今春ドラマで話題性・実績ともにトップクラスの作品と言えば、『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)で間違いないだろう。同作は11年ぶりのシリーズ3作目であり、脚本家・岡田恵和の手がける、穏やかながらもシビアな世界観と会話劇に支持が集まっている。

その岡田の歴代作品リストを見て「これはタイムリー」と感じたのが、2013年放送の『スターマン・この星の恋』(カンテレ・フジテレビ系 ※FODで配信中)。主演は事故・事件で渦中の広末涼子であり、第1話に彼女が演じる「3児のシングルマザーが交通事故を起こしそうになる」というシーンもあった。さらに宇宙人をめぐる物語は3月まで放送された『ホットスポット』(日本テレビ系)と似ている。

当時、朝ドラ『あまちゃん』(NHK)が放送中で福士蒼汰と有村架純がかけもち出演したことで注目を集めながらヒットには至らなかった。むしろ福士と有村が目当ての視聴者からは酷評も目立ったが、令和の今なら岡田脚本らしい穏やかで心に染みるような作品に見えてくる。

ドラマ解説者の木村隆志が、改めてその魅力を掘り下げていく。

  • 『スターマン・この星の恋』(C)関西テレビ/ホリプロ

    『スターマン・この星の恋』(C)関西テレビ/ホリプロ

岡田脚本らしい穏やかな人間模様

主なあらすじは、「夫に逃げられ、3人の息子を育てているシングルマザー・宇野佐和子(広末涼子)が、ある日、瀕死の青年(福士蒼汰)に遭遇する。佐和子はその美しさに一目惚れして助けたが、目覚めた彼は記憶喪失だった。彼女は青年に“星男”と名付け、『子どもたちの父親』とウソをついて同居させてしまう。疑似家族生活がスタートすると、不意に星男は不思議な力を見せていく……」。

全編を通じて表現されているのは、佐和子をめぐる家族、友人、職場の人々などの穏やかな人間関係。この点は、朝ドラ『ちゅらさん』『ひよっこ』(NHK)、『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)、『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジ系)、『最後から二番目の恋』シリーズなどで心温まる人間模様を描いてきた岡田脚本らしく視聴者を癒やしていた。

特に佐和子と長男・大(大西流星)、次男・秀(黒田博之)、俊(五十嵐陽向)の日常は微笑ましく、徐々に星男との距離が縮まっていく様子も心地よい。さらに佐和子の親友でスナックママの須多節(小池栄子)と常連客たち、勤務先であるスーパーマーケットの重田信三(國村隼)、臼井祥子(有村架純)、安藤くん(山田裕貴)、重田の古女房(角替和枝)らのキャラクターも牧歌的なムードを醸し出していた。

そしてもう一つ、岡田脚本の醍醐味として欠かせないのが、主人公のピュアな恋愛模様。夫に逃げられ、子育てと仕事に忙殺されるシングルマザーが一瞬で恋に落ち、忘れかけた恋心に火がつくシーンに年齢を超えたみずみずしさを感じさせられる。しかも佐和子は星男にウソをついた罪の意識こそあるが、結局「好き」「一緒にいたい」という気持ちが勝ってしまう。一方の星男も佐和子らへの思いを自覚していく展開なども含め、スローな恋の進展は希少価値が高い。