池井戸潤氏原作の小説『俺たちの箱根駅伝』が、日本テレビ系で2026年に連続ドラマ化されることが19日、発表された。

  • 池井戸潤氏(撮影・国府田利光)と『俺たちの箱根駅伝』書影

    池井戸潤氏(撮影・国府田利光)と『俺たちの箱根駅伝』書影

小説『俺たちの箱根駅伝』が描くのは、“箱根駅伝”という一大プロジェクトの裏側。日本のお正月の風物詩が題材なだけに、最初の構想から実際に執筆にとりかかるまで、池井戸氏はかなりの年月を要したという。

特に難しかったのは、「箱根駅伝に出場するチームをどう描くか」という点。架空の大学名だけを並べてもそこに感情移入は難しいが、大学名だけ借りて勝手な物語を描くことはできない。その狭間に行き詰まりながらも取材を重ねること十余年、2021年に『週刊文春』で連載がスタートした。

どん底から勝利を目指す大学陸上競技部のランナーと監督、箱根の走りを生中継するテレビ局員たち、それぞれの熱意、プライド、駆け引き、思惑ー箱根のレースそのままの予測不可能なドラマが臨場感たっぷりに描かれていく。

池井戸氏自身が本作を描くきっかけになったという、中継ポイントの中で“小涌園前”だけが旅館の実名である理由や、生中継の現場で代々受け継がれている“放送手形”など、胸が熱くなる箱根駅伝のトリビアに加えて、青山学院大学ほか箱根駅伝常連校も実名で登場することで、先の読めない展開に一層の臨場感が加わり、読む者の心をたぎらせ、熱い涙を誘う。まさに池井戸潤の新たな代表作となった。

■池井戸潤氏 コメント

『箱根駅伝』の中継ポイントは地名で呼ばれるのに、なぜ「小涌園前」だけが地名ではなく施設名で呼ばれるのか? こんな小さな疑問が、上下巻に及ぶ膨大なストーリーと人間ドラマに発展するとは思いませんでした。

ランナーとして、またそれを支える側に回って「箱根」に賭ける学生たちの情熱、タスキへの思い。その映像をリアルに届けようと奮闘するテレビマンたちの執念。いかにエンタメとはいえ、迂闊に手を出せない真剣勝負をどう小説に落とし込むのか――。

書きたいと思ってから、実際に書き上げるまで、気がつけば何年もの月日が流れていました。学生ランナーはもとより、『箱根駅伝』に関わる全ての人達へのリスペクトを胸に、彼らに負けない熱量をもってひたすら書いた、まさに渾身の一作です。視聴者の皆さん、そして読者の皆さんも、ひとりのランナーとなってタスキを繋ぐ友情と信頼、そして意地と執念がぶつかり合う全十区、217.1キロを駆け抜けてください。もう二度と、こんな小説は書けないでしょう。

【編集部MEMO】
昨年の『箱根駅伝』の個人視聴率は、復路17.5%で年間3位、復路15.7%で年間5位。今年は往路17.0%、復路17.3%を記録している(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。