3番目に注目されたシーンは20時16分で、注目度80.2%。まひろと道長チルドレンの初対面のシーンだ。

「『人の心の好惡(こうお)苦だ(はなはだ)常ならず、好めば毛羽を生じ惡(にく)めば瘡(きず)を生ず』人の好き嫌いの心はとても変わりやすいもの。好きとなれば、羽が生え飛ぶほどに持ち上げて大事にしますが、嫌いとなれば、瑕(きず)ばかり探しだします」まひろは出産のため里帰りした彰子に、土御門殿で白居易の「太行路」を指南している。「私も間もなく、帝に瑕を探されるのであろうか」彰子は不安げな表情で、まひろに問う。「瑕とは、大切な宝なのでございますよ」「え?」まひろの思いがけない言葉に、彰子は戸惑いを見せた。「瑕こそ、人をその人たらしめるものにございますれば」まひろは優しくほほ笑みながら、そっと彰子に説く。

すると、道長が妍子(倉沢杏菜)・教通(吉田隼)・威子(栢森舞輝)・尊子をともない、彰子のご機嫌をうかがいにやって来た。「中宮様、ご機嫌麗しくお喜び申し上げます」妍子が姉弟を代表して、中宮である姉・彰子へ挨拶を述べる。傍らにいた教通と威子は、まひろを見て「あの人、誰?」「知らない」と、ささやき合っている。「これ」道長がたしなめると、「こちらは藤式部。私の大切なご指南役ですよ」と、弟たちに笑顔を向けた。まひろが道長の子女たちにうやうやしく礼をすると、3人はぎこちなく頭を下げた。

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「倫子さまは知っているのかな…」

ここは、まひろがかつての想い人の4人の子たちと強制エンカウントさせられてしまう事態に、視聴者の関心が集まったと考えられる。

彰子がまひろから漢籍を学んでいるというタイミングで現れたということは、道長には何か思惑があったのだろうか。SNSでは、「彰子ともども、まひろを家族に取り込もうとしているの?」「倫子さまは知っているのかな…」「彰子が妹や弟に藤式部を紹介するシーン、嬉しそう」などと、視聴者の様々な意見が投稿されている。普通に考えるとひとつ屋根の下で暮らしているのだから、道長の家族と遭遇することは当然あり得るわけだが、今回のようにそろって出向いてこられると何か意図があるように感じる。この先、まひろと道長チルドレンは親交が深まるのだろうか。

藤原妍子はのちに三条天皇として即位した居貞親王(木村達成)の女御となる。なんと16歳で18歳年上の相手に嫁いだ。居貞親王にはすでに藤原すけ(※女へんに成)子(朝倉あき)という妻がおり、その第一子・敦明(阿佐辰美)とは同い年だった。妍子は派手好きな性格で、道長の娘の中でも特に美しく、和歌にも優れた才能を示したそうだ。

藤原教通は成長すると順調に出世する。藤原顕光が死去し、大臣の座が空くと藤原実資(ロバート・秋山竜次)が右大臣に任じられ、教通は弱冠26歳で内大臣に任じられる。

藤原威子は当時、彰子のお腹の中にいるのちの後一条天皇(敦成親王)に入内し中宮となる。後一条天皇より9歳年上だったのでこの年齢差を恥ずかしく思っていたそうだ。藤原威子は兄・藤原頼通(渡邊圭祐)の養子の源師房に嫁ぐ。道長の娘で非皇族・公卿と結婚したのは尊子だけだった。

「新楽府」とは中国・唐の時代に白居易が作った50編の漢詩。当時の政治や社会を風刺した内容で、日本には838(承和5)年に伝わった。平安文学に多大な影響を与え、当時の貴族社会に広く浸透していた。