マウンテンバイク向けテクノロジーの最高峰、シマノ「XTR」が待望のフルモデルチェンジを遂げ、電動ワイヤレス変速の「M9200」シリーズとして登場。早くも大きな注目を集めている。

シマノは6月10日、メディア向け説明会と試乗会を長野県・富士見パノラマリゾートで実施。そのアップデートポイントの詳細を改めて解説した。今回は実際に試乗した感想とともに、新型「XTR」の魅力についてお届けしたい。

新型XTR「M9200」のアップデートポイントを解説!

2018年に登場したM9100系新型以来、約7年ぶりにフルモデルチェンジを果たしたシマノのコンポーネント「XTR」。主な変更点としては、フルワイヤレスのDi2(電動変速)プラットフォームの採用、タフなドライブトレイン構造の設計、直感的に操作できるコックピット 、一貫した性能を発揮するブレーキシステムなど、多岐に渡る。

この日のプレゼンテーターを務めたシマノセールスの島田真琴さんは、「新しいXTRは、世界最高アスリートがさまざまなレースで勝つために必要な“自信”を提供するための強さとスペックを備えています」と胸を張る。

実際にXTR「M9200」シリーズを搭載したマシンが、こちら。

島田さんに直接、バイクを見ながらアップデートポイントについてうかがってみた。

「まずはこのリアディレイラー。ものすごく頑丈で、走行中に岩にヒットしたときもディレイラーが動くことで本体を保護する機能を備えています。通常、この部分が壊れてしまうと走行も変速もできなくなり、山の中から帰ってこられなくなってしまうかもしれない。なので、ここを頑丈に作り、最後までライディングできるようにしました」(島田さん)。

「ディレイラーが動く」。画期的なシステムなので想像しにくいかもしれないが、実際に動かしてみると……

上下にぐいっと捻れる感じ!

「競合他社のディレイラーは、フレームに直接取り付けているので、上下に動かないんですよ。でも、このXTRは障害物にあたっても、衝撃をいなしてくれるんです。岩などに当たっても滑りやすい形状になっているのもポイントですね」(島田さん)

今回からフルワイヤレスのDi2(電動変速)プラットフォームを採用しており、この内部にはモーターとギアのユニットが入っている。が、それでもこのリカバリー機能を中心とした堅牢性によって、耐久性のほうはバッチリ確保できているということだそうだ。

さらに、Di2のバッテリーはなんと内蔵式を採用!「競合他社の場合、バッテリーは外に付いています。確かにそのほうが外しやすいんですけど、どこかにぶつけてバッテリーを落としてしまったら大変。これは完全にディレイラーの中に入っているので、レース中にバッテリーを落とすこともありません」(島田さん)

続いてはコックピットのシフト部分。シフトスイッチはパドル(ボタンの向き)を4方向に調整可能で、ライダーの好みやポジションに合わせて設定できる。

「ライダーの手は千差万別。工具を使うことで、お好みのポジションにシフトレバーを置けます。レース中はものすごく激しい環境でシフト操作をしなければいけないので、レバーの位置は重要。少しでもストレスなく、直感的に操作できるようこの仕様にしました」(島田さん)

ブレーキ部分も大きな進化を果たした。「一貫した性能を発揮する、安定したブレーキシステム」になっているという。

「低粘度のミネラルオイルを採用したのと、ピボットポイントをより人間工学に基づいたものに変更しています。人間がブレーキをかけるときの指の動作って、本来は『外に引く』感じなんです。でも、これまではレバーを『内側に描く』イメージでした。つまり、逆だったんですけど、今回からは自然な動きに沿ってブレーキをひけるようになりました」(島田さん)

  • ゲストとして登場した永田隼也選手(左)と清水一輝選手(右)

この日はシマノがスポンサーを務めるプロマウンテンバイクライダーも参加。清水一輝選手はブレーキについて、「まず、見た目がめちゃくちゃ格好良くなりました。特にキャリパーの削り出し感などはかなり好みです」とヴィジュアルを評価。「あとはレバーが手にフィットしている感覚もあります。ブレーキングの方の制動力も上がっているので、例えば、コーナーの手前でギリギリまでブレーキングを我慢しても、うまくコントロールできる設計になっていると思います」と性能を称えた。

永田隼也選手は「ペダルを踏んだときの剛性感やたわみがダイレクトに伝わる感じがすごくいい。ブレーキのコントロール性もめちゃくちゃよくなりました。今日は雨なので滑りやすいはずですが、だからこそ握ったときにタイヤをロックする、しないが、すごくわかりやすいと思います」と主張。さらに、「もともとロードバイクでDi2は使っていましたが、今回いよいよマウンテンバイクの世界にDi2がきたということで、すごく楽しみですね」と期待を口にした。

XTR「M9200」に実際に乗ってみた!

永田選手が述べたとおり、この日は生憎の雨。前日から延々と降り続いていたせいで、富士見パノラマリゾートのフィールドは泥やぬかるみだらけだ。マウンテンバイクの素人からすれば、最悪と言っても過言ではないコンディションである。

で、リフトで山を登り、マウンテンバイクで初めて初心者コースを走ってみたのだが、最初はもうとにかく怖いのなんの。「すべるんじゃないか」「転ぶんじゃないか」という恐怖心に包まれたが、しばらく走っているうちに……「あれっ? これ、すべらないんじゃない?」と徐々に確信するに至る。

ブレーキ音はするが、雨にも関わらず至ってキビキビとブレーキがかかるし、一向に転ぶ気配は皆無。一度、木の根にハンドルを取られそうになったが、それ以外は泥も石もまったく問題なし。鋭利なカーブのときは、ほぼゼロスピードまで一気に減速してくれるし、シフトもDi2でサクサクと動いてくれるので、加減速も自由自在だ。

最終的には、衝撃がありそうな路面では立ち漕ぎをしてショックを逃がしたり、視界が開けた場所では思い切ってスピードを出してみたりと、雨を忘れて楽しむことができた。スゴいぞ、XTR「M9200」……!!

素人にとって命綱でもあるブレーキへの安心感がとにかく高かった点が素晴らしく、とにかく頼もしかった。ちなみに、モデルチェンジ前のブレーキと触って比較してみたが、確かに新型のほうが動かしやすい気がしたことも付け加えておきたい。

今度は晴天で思いっきり遊んでみたい。そう思える新コンポーネントであった。機会があればぜひ、試してみて!