放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は、登場人物の親族から要望書が提出されていた『NHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦」』(8月16~17日放送)について、「放送倫理上問題の疑いがあるとまではいえない」との議論の内容を公表した。

  • NHK放送センター=東京・渋谷

    NHK放送センター=東京・渋谷

この番組を巡っては10月初旬、舞台となった総力戦研究所の所長を務めていた人物の親族から、「祖父が正反対の人物として描かれ、総力戦研究所に関する史実が意図的にわい曲されている」旨を記した「要望書」と資料が、放送倫理検証委員会に提出された。

NHKの番組紹介によると、「猪瀬直樹の『昭和16年夏の敗戦』を原案に創作を加えたドラマと、総力戦研究所の史実を伝えるドキュメンタリーを2夜連続で放送。日米開戦前夜の1941年夏、首相直属の総力戦研究所で日本とアメリカが戦った場合のあらゆる可能性がシミュレートされた。官僚・軍人・民間から選抜された若きエリートたちが導き出した結論は日本の“圧倒的な敗北”だった―。」と説明されていた。

放送倫理検証委員会は申立て制度を取っておらず、要望書を受けて必ず議論を行うものではないが、この番組については視聴して議論を実施。委員からは、史実に基づくドラマ制作に関し、関係者と事前に協議をしなかったことや人物の設定そのものを史実と変えて描くことに疑問を呈する意見のほか、戦争の取り上げ方が多様化する中でのドラマ制作のあり方、歴史の捉え方、モデル小説などに関する裁判例についての意見があった。

その結果、「ドラマ制作として放送倫理上問題の疑いがあるとまではいえず、またテロップでフィクションであることを明示したうえ、ドラマの後のドキュメンタリー部分で、実際の所長はドラマで描かれた人物像とは異なっていたことをナレーションなどで説明しており、視聴者において誤解が生じることはない」とし、討議入りしないことを決めた。

同委員会では通常、審議・審理入りしないことを決めた番組については公表していないが、要望書を出した親族が記者会見を行ったことやNHK会長の記者会見の発言などがすでに報道されていることから、議事概要に番組名などを記載した。