また、海軍に志願した千尋の心境は「すごく理解できた」と語る。

「千尋はすごく空気を読んで生きてきた人物で、他の学生が『俺も志願する』と言って、『柳井、お前はどうなんだ?』と聞かれて『志願する』と自分の口から言っている。志願することがかっこいいとされていた時代だと思うので、千尋としての信念はありつつも、流されるというか、志願する方にいくだろうなと理解はできました」

同シーンを終えたときの心境について、「やり切ったという感じは全くなかったです。涙は必要だったのか、本当にこれでよかったのかという思いがありますし、放送されて皆さんの反応で『よかった』と思うのか、ずっと不安があります」と打ち明け、「本当に最高のチームでやらせていただいて、僕も全身全霊で挑んだシーンなので、皆さんに届けばいいなと思っています」と今の思いを明かす。

戦後80年の節目に放送されている本作。現代を生きる若者である中沢は、千尋のように戦争で若くして亡くなる人が大勢いた当時について、どのような印象を抱いたのか。

最近、祖父の戦時中の手帳や写真を見せてもらう機会があったそうで、そこには笑顔の写真もあり、「なんで笑っているんだろうなという思いがありましたが、戦争に行くことが良しとされていた時代ではあるので」と率直な感想を述べた上で、「なかなか難しいですが、こうやって考える時間があることが大事なんだろうなとすごく思います」と語る。

続けて、「若い世代にも『あんぱん』を見て戦争を多少なりとも感じていただいて、戦争に対する思いを考える時間を与えるきっかけになる作品になればいいなと思いますし、今、世界でまた戦争が起きていますが、そういうところにも意識を向けるきっかけになる作品になればいいなと思います」と願いを込めた。

■中沢元紀
2000年2月20日生まれ、茨城県出身。2022年、WEB CMドラマ『メゾンハーゲンダッツ ~8つのしあわせストーリー~」で俳優デビュー。2023年10月期のTBS系日曜劇場『下剋上球児』でエースピッチャー・犬塚翔を演じ注目を集めた。そのほかの主な出演作は、ドラマ『ナンバMG5』(22/フジテレビ)、『埼玉のホスト』(23/TBS)、『ひだまりが聴こえる』(24/テレビ東京)、映画『沈黙の艦隊』(23)、『さよならモノトーン』(23)、『ファストブレイク』(24)など。

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