フジテレビ系ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(10月1日スタート、毎週水曜22:00~)に主演する菅田将暉。経済の安定成長期からバブル経済期への移行期にあたる1984年の渋谷を舞台にした青春群像劇で演じるのは、蜷川幸雄に憧れる演出家の卵・久部三成だ。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)以来の三谷幸喜氏の脚本作品となるが、台本を読んで「すごく三谷さんっぽい」と感じたという菅田。今回演じる「本当にバカ(笑)」という愛すべきキャラクターへの思いや、テレビドラマとしては異例のオープンセット、そこから感じた希望を語った――。
俳優の現場であまり味わえない空気感
――三谷幸喜さんとの再タッグになりますが、まず脚本を読んだときの感想をお願いします。
最初から面白かったです。常に群像劇で描かれていて、1話ほぼ1日の話なので、みんながせわしなくて、暇な人があんまりいなくて、誰が主演かも分からない。その感じがすごく劇団っぽいし、三谷さんっぽいんです。個人的に三谷さんの群像劇はすごく好きで、笑いと涙と、感情がいっぱいあるこのごちゃ混ぜ感が面白いなと思いました。
――三谷さんの半自伝的要素を含む作品です。
知らないことがいっぱいありました。三谷さんのことだけではなく、ストリップ劇場で寄席のように芸人さんが間でネタをされてたりとか、当時の渋谷の様子とか、その辺も新鮮でした。そこにシェイクスピアのオマージュがたくさんあるというのが新しいし、三谷さんは「みんながポジティブで、上を向いてる」「何もないけど、全部ある」「変なエネルギーがいっぱい詰まった時代だった」とおっしゃっていて、その感じを演じるのが楽しみだなと思いました。
――今回演じられる久部はどんな人物でしょうか?
本当にバカというか…(笑)。演劇に対する熱量、蜷川幸雄先生やシェイクスピアへの愛情が強すぎるがゆえに空回りしていて、三谷さんにも「もっと自分勝手で」「あんまり人の話を聞かなくていい」「セリフを受けすぎなくていい」と言われています。本当に自分勝手で、全員に嫌われていくんですよ(笑)
テレビドラマの主人公って、やっぱり好かれることが多いじゃないですか。犯罪者だろうと好かれるべきなんですよ、ドラマなんだから。でも、どんどん嫌われて大変なことになっていく。だから久部のダメなところを、途中1回好きになって見てもらいつつ、本当に最後は嫌われていったらいいなと思いながらやってます(笑)
――そんなキャラクターが主人公の作品は、珍しいですね(笑)
悲劇だと思ってください。喜劇ではないです。本当に目も当てられない悲劇だと思ってやってます(笑)
――この役を演じるのは楽しいですか?
やり取りが楽しいんです。演劇がベースにあって、個人的にそれぞれが自分勝手な作品ってすごく好きなんですよ。調和を取ろうとしないがゆえに、いろんなことが起きていって、それぞれの個性が爆発していくので、やっていて楽しい。今回は普段なかなかドラマで出会えないようなキャストの方々がレギュラーで何人も出ていらっしゃるので、俳優の現場であまりない空気感だなと思っています。
――久部は愛すべき役ですか?
僕的には愛すべき役だなと思いますよ。でも、たまに自分でも「こいつ、本当にいい加減にしろよ!」と感じることも(笑)。こんなダメな人間を全力でやれるなんて、現代ではお芝居ぐらいじゃないですか。なので楽しいです。
蜷川幸雄さんから吸収したものを生かす
――今作は1984年の渋谷が舞台です。
一種の時代劇だと思ってやっています。言葉の置き方や、会話のラリーの速さ、ちょっと粗暴な感じとか。今にはないちょっと圧のあるテンションを意識して演じています。あと、とっぽい感じがあるんです。今はタバコを吸うだけで一つのキャラクターになるけど、この世界の人はみんな吸ってるし、平気でポイ捨てもしちゃう。モラル感として、ちょっと雑な感じは、感情の表現の仕方をとってもそうなんです。声量とか人との距離の近さとかも、ちょっと粗めに意識してやっています。
――灰皿を投げつけるなど、厳しい演出指導で知られる蜷川さんに憧れているということで、やはり圧のあるキャラクターなんですね(笑)
今ご想像されている通りだと思います(笑)。ただ、劇中劇もあるので、久部がどういう演出をするのか、何を求めているのかというのは、三谷さんとも相談したんですけど、意外とちゃんとしてるんです。自分の理想とかやりたいことがあるんだろうけど、意外とそれ以上に役者に沿って演出しているシーンが結構あって。だから、ちゃんとその人その人を見ているんです。なので、センスがないわけではないんです。
――久部の心の師匠は蜷川さんですが、菅田さんにとっての心の師匠はどなたになりますか?
青山真治監督です。(映画『共喰い』で)19歳の頃出会ったんですけど、最初に映画の現場みたいなのを怒鳴られながら教えてもらったのが原体験としてあります。その後、幸いにして蜷川さんの元でも一本やらせてもらって、それもすごく記憶に残っています。
――その時の蜷川さんとのやり取りが、今回生かされている部分はありますか?
あります。例えば、当時『ロミオとジュリエット』で僕がロミオをやらせてもらって、ジュリエットへの思いを表現する時に「とりあえず気持ちが高ぶったら階段を上がって、高いところに行け」って言われたんですよ。たしかに視覚的にも分かりやすいし、物理的にも上がろうとするエネルギーってすごい大事だったりするんですよね。なので今回はそれを意識して、高揚したときの表現を普段のお芝居よりもちょっと演劇的な要素を入れて、無駄に立ち上がったり、ちょっと高いところに登ったり、身振り手振りを大きくして違和感が少し出るぐらいやっています。

