長期にわたる減量で役作りした中井の熱演に引き込まれたのは間違いないが、同等レベルの感動をもたらしたのは緒形拳さんの静かな熱演。
1話冒頭、放送4日前に亡くなった緒形拳さんへの追悼メッセージが映し出された。富良野の美しい景色を挟んだ約2分後、役を演じる生前の姿が映され、涙腺を潤ませられる。さらに医師として診ている患者を演じていたのが大滝秀治さんだった。ともに名優かつ故人だけに、ここでもグッときてしまう人もいるのではないか。
緒形さんが主人公の父親という事実上の準主役を最終話まで演じられたのは、撮影をかなり前倒しで終えていたから。「風のガーデン」のベストコンディションに合わせて撮影を進めたことが緒方さんの遺作にふさわしい感動的なクライマックスにつながったことから、「奇跡のドラマ」と言っていいかもしれない。少なくとも“涙活”にすすめられる作品であることは確かだ。
貞美の幼なじみで元恋人を演じた石田えり、貞美とかつて不倫関係にあった看護師を演じた伊藤蘭、末期がんに冒されて息を引き取り貞美の夢に現れる男を演じた奥田瑛二。さらに平泉成、小野武彦、有園芳記、菅原大吉らベテラン俳優の存在感が光る作品としても見応えがある。
一方、若手では、よさこいソーランに没頭しながら恋の悩みを抱えるルイを演じた黒木メイサと、知的障害を抱え父の存在を知らずに生きる岳を演じた神木隆之介のみずみずしい姿が際立っていた。
平原綾香の主題歌「ノクターン」や挿入歌「カンパニュラの恋」も含め、繊細に丁寧に作られた作品であることは間違いなく、だからこそ人々の心を打つ作品になったのだろう。それは放送後から現在までロケ地となった「風のガーデン」を訪れる人々の多さが裏付けている。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。