第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は3回戦が進行中。9月12日(木)には中村太地八段―佐々木勇気八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀から優劣不明の終盤戦を抜け出した佐々木八段が137手で勝利。3連勝として挑戦権争いに名乗りを上げました。
順位戦らしい長期戦
中村八段1勝1敗、佐々木八段2勝0敗で迎えた本局。盤上は両者の息が合って角換わり腰掛け銀に進みます。仕掛けをめぐる間合いの計り合いが続いたのち、ともに玉を矢倉の構えに入城。本格的な戦いが起こったのは70手目前後、時刻にして16時ごろのことでした。佐々木八段は歩の突き捨ての連続で戦線を拡大します。
先攻を許した後手の中村八段ですがここから鋭い反撃でペースをつかみます。角取りを手抜いて玉側の端を攻めたのが局面の速度を見抜いた好手で、指し手のスピード感は「終盤は駒の損得より速度」の格言を体現しています。日付が変わって持ち時間も両者5分を切ったころ、中村八段は満を持して先手玉攻略に乗り出しました。
佐々木八段が耐え抜いて3連勝
守勢の時間が続く佐々木八段も粘り強く指して決め手を与えません。王手で放り込まれた銀に対し、怖いようでもこれを取って丁寧に面倒を見たのが逆転の呼び水に。後手からの王手は続くものの、綱渡りの受けが一段落した局面は一転して佐々木玉への詰めろが続かない格好です。ここに中村八段の誤算がありました。
一手の余裕を得た佐々木八段は待望の金取りを実現。終局時刻は翌13日0時53分、最後は佐々木玉への詰みなしを認めた中村八段の投了により佐々木八段の開幕3連勝が決まりました。終盤の攻防が検討された感想戦では中村八段の攻め方の代案が検討されましたが、明確な勝ち筋は示されませんでした。
次戦4回戦で佐々木八段は永瀬拓矢九段、中村八段は千田翔太八段と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)