――劇中では、先ほど「謎めいたワイン」と言われた「一杯を飲み干すと、人生の終わりにどうしても会いたかった人に会うことができるワイン」があります。人生の終わりはまだまだ先の宮崎さんですが、これまでの人生の中でもう一度会いたい人は、どなたですか?
難しいですねえ…。高校1年生の時の担任の先生に、ちょっと会ってみたい気がします。当時はテストの順位を発表していて、ちょっと成績が下がるとゲンコツをもらうような時代で(笑)。でも時々良い点を取った時に「先生、悪い時にゲンコツなら、良い時は頭をなでてください」って甘えたら本当になでてくれたりして、すごくいい先生だったんですよ。生物の先生で、そのおかげで生物が大好きになって、熱血で皆から慕われて、私は途中で転校したんですけど、その後も進路の相談に乗ってくれたり。もう亡くなられてしまったので、「今おかげさまでこうやって仕事をして幸せにすごしています」と、一番報告したい方かなと思いますね。
でも、会いたい人を1人に絞れる人生というのは、素敵なことかもしれないですね。一途にその人のことを思い続けて生きてきたということじゃないですか。それだけ心を砕いた人がいて、しかもこのドラマでは解決されるのがいいですよね。ただ、なかなか絞れないですよ。
――介護スナックのお客さんも、考えに考え抜いて選んでいるのかもしれませんね。
そうなの。なんなら昔の自分に会いたいというのもありますね。小一時間説教して、これからこうなるんだよって言ってあげたいです。
――いつ頃のご自身にお会いしたいですか?
中学生かなあ。「もうちょっとちゃんと勉強しなさい」とか言いたいですね(笑)
――もし中学生の自分に会えたら、同じ道を勧めますか?
分からないですね。でも、結局同じことになっていくのかな。
――もっと勉強していれば、もっといろんな選択肢があったのかもしれませんよね。
ちゃんと真面目に勉強してればね(笑)。でもね、同級生で成績のいい人たちがいっぱいいて、それぞれいろんなところに就職したんですけど、この年齢になるとみんな定年退職を迎えているんですよ。そう考えると、定年がないこの仕事に就いたのは、すごく幸せだったなと、今になって思います。
それにこの仕事は、自分じゃない人生をいっぱい味わっているので、いわばあのワインを新しい役を演じるたびに飲んでいるようなものですよね。いろんな人に会えて、いろんな自分に会えるのですから。