第38期竜王戦(主催:読売新聞社)は、藤井聡太竜王への挑戦権を争う決勝トーナメントが開幕。6月25日(水)には1回戦の谷合廣紀四段―山下数毅三段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、得意の四間飛車を駆使して攻め切った谷合四段が87手で勝利。2回戦進出を進めています。

若々しい仕掛けから

5組優勝の山下三段と6組優勝の谷合四段の顔合わせ。藤本渚五段や出口若武六段らそうそうたる面子を倒してランキング戦2年連続優勝(昇級)を決めている山下三段の快進撃に自然と注目が集まります。振り駒が行われた本局は谷合四段が先手となり四間飛車を選択。左銀を初期位置に置いたままにしたのが工夫で、右辺からの速攻に重きを置いています。

相手の言いなりでは不満と見たか、25手目にして後手の山下三段が動きます。角道を開けて宣戦布告したのはそれまでの持久戦の駒組みを放棄する強襲。相手の土俵と知りつつ攻めていく様に、観戦するファンも「こんな仕掛けあるの」「若すぎない?」と驚きを隠せません。これを受けた谷合四段が右辺の桂頭攻めで応じて盤上は一気に激しさを増しました。

竜王戦ドリームはいったんお預け

丁々発止のやり取りが一段落した局面は飛車の働きに大きな差がついており四間飛車有利。一局を振り返った山下三段が「仕掛けは暴発でした」と反省したように、ここからは谷合四段の一人舞台となりました。2筋の桂を拠点として打ったタタキの歩の王手が大きなクサビ。いわゆる「おかわりの攻め」が実現して後手玉は一気に寄り形に持ち込まれました。

終局時刻は18時44分、最後は自玉の詰みを認めた山下三段が投了。一局を振り返ると仕掛け以後は後手にチャンスはなく「比較的ちゃんと指せた」という谷合四段の感想通りの快勝譜となりました。勝った谷合四段は2回戦で石田直裕六段と対戦します。また、ランキング戦を5連勝で駆け抜けた山下三段の快進撃はいったんストップ。来期の竜王戦は4組からの参戦となります。

水留啓(将棋情報局)

  • 谷合四段は「目の前の一局一局を大切に、自分らしい将棋を指したい」と2回戦以降への意気込みを語った(撮影:編集部)

    谷合四段は「目の前の一局一局を大切に、自分らしい将棋を指したい」と2回戦以降への意気込みを語った(撮影:編集部)