終活をテーマにした綾瀬はるか主演のNHK土曜ドラマ『ひとりでしにたい』(毎週土曜22:00~)。多くの人が直面する問題を描き、SNSで共感の声が続出している。本作の制作統括を務めている高城朝子氏にインタビューし、ドラマ化を決めた理由や作品に込めた思いなどを聞いた。
カレー沢薫氏の笑って読める終活ギャグマンガ『ひとりでしにたい』を大森美香氏の脚本でドラマ化した本作。綾瀬はるか演じる、未婚で一人暮らしをしている主人公・山口鳴海を中心に、よりよく生きて、よりよく死ぬための準備について描いている。
ドラマでは、孤独死、熟年離婚、老後資金問題、介護など、多くの人が直面する問題を描いており、SNS上では「将来について気になることがあれもこれも詰め込まれていて共感しかない」「主人公の鳴海にふりかかる悩める問題に多々共感なり」「まだ経験したことないことを共感しながら見れて人生の参考になる」「重いテーマだけど、コミカルな演出で楽しくみれる」などと共感の声が多く上がっている。
制作のきっかけは、20代の男性ディレクター・小林直希氏が「ドラマ化したい」と原作を持ってきたことだったという。高城氏も原作を読んでいて魅力を感じていたものの、「独身で子供がいなくて猫を飼っていて……自分とかぶるところがありすぎてしんどいだろうなと思い、ドラマ化は見て見ぬふりをしていました」と打ち明ける。
だが、20代男性の小林氏も将来に不安を感じていて、原作に惹かれたことに興味を抱いたという。
「彼は生まれた時から不景気で、気づいた時には老後2000万円問題などが耳に入って、20代だけど老後が怖いと思っていて、結婚できるのかということも悩んでいて。男の人ですら怖いんだなということが私の中で衝撃でした」
そして、原作を深掘りしていく中で、根底にあるものは「終活」だが、人生のさまざまな問題を描いていると感じたという。
「専業主婦のお母さんの雅子や、独身でバリバリ働いていた光子おばさん、介護している独身の同僚など、さまざまな立場の女性が出てくるのですが、『女性は子供を産まないといけないの?』『親の介護をするのは女性の仕事だと思われているの?』など、女性がやらなきゃいけないと思われているようなことについて、カレー沢先生が絶妙に混ぜ込んでいるんですよね。小林も原作を読んでハッとさせられる部分があったと言っていて、老後問題だけでなく、いろいろな問題を考えるきっかけになるのではないかと思い、ドラマ化したいと思いました」
高城氏は独身で猫を飼っており、さらに、姪っ子との関係も鳴海と光子に似ているところがあるという。
「姪っ子が子供の頃は毎週のように『朝子ちゃん』って電話がかかってきたり、手紙をくれていましたが、今、高校生で『ババア』とか言うんです(笑)。光子おばさんの気持ちもわかるし、鳴海ちゃんの気持ちもわかります」
高城氏は4人姉妹の末っ子で、3人の姉の存在がドラマ制作に大きな影響を与えているという。
「専業主婦の姉と働きながら子供を育てる姉がいて、専業主婦の愚痴もワーママの愚痴も毎日のようにLINEで入ってくるんです。母・雅子は専業主婦の2番目の姉を参考にしました」
3番目の姉は働くワーママで、3人の子供がいながら家事のほとんどを担っているという。
「ご飯を作っているのも、洗濯も掃除も彼女がやっているんです。怒っているわけではなく、当たり前のようにやっていますが、同じように働いていてなぜ家事を全部彼女がやらないといけないんだろうと。もちろん家事をする男性も増えていると思いますが、さらにこのドラマを見て世の中の男性たちに気づいてもらいたいです」