3番目に注目されたシーンは20時22分で、注目度74.4%。蔦重が明け方に捨吉を訪ねるシーンだ。
行方不明になって早5年、ようやく唐丸と思われる男・捨吉を見つけ出した蔦重。しかし、捨吉は自分は唐丸ではないとしらばっくれていた。納得のいかない蔦重が早朝に捨吉の長屋を訪ねると、捨吉が半裸でうつぶせになり倒れている。蔦重が慌てて駆け寄り声をかけると、捨吉はすぐに目を覚ました。
押し込みでも入ったかと尋ねる蔦重に、捨吉は手荒い客をとったことを話す。「あのよ…この暮らしがいいのは、早く死にてえからか?」と切り出す蔦重に、「聞いてどうすんです、そんなこと」と、捨吉は投げやりに答えた。「俺ゃ、お前がいなくなって後悔したんだよ。いざとなりゃどこの誰だか分かんなくて…何でもっとしつこく聞いとかなかったのかって」と苦渋の表情を滲ませる蔦重に、捨吉は心を動かされた。
蔦重のファインプレーが捨吉を救う
ここは、捨吉のただ事とは思えない状況に視聴者の関心が集まったと考えられる。
蔦重は捨吉が身体を売っていると聞かされても動揺しなかったが、自宅で半裸で倒れている姿にはさすがに焦っていた。捨吉の自暴自棄な態度は、罰を受けて楽になりたいという気持ちの表れなのではと考えていた蔦重は、その考えに確信を持った。
SNSでは、「捨吉って名前自体が、自分なんてどうでもいいって感じが伝わってきて苦しい」「どう見ても塩梅を心得ている客じゃなかったよな」などの投稿が寄せられている。あんな生活を続けていたら、捨吉は本当にいつか死んでいただろう。ファインプレーの蔦重だった。
実は当時の江戸は女性よりも圧倒的に男性が多く、男余りの状態だったため、男性専門に体を売る男娼「陰間(かげま)」が非常に需要があった。もともと、僧侶・貴族・武家の間で流行っていた衆道は、江戸時代に入ると庶民にも広がっていった。陰間茶屋という陰間が売春をする居酒屋・料理屋も存在していた。
作中の男色家といえば平賀源内(安田顕)が真っ先に思い浮かぶが、史実では源内は『江戸男色細見菊の園』『男色評判記男色品』といった案内書を発行している。それによると一刻(約2時間)で1分(4分の1両)、1日買い切りで3両かかったそうだ。1両が現在の価値で約10万円なので、約2時間で約2万5千円、1日買い切りで約30万円になる。
ついに蔦重グループに加わった捨吉・喜多川歌麿を演じる染谷将太は、トイズファクトリーに所属する東京都出身の32歳。蔦重役の横浜流星より4歳年上だ。大河ドラマは2003年『武蔵MUSASHI』、2010年『龍馬伝』、2011年『江~姫たちの戦国~』、2020年『麒麟がくる』に続いて6度目の出演となる。『麒麟がくる』での織田信長の好演は記憶に新しい。『べらぼう』ではどのような歌麿を見せてくれるのか期待が高まる。
ちなみに染谷の配偶者は、2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で主人公・北条義時の3番目の妻・のえを怪演して話題を集めた菊地凛子だ。