藪木氏がフジテレビの番組で演出を手がけるのは、2018年に関連会社の共同テレビに出向(※その後フジを早期退職)して以来、実に7年ぶり。久々の古巣の現場は、「やっぱりここの血が流れてるんだなと思いました。技術職として入った新入社員時代から知っているおじさんたちもいっぱいいて(笑)、その人たちには1言えば10返ってくるし、“大変そうだからこれやっといたよ”と先回りしてくれたりもして。いろんな意味でやりやすかったです」と、全くブランクを感じなかったそうだ。
他局の番組を経験した上で、フジテレビに改めて感じたというのは、「笑いという文化に対する許容度」。
「今回、ネタの中に出てくるある言葉について、考査の担当部署に確認するというやりとりがあったんですけど、その返事に“面白さが削がれちゃうと申し訳ないのですが…”という一言が添えられていたんです。現場のスタッフではない人が、杓子定規に“これはダメです”とならずに、何とかしてくれようとしているマインドがあるのが分かって、それは良かったなと思いますね」
藪木氏がフジ在籍当時、冠スポンサーが付いたお笑い賞レースで、ある漫才師が競合ブランドの名前を出すネタを披露する際、営業サイドが冠スポンサーに相談してOKになったことがあった。このような要望は、局内判断で突き返されてもおかしくない話だが、「このネタで勝負したい」という芸人の思いと、「後悔なく戦ってほしい」という制作サイドの思いを尊重したその対応に、藪木氏は感激したという。
昨年末からの一連の事案を受け、「楽しくなければテレビじゃない」からの脱却を宣言したフジテレビだが、清水賢治社長が「フジテレビの良いところがたくさん詰まったスローガンだと思う」「これを全部捨てるわけではない」と説明しているように、バラエティ制作における大事なスピリットが生き続けているのを感じて、藪木氏は「うれしいなと思いましたね」と感慨深く話した。
リバイバルが続く中で考える番組の“魂”
この1年で、『内村プロデュース』(テレビ朝日)、『ウンナン極限ネタバトル! ザ・イロモネア』(TBS)、『マジカル頭脳パワー!!』(日本テレビ)など、各局で名バラエティのリバイバルが続いている。今回、『爆笑レッドカーペット』を復活させるにあたり、この流れについては、「単純に“昔がいいよね”という懐古主義はそんなにいいものではない気がしますが、“使い捨てはもったいない”、“せっかく考えて作ったものをもっと大事にしようよ”という思いはあります」と意識を語る。
そこで大事になってくるのは、番組の“魂”だ。
「主に広告収入によって成り立っている地上波放送において、バラエティは終わりのない戦いをずっと続けていくという不幸があって、同じものをやっていると慣れとかとか飽きがきて、刺激がなくなってしまう。それでどんどん形を変えて“改悪”と言われてしまうこともありますが、そうなってしまう番組は、根っこの部分があやふやになっていく場合が多いと思うんです。だから、何年かぶりに復活するにあたっては、演者さんかもしれないし、制作者なのかもしれないですが、ちゃんと“魂”のある人がやることが大事だと思います。『イロモネア』なんて、やっぱりよくできたシステムだなと思いましたし、そこにちゃんと熱を持ってやっていたからこそ、みんなが楽しそうに見えましたから」
今回の『爆笑レッドカーペット』は、幸いにも藪木氏に、MCの高橋克実と今田耕司というコアメンバーが再集結。進行は中村仁美アナ(当時)から山崎夕貴アナに代わったが、「◯◯さん、結果は? 満点大笑いで~す!」という心地よいおなじみの調子に違和感はなく、番組のテンポ感は当時のままだ。
「収録中は、どんどん“いいね、いいね”って感じになってテンションが上がっていきました。良い収録ができたネタ番組って、アドレナリンが出まくってその日は寝られないんですけど(笑)、今回はその感じがありました」と手応えを語っている。
『爆笑レッドカーペット ~真夏の最新ショートネタ60連発! 大復活SP~』出演芸人
相性はいいよね / アキラ100% / アルコ&ピース / アンガールズ&阿佐ヶ谷姉妹 / えびしゃ / オードリー / 蛙亭 / 狩野英孝 / キャツミ / キンタロー。 / クールポコ。 / くまだまさし / ぐろう / ゴー☆ジャス / コットン / ゴンゾー / ザ・パンチ / ジェラードン / シシガシラ / しずる / 信濃岳夫・金原早苗 / シューマッハ / ジョイマン / 庄司智春 / ジョックロック / 真空ジェシカ / 新鮮なたまご / スクールゾーン / スクラップス / ずん 飯尾和樹 / そいつどいつ / チェリー大作戦 / 超速バギー / チョコレートプラネット / ツートライブ / 友田オレ / ナイツ / なかやまきんに君 / ナチョス。 / ななまがり / ネルソンズ / ハイキングウォーキング / バッテリィズ / バローズ / ビコーン! / 5GAP / ファイヤーサンダー / ファンファーレと熱狂 / 藤崎マーケット / フルーツポンチ / ベルナルド / 満丸 / 柳原可奈子 / やまぐちたけし / ヤンシー&マリコンヌ / ゆってぃ / ラパルフェ / ラランド / ランパンプス
●藪木健太郎
1971年生まれ、三重県出身。早稲田大学卒業後、95年にフジテレビジョン入社。照明部から2002年にバラエティ制作に異動して『アヤパン』『力の限りゴーゴゴー!!』『笑う犬』シリーズ『新堂本兄弟』『爆笑ヒットパレード』などを担当。『爆笑レッドカーペット』のほか、『爆笑レッドシアター』『うつけもん』シリーズ『THE MANZAI(第2期)』『ENGEIグランドスラム』などのネタ・演芸番組を立ち上げ、18年から共同テレビジョンに出向。『ザ・ベストワン』『賞金奪い合いネタバトル ソウドリ~SOUDORI~』(TBS)、『両親ラブストーリー~オヤコイ』(読売テレビ)、『ザ・マスクド・シンガー』(Amazonプライム・ビデオ)などを制作し、22年3月末で出向元のフジテレビを退社。メイクスマイルカンパニー「Sunny Pictures(サニー・ピクチャーズ)」を設立し、『やりかたのウタ ~気になる HOW to ウタいまSHOW~』(中京テレビ)、『矢作兼のキズキの建築』(BSフジ)、『ザ・コメデュアル』(Netflix、Amazonプライム・ビデオ)などを制作。『とんねるず THE LIVE 2024 Budokan』の演出も手がけた。



