日産自動車がSUVの「エクストレイル」とアートを融合させた体験型イベント「THE DRIVE-THRU MUSEUM」を開催した。横浜の街中に点在するアート作品をエクストレイルの車窓から観賞するという内容だったのだが、同イベントを開催した日産の狙いとは? 取材してきた。
どんなイベント?
「THE DRIVE-THRU MUSEUM」はエクストレイルを通じてアートと街の魅力を引き出すことを目的とした体験型イベントだ。
本イベント開催のため、日産は国内外の3名のアーティストとコラボレーションを実施。エクストレイルを「走る美術館」に見立て、横浜を試乗しながら3つのアート作品を鑑賞するという上質かつ新しいアート鑑賞のスタイルを提唱した。試乗体験をより特別で上質かつ楽しいものとするため、オーディオガイドには声優・俳優として活躍する津田健次郎さんを起用する徹底ぶりだ。
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オーディオガイドを務めた津田さんは「THE DRIVE-THRU MUSEUM」を一足早く体験。「(自分の声によるガイドを)僕自身が聞くというのはちょっと不思議な感じでしたが、新感覚という言葉通り、すごく新鮮で楽しかった」と感想を述べた
エクストレイルはイメチェンの真っ最中?
新たな体験価値の提供や日産のお膝元である横浜の魅力発信など、イベントの意義は十分に理解できるのだが、その上で日産としては何を訴求したかったのか。日産のチーフ・マーケティング・マネージャーである寺西章さんに話を聞くと、「エクストレイルで我々がアピールしたい魅力をもう1度知っていただきたかった」との回答が得られた。
エクストレイルは初代モデルが登場して以来、「SUVらしくタフで力強いクルマ」というアイデンティティを25年間にわたって継承してきた。そのため、エクストレイルには「アクティブ」「タフ」「アウトドア」という昔ながらのイメージがある。
しかし、2022年にフルモデルチェンジして登場したエクストレイルの4代目モデルは、DNAである「タフギア」は継承しつつも上質さを加え、第2世代「e-POWER」や電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」などの最新技術を搭載している。エクストレイルは今、「タフギア×上質」なクルマへとイメージチェンジを図っているのだ。
タフギアでありながら上質さも兼ね備えたクルマに生まれ変わった4代目「エクストレイル」。「e-4ORCE」搭載の4WDモデルの販売価格は2列シート車が385.11万円~、3列シート車が427.13万円~だ
エクストレイルが新たに手に入れた上質さや高級感といった部分に、あらためて注目してもらうためにはどうすればいいのか。考えた結果、生まれたのが今回の「走る美術館」というコンセプトだったというわけだ。
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「生まれ変わったエクストレイル、一皮むけたエクストレイルをあらためて知っていただく時に、アートと組み合わせた『走る美術館』というコンセプトを提案することで、実感を伴いつつエクストレイルの上質さを感じていただけると考えました」と本イベントの狙いを教えてくれた寺西さん
「エクストレイル」のアピールポイントは?
日産が「THE DRIVE-THRU MUSEUM」で訴求しようとした「エクストレイル」のアピールポイントは3つある。
まずは静粛性。エクストレイルが搭載する第2世代「e-POWER」は、エンジンの存在感をなるべく感じさせない工夫が施されている。例えば、エンジンが起動する頻度を極力減らしたり、エンジンを動かさなければいけない場面でもロードノイズなどに紛れてこっそり回したりすることで、静粛性を実現している。
今回のイベントでは、アマンダ・パーラーさんの作品「Fantastic Planet」の前を通る際に口笛が流れるギミックが採用されていた。実際に体験した津田さんは「エンジン音はほぼ聞こえないに等しかったです。口笛もそんなに大きい音ではないのですがしっかりと聞こえてきたので、本当に静かなんだと思いました」とエクストレイルの静粛性を評価していた。
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「Fantastic Planet」には視覚だけではなく、聴覚でも作品を感じてもらいたいという思いがあったと寺西さん。口笛というアクセントを加えることで、第2世代「e-POWER」の技術が実現する静粛性により美術館の中にいるかのように静かに走る「エクストレイル」の静粛性を表現したそうだ
次は走行性能だ。
ウェイド アンド レタ夫妻が手がけた「Mixed Signals」は、日本の道路標識をモチーフにしたユニークな作品で、大胆な絵柄や表現力豊かなフォルムが魅力になっている。そんな作品を車内から鑑賞すれば、見る角度や視点ごとに一瞬一瞬で変化していくアートの魅力が余すところなく楽しめるわけなのだが、これをサポートしてくれるのが電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」だ。
クルマを運転している時には、ブレーキを強く踏んでしまって前につんのめってしまったり、カーブでスピードが出すぎて体が横に振られてしまったりなど、クルマが想定とは異なる動きをすることがある。「e-4ORCE」は、そんな想定外の動きにつながりそうな挙動が見られた場合にそれを検知し、前後の駆動用モーターと四輪のブレーキをそれぞれベストなタイミングで制御して、クルマの姿勢が崩れることを賢く防いでくれる技術だ。
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「Mixed Signals」でアピールしたのは「e-4ORCE」による走行安定性。「エクストレイル」のハンドルを握った津田さんは、その走行性能を「途中からはまるでレールに乗っているみたいな感じで新鮮でした」と表現した
最後はデザイン性だ。
松村咲希さんの作品「The CARnvas」の魅力を「力強さと優雅さが共存する独特な表現」と評した寺西さん。この点に、エクストレイルが掲げるデザインテーマ「タフギアと洗練の融合」との親和性を感じたという。
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「The CARnvas」は、タフでありながら上質感を漂わせる「エクストレイル」のエクステリアデザインとペインティングとの掛け合わせがポイント。エクストレイルのテーマカラーであるシェルブロンドが、まるでアート作品のラストピースであるかのように違和感なく加わっている
日産の寺西さんは同イベントについて、「普段は何気なく見ていたものでも、違う視点や角度で見てみると全く気づいていなかった新しい魅力を発見することはあると思います。『エクストレイル』をはじめとした日産車においても、そんな視点であらためてその魅力に触れていただければ嬉しい限りです」と話していた。