10月6日、ドラマ『絶対零度 ~情報犯罪緊急捜査~』(フジテレビ系)がスタートする。
放送前最大の話題は、『科捜研の女』(テレビ朝日系)でシリーズ24作にわたって法医研究員・榊マリコを演じた沢口靖子がフジの月9ドラマで初主演を飾ることだった。
ただ、それ以上に気になるのは、あえて沢口の主演ドラマに、これまで上戸彩と沢村一樹が主演を務めた『絶対零度』シリーズが選ばれたこと。2010年放送のシリーズ第1弾『絶対零度~未解決事件特命捜査~』(フジ系、FODで配信中)を見ることで、その理由が浮かび上がってくる。
はたして『絶対零度』とはどんなシリーズ作で、そのベースとなる第1弾はどんな作品だったのか。ドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。
「絶対零度」というタイトルの意味
物語は黒の画面に白字で「日本には現在、約6万件のコールドケース、つまり未解決事件が存在する」という寒々しいテロップからスタート。続いて「警視庁は2009年11月2日、捜査一課にコールドケースを専門に扱う特命捜査対策室を設置。残された数少ない証拠、記憶の薄れた関係者の証言、そして最新の科学技術を頼りに事件解決に挑む」という文字が表示される。
まだ登場人物が誰も現れていないこの段階で、「心して見なければいけないドラマ」というムードに気づかされるだろう。
そもそも「絶対零度」とは、分子や原子の運動が止まる最も低い温度のことだが、実際には到達できないとも言われている。当作のタイトルは“コールドケース”と呼ばれる未解決事件を「絶対に凍りつかせない」と奮闘する熱い刑事たちの姿がベースになっていた。
主人公は警視庁捜査一課に設置された「未解決事件特命捜査対策室」に配属されて3か月の新人刑事・桜木泉(上戸彩)。桜木は難事件に直面するほか、強烈な個性を持つ先輩刑事たちの洗礼を受けるなど、ギリギリの精神状態に追い込まれながらも決してあきらめない。そんな緊張感は第2弾の『絶対零度~特殊犯罪潜入捜査~』(11年)、第3弾・第4弾の『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(18年、20年)でも同様だった。
しかも第3・4弾は沢村一樹が演じるベテラン刑事を主人公に据えたことで重厚さがアップ。沢口靖子が主演を務める第5弾でも同等レベルの重厚な世界観が推察される。
そしてもう1つ『絶対零度』シリーズの共通項としてあげておきたいのは冷酷さや悲劇性。実際、第1弾の第1話では開始2分で白骨死体が映し出され、のちに被害者が殺され、埋められるシーンも見られる。第2話以降の物語でも、21時台の放送らしい演出上の配慮こそ見られるものの、残酷な殺害シーンが描かれ続けた。
ちなみに毎回の事件名をあげていくと、「東都銀行3億円事件」「富士見医大研修医殺害事件」「黒髪女性連続殺人事件(神の処刑事件)」「中学理科教師行方不明事件」「学校飼育動物連続殺傷事件」「千山こども交流会殺傷事件」と、文字だけで重苦しいムードがわかるのではないか。
今秋の第5弾はそんな冷酷さや悲劇性を感じさせる『絶対零度』の重苦しいムードに、あえて『科捜研の女』の印象が強い沢口靖子をかけ合わせたら、どんな化学反応が見られるのか。あるいは『絶対零度』ならテレビ朝日の榊マリコとは異なる沢口靖子の魅力を引き出せるのではないか。そんな制作サイドの思惑がうかがえる。
