大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で“伝説の花魁”五代目瀬川(花の井/瀬以)を演じた小芝風花にインタビュー。6日放送の第14回「蔦重瀬川夫婦道中」で、愛する蔦屋重三郎(横浜流星)との別れを決断した瀬川をどのような思いで演じたのか話を聞いた。

  • 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』瀬川役の小芝風花

江戸時代中期の吉原を舞台に、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く本作。小芝は大河ドラマ初出演にして、蔦重の幼なじみで、伝説の花魁の名跡“瀬川”を継いだ花の井という重要な役どころを務めた。

瀬川は鳥山検校(市原隼人)に身請けされて吉原から出ていくも、第14回で高利貸しをしていた検校に裁きが下され、蔦重を思い続ける瀬川の幸せを願って検校は離縁することに。蔦重と瀬川は共に本屋を切り盛りする未来を思い描くも、検校を恨む女郎に襲われた瀬川は、多くの人たちから恨まれる存在だと思い知る。そして、自分は「吉原を人々が憧れる場にする」という蔦重の夢の邪魔になると考え、文を残して吉原を去った。

ずっと思い続けてきた蔦重と結ばれるという未来を捨て身を引いた瀬川。小芝はどのような解釈で演じていたのだろうか。

「検校という職業はいろんな人の恨みを買っている仕事でもあって、その妻というだけで、自分たちからむしり取ったお金で贅沢しているというレッテルを貼られてしまう。私みたいないわくつきがいると蔦重の夢の妨げになってしまうというのを、蔦重にもらったいろんな花魁の姿が載っている本を見て、みんなが笑い合っている蔦重の夢が詰まったこの姿は、私がそばにいると叶わないことなのだと察するんです」

続けて、「最初は蔦重とやっと結ばれて一緒になるために荷造りしていたのに、離れるための荷造りに変わるというのがすごく苦しくて、最後に文を残すのですが、涙が止まらなかったです」と明かす。

「『用意はい!』となる前から、カットがかかった後も涙が止まらないぐらい、すごく苦しかったです。『お前が一緒にいたら蔦重の夢が叶わない』『離れろ』と誰かに言われたわけではなく、10年以上も思い続けた人と一緒になれる道があるのに自ら身を引くので、その思いが苦しかったです。この苦しい思いと、一緒になりたい思いを無視してでも、蔦重の純粋に本を作るのが好きで、吉原をよくしたいと笑っている姿がすごく好きだから、その蔦重の夢を守るために身を引いたのだと思います」

小芝自身は、瀬川の選択をどのように思ったのか。

「蔦重もですが、瀬川は周りの人のために自分を犠牲にできる。だからこそ、周りも応援してくれるし、視聴者の方もすごく瀬川の幸せを願ってくれているのは、瀬川自身が、自分がどんなにつらくても、人の幸せやこの町をよくしたいと思って行動できる人だからだと思います。最善の選択だったかはわかりませんが、瀬川にできる唯一の蔦重の夢を守る方法だったのだなと思います」

瀬川が鳥山検校に「重三はわっちにとって光でありんした」と打ち明けるシーンもあったが、瀬川にとって蔦重は「光」だったと小芝は語る。

「身を削らないといけないところに身を置かれて、逃げることもできず、ただただ自分が削られていく中で、きっと重三という存在だけが光で、この人に出会えた、出会うために私はここにいるんだとまで思える存在だったと思います。そして、重三の夢が自分の夢にもなっていく。こういう風になったらいいなと、外の世界に連れ出してくれる人でもあったと思うので、本当に光だったと思います」

そして、蔦重の魅力について「真っすぐなところ」を挙げた。

「自分が得をしようということではなく、本屋さんを作って豊かにしたいのも、自分がお金持ちになりたいのではなく、吉原の人に還元するためにという根本がブレないところがいいし、瀬川からしても、一番近くで見ているからこそ、自分たちの要望を理解してすぐに叶えようとしてくれるというのが、蔦重しかできないことだったのだと思います」