々に、“舞台への愛”という魔法をかけて、振り回しかき乱す」存在として類似性がある。

次に、久部(くべ)の語感から彼をシェイクスピア四大悲劇『マクベス』に重ねてみる。理想が支配欲に転じる危うさと、人の弱さの極限を描いた名作だ。すると以降のワクワクが増してくる。

物語はこうだ。勇者・マクベスはある日、魔女に「やがて王になる」などと予言される。忠義と栄光を求めていた純粋な彼に降って湧いた野望。これを知った妻はマクベスを煽り、マクベスの野心を越えてはならない一線へ踏み込ませた。それは殺人(罪)という最悪の結果を生み…。その後、マクベスは王となるも、孤独と恐怖、自身の罪にさいなまれ、「狂気」と「破滅」へ導かれる。

これを『もしがく』に置き換えてみる。久部は、才気あふれる演出家だが、売れずにくすぶっている(※勇者ではあるが王ではない)。それでも、「WS劇場を最高の舞台にする」という理想(=野心)に成功(=王)することを夢見る。そしてマクベス同様、純粋な心の持ち主であるがゆえ暴走。WS劇場の人々を半ば強引に自身の「夢」に巻き込み、物語は現実と「夢」の間(はざま)へ運ばれた──ここまでが第4話だ。

すると今後の展開は、久部の「悲劇」と「狂気」かもしれない。現実と虚構の境が壊れ始め、疑心暗鬼と暴君化。「破滅」の道を歩む可能性も…? しかし、そもそもシェイクスピアは上演時代から大胆な翻案や劇中劇の遊戯を許容してきた作家だ。三谷幸喜がこれを知らぬはずがない。『もしがく』は、その伝統的な遊びの系譜にどう名を連ねるのかが本作、最大の見どころだ。

そして現状、その鍵となり得る候補は、WS劇場オーナーのジェシー才賀(シルビア・グラブ)。第3話で彼女が演劇に詳しいという伏線が張られ、第4話では有名劇団出身の過去が明かされた。果たして彼女は、久部をマクベスの「狂気」から解き放ち、成功へと導くのか。それとも、マクベス夫人のように「暴走」の火を点けるのか。はたまた、マクベス夫人に当たる人物は他に? まさか、二階堂扮するリカが?──このように妄想を次々とかきたててくれるのは、名作候補の証しだ。