寅子と桂場のやりとりは、コミカルなものからシリアスなものまで、数多くの見せ場となっているが、寅子役の伊藤については賛辞を惜しまない。

「出番が多く、毎日撮影に励んでいる状況ですが、電池切れみたいな状態になることが全くないので、本当にすごいです。僕は大河ドラマ(『平清盛』)で何度かそれを経験していますが、電池切れになると役の方向性が迷子になるし、それを修正することすら考えられなくなってしまう。でも、沙莉ちゃんは迷いがない感じがします。年齢によって演じる環境や立ち位置は変わっていくし、それぞれ曲げていかなきゃいけないと思いますが、沙莉ちゃんはそこも迷いなくやられているし、体力もあるなと感心します」

少年犯罪の厳罰化が懸念される中、法制審議会少年法部会の委員となった寅子が、いよいよ来週迎える最終週でどう奮闘していくのか。その鍵を握るのが、最高裁判事である桂場となりそうだ。司法の独立という理想を貫こうとする桂場だが、松山によると「理想と理想のぶつかり合いみたいなものが展開される。桂場はトラちゃんにとっての味方でもあるけど、時には敵にもなるんです」ということで、大いに気になる。

改めて、松山は桂場について「長い間やらせていただいて、僕の中でも大切なキャラクターとなりました」と思い入れを明かし「僕は演じる役に自分の理想みたいなものを込めるところがあります。僕自身は法曹界の人間でもないし、ただの田舎のおじさんですが、人権や権力に対して戦う人はこうであってほしいという思いが、このドラマにもかなり作用されたような気がします」と述懐。

「もちろん誰しも日本の全国民を見られるわけではないし、地域によっても全然文化も違う中、日本全国一律の法律を作ることはものすごく大変なことです。ましてや1人の人間が最高裁長官としてジャッジをしていくなんて本当に難しいです。しかも時代によって正解がどんどん変わっていくし、人はみんな間違うのが当たり前のこと。でも、『それは間違っているんじゃないか』というところから議論が始まっていくんだと思います。間違いを認めることも大切で、そこから対峙していくことが人権を大切にすることなのではないかなと、このドラマを通して考えさせられました。本作は、人に対しての優しさを感じられる人間讃歌のドラマになっていると思いますので、ぜひ最後まで見届けていただきたいです」と語っていた。

■松山ケンイチ
1985年3月5日生まれ、青森県出身。2002年にドラマ『ごくせん』で俳優デビュー。2006年『デスノート』『デスノート the Last name』で大ブレイク。大河ドラマ『平清盛』(12)で主演を務め、『どうする家康』(23)にも出演。近年の主な映画出演作に『BLUE/ブルー』(21)、『ノイズ』(22)、『川っぺりムコリッタ』(22)、『ロストケア』(23)、『大名倒産』(23)など。染谷将太とのW主演映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメン VS 悪魔軍団~』が12月20日公開予定。

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