藤井聡太王座に永瀬拓矢九段が挑戦する第72期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、藤井王座先勝で迎えた第2局が9月18日(水)に愛知県名古屋市の「名古屋マリオットアソシアホテル」で行われます。注目の対局を前に見どころをおさらいしましょう。
変化するのは後手のほう
先だって行われた第1局では、後手の藤井王座が△3三金型早繰り銀を採用。意表を突く作戦選択ながら、先手番有利になりがちな角換わりにおいて研究勝負を避けつつ、中終盤の地力勝負に持ち込みたい意図が功を奏した格好です。先手番で迎える第2局では、藤井王座が王道の角換わり腰掛け銀から先攻する展開が見込まれます。
こうした展開を嫌えば後手番の永瀬王座が変化する可能性が考えられます。矢倉や相掛かりなど先手側の作戦に追随することをいとわない永瀬王座ですが、挑戦者決定戦の羽生善治九段戦では4手目に角道を止める雁木を採用。先手の攻めをうまくいなしつつ、蓄えた持ち駒を生かして反撃を決めています。
語り草の五番勝負
両者の対戦成績はこれまでに23局あり藤井王座の16勝。二人の戦いを語るうえで欠かせないのが昨年の五番勝負でしょう。結果的に3勝1敗で藤井新王座の誕生、あわせて八冠制覇の偉業達成となったシリーズですが、各局の戦いにおいては永瀬九段が主導権を握るシーンも見られました。
唯一の勝局となった第1局で永瀬九段は角換わり早繰り銀を採用。後手番ながら積極的に指す方針で持ち時間の上でアドバンテージを得て、守勢に回りつつも最終盤の逆転を実現しています。さらに後手番で迎えた第3局で選んだのは雁木+袖飛車の力戦策。結果こそ伴わなかったものの中盤では指しやすいとの評判でした。
ひさびさの先手・藤井王座
最後に両者の直近の成績を確認しておくと、藤井王座は山崎隆之八段との棋聖戦、渡辺明九段との王位戦で危なげなく防衛に成功。その指し回しは失冠となった叡王戦五番勝負までの不調を完全に克服したといえる充実の内容でした。対する永瀬九段もおおむね復調傾向。黒星スタートとなったA級順位戦でも2連勝と星を戻しています。
公式戦に限れば約1年ぶりとなる「先手藤井VS後手永瀬」という構図の一戦は永瀬九段の作戦選択から目が離せません。藤井王座の開幕2連勝が実現するか永瀬九段が待ったをかけるか、注目の対局は9月18日(水)の午前9時より中村修九段の立会いのもと開始されます。
水留啓(将棋情報局)