テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、6日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第38話「まぶしき闇」の視聴者分析をまとめた。

  • 『光る君へ』第38話より (C)NHK

    『光る君へ』第38話より (C)NHK

緊張感なく「藤の花のいい香りがするわ」

最も注目されたのは20時27~28分で、注目度80.9%。平安時代を代表するモテ女・あかね(泉里香)が、彰子サロンこと藤壺で鮮烈なデビューを飾るシーンだ。

「藤壺の人気者になりそうな女房でしたら、いい人がおりますわよ」まひろ(吉高由里子)は、左大臣・藤原道長(柄本佑)に藤壺に仕える新しい女房にある女性を推挙した。藤壺に新しい風を吹かせたい道長の要望に応えての提案である。「藤の花のいい香りがするわ」藤壺の廊下を歩きながらそう言うあかねからは緊張感のかけらも感じない。これから中宮・藤原彰子(見上愛)に初めてのお目通りだというのに。

「今日よりそなたを、和泉式部と呼ぼう」宮の宣旨は、彰子とその女房たちが一堂に会すると、開口一番あかねに召名を宣言した。まひろが初めて藤壺へ出仕した時と同じ光景だ。「えっ。別れた夫の官職は、嫌でございます」しかし、あかねの反応はまひろの時とは全く違った。彰子の御前で、その筆頭女房である宮の宣旨のはからいを堂々と拒否するのだから、あかねの肝の太さには全く恐れ入る。

あかねの思いがけない返答に、宮の宣旨は言葉を詰まらせた。「宮式部でお願いします。私の亡き想い人は、親王様ですので」いけしゃあしゃあとあかねが言いのける。「文句を言うでない。今日からそなたは和泉式部だ」しかし、気を取りなおした宮の宣旨は、あかねの申し出を一蹴した。あかねは思い切り不服そうな表情を浮かべたが、抵抗するのが面倒になったのか、「中宮様の御ために、精いっぱいお仕え申し上げます。どうぞ、よしなにお願いいたします」と頭を下げた。殊勝な態度である。ともあれ、あかねの出仕の挨拶は無事(?)終わった。

「藤式部があの人を呼んだのよ」左衛門の内侍(菅野莉央)は不満そうな顔でそう言うと、「私たちには才がないから?」と、となりを歩く馬中将の君(羽惟)も不快な表情を浮かべた。「才があるのを、2人でひけらかすのよ。これから」あかねという台風が、藤壺を駆け抜けようとしている。

  • 『光る君へ』第38話の毎分注視データ

「あかねさま、艶やかすぎる」

注目された理由は、どんな場面でも一切の忖度をしないあかねに、視聴者の視線が「くぎづけ」になったと考えられる。

初登場時より、その美貌と自由過ぎるキャラクターで注目度の高いあかねだが、時の権力者である左大臣・藤原道長の娘であり、今上天皇の中宮である彰子に仕えることとなっても、全くブレる気配がない。あかねの強烈すぎるキャラクターに、宮の宣旨をはじめとする女房衆はおろか、権中納言・藤原斉信(はんにゃ.・金田哲)までもがタジタジとなっていた。

X(Twitter)では、「あかねちゃん、最初から飛ばしている」「宮の宣旨にNGを出すあかねさん、度胸あるなー」「あかねさんはまひろちゃんと別ベクトルで同性に嫌われるよね」「斉信さま、あかねに圧倒されている」「あかねさま、艶やかすぎる」など、あかねの強キャラぶりに多くのコメントが集まっている。

恋多き和泉式部だが、そのDNAは娘にも受け継がれたようだ。史実では1009年時点で、別れた夫・橘道貞との間に生まれた娘がいた。その娘も成長すると母同様に彰子に仕える。母と区別するために小式部内侍と呼ばれた。歌人としての才と、恋多き性格を母から受け継ぎ、道長の次男・藤原頼宗(上村海成)や五男・藤原教通(吉田隼)など多くの貴族と交際していた。まさに、この母にしてこの子ありだ。

余談だが、頼宗はまひろの娘・藤原賢子(梨里花)とも交際していたそうだ。道長が語っていた登華殿は亡き皇后・藤原定子(高畑充希)の後宮。ここで開かれた定子の主催するサロンは非常に華やかで有名だった。道長は彰子の藤壺が登華殿に引けを取らない華やかなサロンとなるように、才にあふれる女房を集めたかったのだろう。清少納言の娘・上東門院小馬命婦(じょうとうもんいんこまのみょうぶ)も、実はこの時点で藤壺に仕えている。彰子サロンで浮きまくるまひろとあかねだが、今後どのような騒動を巻き起こすのか楽しみだ。