――坂田が生田さんでよかったと、監督が具体的に感じた瞬間がありましたら教えてください。
田中監督:冒頭、家族が殺されて、悪役たちに対して「お前ら全員殺す」と言うときの表情はしびれましたし、あることをきっかけに体が動くようになるシーンがあるんですけど、そんなにディレクションしてなかったのに完璧に演じてくれて、あの覚醒シーンを撮ったときに「この映画は面白くなりそうだな」と確信しました。
――生田さんはその覚醒シーンに関して、かなり考えて演じられたのでしょうか。
生田:台本にもなくて現場で通達された演出だったので、その場で考えて、わからないからちょっとやってみようと思ってやったらうまくいったという感じでした。
田中監督:体が動き出してから車に乗り込むまでの一連のショットがあるんですけど、これは面白いなと!
生田:面白かったですね! 「これはフィクションです」というのを、あのシーンで提示できたというか。
最も過酷だった螺旋階段でのアクション「本当にキツかった」
――生田さんも印象に残っているシーンを教えてください。
生田:覚醒のシーンも印象に残っていますし、螺旋階段を駆け上がりながら大人数と戦うシーンのアクションは本当にキツかったです。撮影の時間もかなりタイトで、1つの山場を越えるとまた次の山場がやってきて、というのを繰り返していて、あの螺旋階段のシーンはピークと言っても過言ではないぐらいかなり大変でした。坂田としての疲れもピークな状態でアクションがスタートするので、ゼーゼーしながら一人ひとり倒して階段を走っていかなきゃいけないという、地獄のようなトライアスロンみたいなアクションシーンでした(笑)
田中監督:倒し終わって階段の上まで行って、まだあるみたいな感じで上るのをやめて出ていき、そのあとエレベーターに乗るという流れになっているんですけど、なんで最初からエレベーターに乗らなかったんだろうって(笑)。最初から乗ってくれればこんなことやらなくて済んだのに。
生田:そうなの! エレベーターあるのになんで非常階段から……人が多いのに(笑)
田中監督:それがキービジュアルに。
――満身創痍の坂田がエレベーターに乗っている場面ですね。
生田:非常階段を使わず最初からエレベーターに乗っていたら、こんなことにならず普通に乗っていましたよ(笑)
――生田さん史上一番大変な作品でしたか?
生田:大変でしたね。体力的には一番しんどかったかもしれません。
――これから作品を見る方たちにメッセージをお願いします。
生田:日本作品でここまで復讐心に燃える男をアクションで見せていく作品はそう多くはないと思うので、Netflixですし、日本だけでなく、さまざまな国の方々に見ていただけたらなと思います。
田中監督:アクションはもちろんですが、親子愛のストーリーだったり、悪役だったり、それ以外の方々の味付けの濃いお芝居がすごく面白いので、楽しめる要素がいろんな種類詰め込まれた作品かなと思います。そんなに普段アクションは見ないという方も普通に面白く見られると思うので、ぜひ見ていただきたいです。
1984年10月7日生まれ。1996年にNHK Eテレ『天才てれびくん』に出演後、ドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(07)や『魔王』(08)などで注目を集める。2011年、映画『人間失格』(10)、『ハナミズキ』(10)でキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、ブルーリボン賞新人賞を受賞。そのほかの代表作に、映画『土竜の唄』シリーズ(14、16、21)、『予告犯』(15)、『グラスホッパー』(15)、『彼らが本気で編むときは』(17)、『友罪』(18)、『告白 コンフェッション』(24)、ドラマ『ウロボロス~この愛こそ、正義。』(15)、『俺の話は長い』(19)、『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(21)、『鎌倉殿の13人』(22)、『警部補ダイマジン』(23)、Netflixシリーズ『さよならのつづき』(24)などがある。今年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』にも出演中。
1987年8月21日生まれ、福岡県出身。日本大学芸術学部を中退後、映画を学ぶために渡米。帰国後は舞台の演出と脚本執筆をしながら映像作品を製作。2019年、監督・脚本を務めた初の長編映画『メランコリック』が、第31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞ほか、世界各国で数々の賞を受賞する。今年2月21日に映画『死に損なった男』が公開。
ヘア&メイク/豊福浩一(Good) スタイリスト/前田勇弥