シークレットミュージアム実行委員会は6月21日、常設ミュージアム「シークレットミュージアム Yanai Yamaguchi」を山口県柳井市にオープンする。
伝建地区の名建築を活用した「分散型ミュージアム」
山口県柳井市の「白壁の町並み」は「国の重要伝統的建造物群保存地区」に選定された江戸時代の商家の町並みで、かつて北前船貿易で栄えた港町でもある。その複数の商家の建物を「ひとつのミュージアム」として活用する本プロジェクトは、国内でも初の事例となる「伝建地区を活用した分散型のミュージアム」。とりわけユニークなのは「受付以外、展示会場の場所が明かされないミステリアスな運営」で、国内で初のスタイルとなる。
ゲストは唯一、場所が明かされている受付場所「木阪賞文堂 白壁店」に集まり、店の番頭から次の見学地の場所を告げられる。来場者は見学後も場所を一切明かさないことを条件に参加するため、伝建地区のどこに展示空間があるのかはわからない。また「今まで一般公開されていなかったプライベート空間」にも入ることができ、一歩踏み込んだ観光体験に出会える。
チケットは、数量限定かつ日時指定ありのWeb先行チケットと、数量限定の当日受付販売の2種類がある。プランとしては「謎解き+ミュージアム見学」と「ミュージアム見学のみ」の2種類を用意。滞在時間や興味に合わせ、自由に楽しみ方を選択できる。料金は、「見学のみ」が2,300円、「謎解き付き完全版」が3,300円である。謎解き付き完全版の場合、途中で立ち寄るカフェにて謎解きが発生するため、ワンドリンクのオーダー(別途料金)が必要となる。
開催は常設展示形式で、土日祝日に実施されるが、季節によって変動する。雨天でも開催され、開催時間は11:00~16:00まで。謎解きの最終出発時刻は13:30、見学のみの最終入場時刻は15:00である。なお、ミュージアムの開催日時は予告なく変更される場合があり、最新情報はイベントWebページまたは関連SNSでの確認が推奨されている。所要時間は、見学のみが約1時間、謎解き付き完全版が約3時間とされている。
様々な仕掛けが楽しめる「謎解き要素」
同ミュージアムでは、東京都内で活躍する謎解き制作会社とミュージアムのキュレーターがコラボレーションした「本格的な謎解き体験」が楽しめる。この謎解きのためだけに制作された隠し扉を開けて、秘密の部屋に入ったり、様々な仕掛けがつまった特製の冊子を用いてスパイ映画さながらの謎解きに挑戦する。秘密の暗号を入手して町の店員と暗号のやり取りを楽しんだりと、映画の主人公になったような没入感を味わえる内容となっている。
さらに運営キャストが、物語を語る"ストーリーテラー"として登場し、セリフを通して来場者を物語の世界へと誘う。例えば、来場したゲストに対し、「貴重な文化財を見学するに足る人物かどうか」を試す運試しの勝負を挑んできたり、さりげなく謎解きに必要なヒントを出してきたりと、物語体験をより一層盛り上げる。
全国から集められたユニークな作品群
本ミュージアムのキュレーションは、東京で10年続く文化財を舞台にした日本のあかりの企画展を立ち上げ、ロンドンでのあかりのアート展示、東京都主催のイルミネーションイベントなどのプロデュース経験を持ち、柳井市の人気コンテンツ「柳井金魚ちょうちん」を東京タワーやすみだ水族館、イギリスでの初展示に結びつけたことで柳井市ともゆかりのある関東の団体「日本あかり博」が担当する。
今回はその代表・芳賀尚賢氏が館長を務める。これまでの開催経験の中から選りすぐりの出展者を集め、柳井市の各所に展示する。
分散型ミュージアム×謎解きで町の周遊を
山口県の「文化財を活用した観光コンテンツ造成モデル事業」に採択されている本プロジェクトは、全国的な人口減少・少子高齢化が進む中で、「文化財を次世代に継承するための積極的な活用」と、「収益を得ながら適切な時期に保存修理を行う仕組みづくり」のモデル事例の創出を目的としている。
本プロジェクトでは、可能な限り町との連携を図るよう設計されており、「謎解きの立ち寄り先」や「無料で見学できるパブリック展示」なども実施する。200年前に柳井市で誕生した甘露醤油を今も作り続ける老舗の佐川醤油店や、1年間の来場動員目標をわずか半年で超えた人気の「みどりが丘図書館(柳井市立柳井図書館)」などがその会場となり、ミュージアムに入場せずとも本プロジェクトに参加することが可能である。