より深く理解できたという『アンパンマン』が長く愛される理由については、「『アンパンマンのマーチ』の歌詞に象徴される」と語る。

「人間にとって大切なことを、深いけれども優しい言葉で表現しているのがあの歌で、『アンパンマン』の根底にはそういうものがある。いきなり『アンパンマン』が生まれたわけではなく、その前にいろんな先生の経験があったということが、わかってはいましたが、より深く、理屈ではなく理解することができたと感じます」

めいけんチーズ役で放送スタート時から『アンパンマン』のレギュラーとなり、カバお、かまめしどんなども担当。そして、2019年から増岡弘の後任としてジャムおじさんの声も務めている。

山寺は「ジャムおじさんのセリフにやなせ先生の気持ちが直に表れることが多い」と言い、「『ひもじい思いをしている人を助けるのが僕はうれしいんだよ』というのは『アンパンマン』の基本で、先生が本当に思っていること。戦争を通じて正義は逆転すると思ったという思いがジャムおじさんに反映されているので、よりしっかり演じなきゃなと思うようになりました」と気を引き締める。

『あんぱん』のクランクアップ時は、カバおの声で締めくくったという。

「何を言ったかは全然覚えてないですけど、カバおが一番しゃべりやすいんです。一番自分に近いというか、カバおが大好きで、昔から何か面白いことをしゃべるときはカバお。思い入れが強いです」

脚本の中園氏は、『あんぱん』の登場人物に『アンパンマン』のキャラクターを当てはめて楽しんでいると明かしているが、座間先生はザーマス・ボンドとのこと。山寺は「座間先生を演じる前から『ザーマス・ボンドが大好き』と言っていました。ジェームズ・ボンドのパロディでザーマス・ボンド。接着剤で、何でもくっつける。かっこいいんですよ」とうれしそうに話していた。

■山寺宏一
1961年6月17日生まれ、宮城県出身。1984年、声優を目指して東京俳優生活協同組合の養成所に入所し、1985年、OVA『メガゾーン23』で声優デビュー。以降、声優として数々のアニメのキャラクターや洋画の吹き替えを担当。俳優としても、映画『あさひるばん』(2013)、連続テレビ小説『おかえりモネ』(2021)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022)など、多数のドラマや映画に出演している。

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