三味線も「早く教えていただきたい」と前のめりで取り組んだという。
「三味線がどのように日本で始まって、どのように扱われてきたのか、歴史を細かく教えていただいて、概念が変わりました。一番印象に残っているのは、鎮魂の精神が根付いているものだということ。そういうものをイメージできるようなお芝居ができたらいいなと思いながら演じさせていただきました」
また、「三味線はある意味、検校の逃げ道でもあった」と言い、「自分の中の悲しさなどを三味線に落とし込んでいるのかなと思います」と語った。
そして、鳥山検校役においては「迷い続けることが役作り」だと感じたという。
「本当にこの役は最後の最後まですごく難しくて、悩み続ける様が鳥山検校と重なって、その様をお客様に感じていただけることが一番いいのかなと思い、何度も何度も自分の中で構築した概念を壊して、また構築して、いろんな角度から作りました」
一番迷ったのは「瀬川との距離」だという。
「すべて受け入れるのではなく、どこかで鳥山検校は信じられない心を持ちながら、それでも寄り添っていきたいという、自分の中の矛盾を表現するために、ぎこちない距離感を心がけました」
悩みながら演じた鳥山検校役が自身にとってどんな経験になったか尋ねると、「一生忘れられないと思います」としみじみ。
「どんなに自分が寄り添おうとしても寄り添えない役があるということが自分の中で一つ答えになり、人の気持ちは100%理解できないんだと。それは鳥山検校の気持ちでもありますし、私が鳥山検校に寄り添おうとしても100%理解できない。でもはじめの1%を持とうとする気持ちが役者として大事なんだなと思いました」
そして、「偉人はこうであってほしいというロマンが描かれているものが時代劇だと思います。この令和に『べらぼう』で1700年代後半の時代を描くことによって、今を生きる手立てになるのではないかと。この作品を見て現代を生きる方たちの生活が豊かになったり、生活や文化、学識など、いろんなものを後押しできるような希望の光となる作品になればいいなと思っています」と願いを込めた。
1987年2月6日生まれ、神奈川県出身。1999年に芸能活動を開始し、2001年に映画『リリイ・シュシュのすべて』で初主演を務める。2004年には『偶然にも最悪な少年』で日本アカデミー賞新人賞受賞。主な作品に、映画『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』『ボックス!』『ヤクザと家族』、ドラマ『ウォーターボーイズ2』『ROOKIES』『おんな城主 直虎』『鎌倉殿の13人』、ミュージカル『生きる』など。近年は主演を務める『おいしい給食』シリーズが大好評。最新作である劇場版『おいしい給食 炎の修学旅行』が今年公開予定。
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