中高生から大人まで参加可能「T-TRAKジオラマSHOW」

ここからは、一般個人の出展する「T-TRAKジオラマSHOW」と「ミニジオラマサーカス」を見ていく。まずは「T-TRAKジオラマSHOW」について。この企画では、幅308mm(または618mm)×奥行き355mmまたは一辺363mmのボードを使用し、指定された位置に複線線路を固定した上でジオラマ作品を制作する。

  • 「T-TRAK」規格で制作されたジオラマ同士がつながり、さまざまなNゲージ車両が展示走行した

ボード底面から数えて全体の高さは500mm以下とし、背景板の厚みも3mmまで。建築限界や電飾の指定も守らなければならない。出展は中学生以上から可能となっている。

会場では、出展された作品をブロックごとにつなげた上で、用意された展示車両が走行していた。会場に来ていた出展者の一部に、自身の作品について取材した。「Rail-Navi」アプリ内で2~5月頃に開催された「ウッドランドからの挑戦状『光の達人編』」にて、KATO賞を受賞した作品が出展されていた。

  • 「ジャストプラグ」を駆使し、京急蒲田駅付近を夜景で再現。規格の線路は地下線とし、トンネル内にもライトを組み込んでいる

制作者自身がファンである京急線の中で、電飾映えする場所を踏まえて京急蒲田駅付近の高架区間を再現したとのこと。KATOの高架や架線柱を加工し、京急線の雰囲気に近づけた。ストラクチャーはサードパーティーを含む既製品を中心に使い、イベントのテーマである「ジャストプラグ」を組み込んでいる。その他、道路上の信号機・街灯や自動車にも電飾が入っている。制作時間に限りがあったとしつつも、「ジャストプラグ」の配線は楽だったという。

昨年も出展していた参加者から、今年も話を聞くことができた。その1人の出展作品が「4丁目の夕日」。昭和末期から平成初期の時代で、東京都北区あたりの台地の境目を参考にしている。LEDと赤色の下敷きで夕日を表現。奥にある銭湯の煙突から煙が出るようになっており、これには卓上加湿器を活用したという。加湿器を買おうとした際、時期的に入手が難しく、また加湿器分の高さのかさ上げに苦労したとのことだった。

  • 線路のすぐ横に高台の住宅地が続く。夕日と銭湯の煙がどこかノスタルジック

  • 築堤沿いに続く格子状の法面を「T-TRAK」で再現。都市部近辺にありそうな情景に親近感がわく

もう1人の作品は「格子のり面と築堤カーブ」。塗装したコルクシートを用い、近年見られる築堤区間での格子状の法面を再現した。規格の線路を築堤区間とし、他の部分の地面は低く設計するため、高い建物も配置できたという。樹木は100円ショップ素材から作り、昨年同様に電飾も組み込んでいる。制作した感想としては、「今回上手くいったので、続きが作りたくなった」とのことだった。

手のひらサイズのミニジオラマが新宿に集う「ミニジオラマサーカス」

最後に「ミニジオラマサーカス」を見ていく。この企画では、手のひらサイズの「ミニジオラマベース」規格に沿ってジオラマ作品を制作する。作品は運搬用クリアケースに収めて運搬されるため、その寸法に合わせてジオラマを作る必要がある。小学生・中高生・大人の3部門に分かれるが、実際の展示では年代に関係なくジオラマ同士がつながる。

「ミニジオラマサーカス」に出展する際、指定期間中に「鉄コンアプリ」で参加申込みを行う必要がある。その後、基本的には最寄りの登録模型店をアプリから選択し、その店舗を介して参加費の支払いや作品の受渡しなど行うが、学校単位での出展(1校につき8作品以上)に加え、搬入日に直接持ち込むこともできる。全国から集まった作品は、登録模型店ごとのブロックで1周つながり、それらの上を「マイトラム」などの小型車両が走行した。

  • 登録模型店ごとのテーブルでミニジオラマがつながる

  • 小型電車が小さな情景を走行した

  • 名鉄名古屋駅のミニジオラマ。人形の数や電飾など、コンパクトなジオラマベースにあの雰囲気を凝縮

ミニジオラマについても、会場に来ていた出展者に取材した。まずは、名鉄名古屋駅の情景をミニジオラマで再現した「ある私鉄の沿線風景」という作品。「限られたスペースで名駅(名鉄名古屋駅)のカオス感を出すように」とのことで、ホーム部とコンコースの二層構造となっている。「鉄道コレクション」の名鉄6000系をホームに配置し、各フロアと車内合わせて100体以上の人形も配置している。ホームと車内にテープLEDの照明も。ボタンでミュージックホーンが鳴るギミックも搭載し、実際の雰囲気がうかがえた。

昨年も出展し、今年も話を聞くことができた参加者の1人は、「消えた踏切の行方」というジオラマを出展していた。2022年、西鉄天神大牟田線の井尻~都府楼前間の高架化にともない廃止された後、沿線マンションに移設された旧雑餉隈5号踏切を再現している。今回のミニジオラマで唯一のスラブ軌道を使用した。

屋上に移設された後の警報機も再現。高所となるため、ジオラマ上に地面の表現がない。高架化してから約3年しか経っていないスラブ軌道を、白さを残して汚し表現しているところもポイント。福岡国際空港の近くということもあり、背景に飛行機も写っている。仕事の都合で制作時間に限りがあったとのことだったが、見事な作品に仕上がっていると感じた。

  • 西鉄天神大牟田線高架化区間の沿線マンションで保存されている旧踏切をジオラマに

  • スラブ軌道や背景も生かしている

兄妹と母親でジオラマ制作に挑戦したという家族も。中高生部門で出展した兄は、カーブする橋梁を制作した。荒川の波や川幅を参考に川を作り、「ミニジオラマベース」付属のスチレンボードの端材で橋脚の自作もしたとのこと。河原の再現に小石と線路向けのバラストを使い分けている点や、橋の側面に草を伸ばした点に魅力を感じた。

小学生部門で出展した妹さんは、「キツネと川」のタイトルで制作。狐の人形を使いたかったとのことで、野原の中、水飲みに来た、あるいは川を渡るかの場面を表現したという。川沿いに続く、警報機のない小さな踏切もまた、想像をかき立てるかのようだ。本人からも狐が好きなことがうかがえ、「楽しかった。かわいくできた」と感想を話していた。

母親が出展した作品は「パフェの谷」。親子で構想を練った際、フルーツを多数取り入れることを考え、それができるパフェの発想に至ったという。紙粘土を多用し、さまざまなフルーツを2人で作ったとのことだが、「鉄コンアプリ」の作品紹介では、「次第に親のほうが夢中になって作っていました」と楽しんでいた様子だった。

  • 橋梁のミニジオラマ。写真の裏側には釣り人も

  • 小川にやってきた狐の一場面

  • 紙粘土で作ったフルーツをカップに詰め、パフェを表現したファンタジックな作品

今年も多くの来場者で3日間ともにぎわった。会場に来られなかった参加校も、オンラインでプレゼンテーションを行うことで作品紹介に励んでいた。筆者も1人の鉄道模型好きとして、取材する中でも学生らの作品と熱意にわくわくしている。鉄道模型コンテストが終わった後も、地元で、あるいは関連する鉄道イベントで作品が個々に展示されることもある。それぞれの場所で、また多くの人の感動を生むことに期待したい。

なお、今回の記事で紹介できる作品には限りがあるため、ぜひ「鉄コンアプリ」(ブラウザでも閲覧可能)も参照してほしい。来年の出展や作品制作を検討している場合も、「鉄道模型コンテスト」関連サイトを参考にすると良いだろう。