桜やチューリップなどの花々が咲き始めると、毎年思い出し、もう一度見たくなるドラマがある。
その作品名は2008年に放送された中井貴一主演『風のガーデン』(フジテレビ、※FODで配信中)。放送の約2年前から北海道・富良野に作られたイングリッシュガーデンは美しさの中にはかなさを感じさせる見事な仕上がりだった。
今春は中井が『続・続・最後から二番目の恋』(フジ)で主演を務めるというタイミングの良さもあり、あらためてここで作品の魅力を掘り下げていきたい。
重いテーマとさわやかな映像美
主人公は東京の高林医大病院で麻酔科准教授を務める白鳥貞美(中井貴一)。麻酔学界の権威である貞美は6年前に父・貞三(緒形拳)から勘当されて以来、故郷の北海道・富良野には帰っておらず、そこで暮らす娘・ルイ(黒木メイサ)や息子・岳(神木隆之介)に会っていなかった。ある日、貞美は姉・冬美(木内みどり)の誘いで富良野に帰ることになるが……。
なぜ貞美は父から勘当されてしまったのか。なぜ2人の子どもと離れて住まなければいけないのか。それらは早々に明かされたように重要ではなく、メインテーマは「どう生きて、どう死ぬのか」だった。
貞美は緩和医療の専門家であり、貞三は訪問医として終末期医療に従事している。そして、ともに仕事で生死と対峙(たいじ)しているだけでなく、プライベートでも向き合うことになっていく。末期がんの患者などが多数登場するほか、知的障害、親子の断絶や不倫の描写も含め、重いモチーフが多数扱われた。
その重厚感はまさに倉本聰の脚本と言っていいだろう。「倉本聰の脚本で北海道が舞台のヒューマン作」と言えば『北の国から』(フジ)を思い出すが、『風のガーデン』はまるで集大成のように一歩踏み込んだ印象がある。
そして倉本聰の作品らしいのは重いテーマを扱いながらも、人間の温かさや映像美を交えることで、視聴者にとって見やすいドラマに仕上げていること。作風そのものが緩和医療のようであり、シビアな状況が増す終盤にさわやかさを感じさせられることすらあった。なかでも物語が、貞美の亡き妻が遺した美しいブリティッシュガーデンとシンクロするクライマックスは必見だ。
特筆すべきは、すべての演出を宮本理江子監督が手がけたこと。通常の連ドラは3人程度で演出するが『風のガーデン』は全11話を宮本が撮り切ったことで、3~4部作の劇場映画を見ているような統一感があった。宮本監督は『最後から二番目の恋』でもチーフ監督を務めており、同作でも「老い」というシビアなテーマを映像美で和らげている。
ちなみに宮本の父は脚本家・山田太一さん。亡き山田さんは倉本聰と同じ1934年生まれであり、昭和を代表する名脚本家をつないだ作品であるところも印象深い。
