話題をキャストに移すと、『もしがく』は菅田、二階堂、神木、浜辺と令和を代表する若手主演俳優が集結。彼らを小林薫、坂東彌十郎、井上順、野間口徹、シルビア・グラブ、野添義弘、長野里美ら芝居巧者のベテランが支えるという図式が見られる。

一方、『王様のレストラン』は西村雅彦(現・西村まさ彦)、小野武彦、梶原善、白井晃ら “三谷組”の舞台系俳優を大量にキャスティング。彼らの扱いは、メインの九代目松本幸四郎、筒井道隆、山口智子、鈴木京香とほとんど同列に見えるほどだった。

そもそも三谷作品はキャストの数だけキャラクターの数があって、それぞれにセリフや見せ場が用意されている。さらにそんな「一見バラバラのキャラクターが、“ここぞ”という時にチームワークを発揮する」というエモーショナルな展開は、三谷組がそろう『王様のレストラン』が今なお最高レベルなのかもしれない。

そしてもう1つ、キャスティングにおける三谷作品の共通点は、主演俳優に与えられるハイプレッシャーな役柄。実際、『王様のレストラン』の九代目松本幸四郎は“伝説のギャルソン”、『もしがく』の菅田将暉は俳優の彼に“劇団演出家”という難役を演じさせている。加えて三谷が「特定の俳優をイメージして脚本を書く“あて書き”をすることで彼らのプレッシャーを高め、スキルを引き出している」と言っていいだろう。

『王様のレストラン』が放送された1995年から30年が過ぎた今見直してみると、九代目松本幸四郎の一挙手一投足にあらためて引き込まれる。「千石武を演じられるのはこの人しか考えられない」と思わせる三谷のあて書きと松本の役作り。これだけ多くの登場人物にスポットを当てた作品でありながら、主演に選ばれた必然性を再確認させられる。

放送終了後にファンが増えた奇跡

これまで個人的に『王様のレストラン』を解説する機会は何度かあったが、必ず盛り込んでいたのが、「放送当時は話題性も視聴率もそれほど高くなかった」こと。当時は「面白かったけど大好きとまではいかない」「他ドラマのほうを優先的に見ていた」という人が多く、熱烈なファンがいるわけでもなかった。

しかし、再放送が繰り返され、ジワジワとクチコミが広がり、その素晴らしさに気づいて声をあげる人が増えていった。連ドラは見れば見るほど飽きられ、年月が経過するほど時代に合わず共感を集めづらくなっていくものだが、『王様のレストラン』は例外。時を経て色あせるどころか、輝きを増す宝石のような作品と言っていいのではないか。

これまで何度か三谷に話を聞く機会があり、そのたびに「民放の連ドラはもう書かないのですか?」と尋ねていた。すると三谷の返事は「ぜひやりたい」「特に理由がないのでオファーがあれば」などの前向きなものばかり。しかし、「けっきょく大河ドラマ以外はやらないな」と思わされていたが、ついに民放の連ドラに帰ってきた。

そんなテレビの連ドラに強い思い入れを持つ三谷は、今後どんな作品を手がけていくのか。連ドラが正味45分×10~11回で登場人物をじっくり描けるものであり続ける限り、どんな舞台とキャストを選んだとしても、『王様のレストラン』の系譜を継ぐような作品になっていくのだろう。

日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。